第263話 案内人到着
「ヨシトくん、やっと到着かね。」
カメラを止めたあと、プロデューサーの山本さんが皮肉を込めていう。
「山本さん、こわいよぉ~もっとフレンドリーに行こうよ~」
「いったい何時だと思っているんだ!」
「そりゃこんな田舎で撮影するのが悪くない?」
「なっ!」
「それに昨日は先輩に呼ばれて飲んでましたし、朝からは無理しょ。」
「君は・・・」
山本さんのコメカミに青筋が出てるのがわかる。
「すいません、すいません。」
横でマネージャーと思われる人が必死で頭を下げている。
「リョウくん、着替えてきたよ。どう?」
「お兄ちゃん、リナ初めて浴衣着たけど似合ってるかな?」
ミウとリナは温泉街に来たこともあって浴衣に着替えていた。
そういう俺も浴衣姿なのだが。
「おー似合ってるね、二人とも可愛いよ。」
「ありがと♪リョウくんも似合ってるよ。」
「うん、お兄ちゃん大好き♪」
リナは抱きついてくる。
「おっ、ミウちゃん久しぶり、今日も可愛いね。」
「ヨシトさん、来たんですか?」
ヨシトに声をかけられた瞬間笑顔が消えた。
「待ってたよね~ごめんね、遅くなって。」
「待ってないです。リョウくんと楽しく回ってましたので、ヨシトさんはそのままお帰りください。」
「うわっ、キツいね、そんなに拗ねないで。可愛い顔が台無しだよ。」
ヨシトが近付きミウの顔を触ろうとするとミウは俺の後ろに隠れる。
「だれだ?おまえ?一般人は帰りな、俺とミウちゃんはこれから撮影があるんだからな。」
「お前こそだれ?仕事に遅れてきて何してるの?」
「俺の事を知らないの?お前テレビ見てる?」
「リナ知ってるか?」
「知らない。」
「ほら、お前なんて有名じゃないんだよ。誰でも知ってると思うな。」
「なんだと!」
キレるヨシトをマネージャーが止める。
「ヨシトさん、落ち着いて。彼はミウさんとCDを出すリョウさんですよ、今回のゲストです。」
「こんな奴がか?ミウちゃんも見る目がないね。こんな奴と曲だすなら、俺と一緒に出そうよ。」
「お断りします。」
「お兄ちゃん、この人敵?撃っていい?」
「撃っちゃダメだよ、でも、仲良くは出来そうにないね。山本さん、さっさと撮影しましょう。こんなんで挨拶もいいでしょ?」
「わかった。ヨシトくんも撮影開始するけどいいね。」
「ソイツは気にくわないけどわかったよ。」
そして、撮影を再開する。
「本日は渋温泉に来ました。ゲストはアーティストのミウさんです。」
ヨシトはあえてリョウを無視した紹介をした。
あからさまな態度にスタッフは頭を抱える。
「ヨシトさん、もうオープニングはやりました。やっと、合流ですね。」
「ミウちゃん、すんません、遅刻しましたわ。」
「いえ、いない間、楽しくしてましたから。」
「えらいキツいわ、もっと優しくいこや。」
リョウを無視するヨシトに対して、ミウの受け答えは明らかに機嫌が悪かった。
それからはどれだけカメラを回しても、ミウとリナから満面の笑顔が出なかった。
それだけでなく、ヨシトがリョウに敵意を持ち会話をするもので、場の雰囲気は最悪なまま、本日の宿につく。
ここは歴史ある宿、建物は昭和初期の重要文化財にもなってる宿だ。
「今日の宿はここになります。ミウちゃん凄い宿でしょ。」
「あなたのじゃないですよね。」
「そんなこと言って、今日泊まれるのはこの番組のお陰だからね。そして、この番組は俺の物なのさ。」
「何を言ってるのです?」
険悪になってる状況の中、俺はミウを中へと促す。
「ミウ、中に入ろ?」
「うん、リョウくん。」
中に入ると。
従業員一堂平伏していた。
「・・・ミウ、凄い接待の宿だね。」
「ここって源家が関係あるのかな?」
ヨシトは自分が接待されていると思い込み。
「おっ、さすが俺様だね、従業員もわかってるなぁ♪皆ご苦労~なんちゃって。」
従業員の1人が、
「すいません、お客様。今大事な方がお越しになられてますので少々御待ちください。」
ヨシトを脇に除ける。
「なっ!俺を誰だと思ってる!」
「ちょっと、静かにしてもらえませんか・・・わかりました、こっちで受付しますから、邪魔だけはしないでください。」
「なっ!」
ヨシトをカウンターに連れていき受付を、行う。
その間。
「若、よくぞ当旅館を御選びくださいました。従業員一堂御待ちもうしておりました。」
「ミウ、きっと誰かと勘違いしてるんだよ。」
「リョウくん、あきらめたら?」
「みなさん、ご苦労さまです。お兄ちゃんに変わって御礼をいいますね。」
「妹御でございますか、よくぞお越しになられました。」
「お兄ちゃん、ここの旅館いい所だね。」
リョウをたいせつにしてくれる態度にリナの機嫌はダイブ治ったようだった。
「ふぅ、みなさん出迎えありがとございます。本日はお世話になります。」
「はっ!誠心誠意尽くさせていただきます。ささ、こちらに、御荷物も御持ち致しましょう。」
「リョウくん、これは・・・」
山本さんは呆気にとられていた。
「知り合いの知り合いが歓迎してくれていると思っていただけたら。」
「君はいったい・・・」
「リョウくん、私はこの部屋みたい。」
「俺はこっちか、リナはもうひとつ向こうみたいだね。」
「リナはお兄ちゃんと同じ部屋がいい。」
「まあまあ、せっかくだし、別の部屋に泊まろう。いつでも来ていいから。」
「リョウくん、私もすぐに行くね。」
「ミウ、すぐ来なくても部屋で休んでからでいいんじゃないか?」
「リョウくんと一緒に休むの。」
そして、三人はひとまず別の部屋に入る。
部屋に入った俺を待っていたのは・・・
「リョウ、遅かったね。」
「アズサ、どうしてここに?」
「リョウが泊まるって聞いて来ちゃった♪」
「それでか、入口であんな歓迎があったんだ。」
「あーあれね、私は止めたんだけど、是非やらしてくださいって言って。」
「えっ、そうなの?」
「愛されてるね若様♪」
「愛が重い・・・」
アズサと話しているとミウとリナが部屋に来る。
「あーアズサさん!なんでいるの?」
「つい、来ちゃった♪」
「今日は来ないって言ってたのに。」
「ごめんね。」
「うーーー!・・・まさか、リョウくんと同じ部屋とかないよね?」
アズサは目をそらし、
「どうかなぁ~」
「ダメ!アズサさんが泊まるなら私も泊まる!」
「お姉ちゃん、来たの?」
「あら、リナちゃん来ちゃった。ダメだったかな?」
「いいよ、お姉ちゃんも楽しも♪」
「リナちゃん、アズサさんには甘くない?」
「お姉ちゃん、優しいもん。ミウみたいにお兄ちゃんを独り占めしないし。」
「私は・・・」
「はいはい、温泉に来てまで喧嘩しない。アズサ、俺達は仕事で来てるから撮影の邪魔はしないようにね。」
「もちろんです。遠くから見学しますね。」
アズサが合流した、
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