第289話 エミリーとリョウ

試合当日

観客席では、

「リョウが出るのか!」

スタメン発表に驚きの声があがる中

「リョウがいる・・・」

エミリーがレオンと共に試合を見にきていた。

エミリーは日本にいる間にリョウと会うことは出来なかった。何度か要望はしたがエミリー達の護衛がリチャードを倒した源家に行くことを警備の理由から拒絶し、機会を得れなかった。

そして、帰国し落ち込むエミリーを気晴らしに試合に連れて来たのだが。

「お父さん、リョウがいるよ!」

「そ、そうだね、なんでドイツ代表にいるかはわからないが・・・」

「ねえ、会いにいこ!」

「いや、それは出来ない、イングランド側の人間だし、せめて試合が終わってからにしよう。」

「うー、でも!」

「仕方ない、エミリーだけなら許されるかも知れないな、すまないが行くことが出来るか確認してもらえないだろうか?」

「かしこまりました。」

スタッフに確認を取った所、

「試合前ですので、話す事は難しいかと、入場の時にエスコートキッズとしてなら、なんとかなるかもとの事でした。」

「私、エスコートキッズをやるよ!」

エミリーがリョウのエスコートキッズになった。


入場前、入口に集まっていた。

「うー緊張するな。」

「リョウ、頼んだぞ。予選突破はお前にかかってる。」

「プレッシャーを増すな~」

「ははは、お前はただ二点差をつけてくれたらいいんだよ、細かい事は気にしなくていいぞ。」

「それが重いんだよ!」

「リョウ。」

「ん?あれ?エミリーか?」

「はい、先日は申し訳ありませんでした。」

「エミリーが気にする事じゃないけど?なんでここにいるの?」

「リョウに会いたくて来ました・・・」

「じゃあ、元々は別の人だったの?」

「はい、無理言って代わってもらいました。」

「それはそれ、ダメだよ。ちゃんと謝らないとね。」

「はい、もちろんです。」

「せっかくの代表戦に来れる機会だったんだからね、おーい、クロー。」

「なんだ?」

「なぁ、クローは人気あるんだよな?」

「失礼な奴だな、人気あるよ!」

「じゃあ、あとでサインもらえないか?」

「なんで?」

「この子が無理にエスコートキッズを代わってもらったようなんだけど、代わってもらった子が可哀想だからクローのサインをあげようかなと思ってね。」

「それなら後でユニフォームにみんなでサインを書いたらいいだろ?それより、その子は?」

「エミリーって言って、知り合いなんだ。」

「知り合い?ということはお前に会いに来たのか?」

「そうみたい、ちょっと以前にもめちゃってね、会う機会がなかったから、無理に来たみたいなんだけど。」

「何があったんだよ、っと、それより入場だぞ、並べ並べ。」

「あいよ、エミリーも並ぶよ。」

「はい。」

「さて、リョウ、行くぞ、」

俺はスタジアムに入場した。

エミリーと手を繋いで。


「あれ?ねえ、アズサさん、リョウくんと手を繋いでいるの、エミリーちゃんじゃない?」

「ほんとだ、なんでここに?ってドイツ側にいたらダメでしょ。」

「しかも、リョウくんと手を繋ぐなんて!」

「うー、うらやましい。私も手を繋いで入場したいなぁ。」

ミウとアズサはVIP席よりリョウとエミリーを見ていた。



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