第259話 キサク再び。
アキラくんが来て数日がたった、俺はアキラくんの純粋な眼差しに負け、真面目に作曲活動をしていた・・・
「アキラくん、退屈だろ?ソロソロ終わりにする?」
「いえ、ボクは大丈夫です。それよりこんな名曲に関われるなんて!」
アキラくんは興奮していた。
「先生!もっと弾いてください!」
「う、うん。でも、なぁ~パッと思い付いたものはあらかた弾いたしなぁ?」
「先生はいつもどんな時に曲が出来るんですか?」
「ふと何かイメージが固まった時かな?」
「じゃあ、お題とかあったら出来るんですか?」
「うーん、作れるだけイメージが出来たらなぁ~」
「難しいですね。」
「あんまり意識して作らないからなぁ。」
「リョウ、キサクさんが訪ねてきたよ?どうする?」
アズサが部屋に入ってきた。
「キサクさん?あれ何か約束してたかな?まあ、入ってもらって。」
「わかった。」
キサクさんが部屋に来る。
「リョウくん、先日はすまなかった。」
「いえ、キサクさんのせいではないですから。それより今日はどうしました?」
「リョウくんが弟子をとったと聞いてね、どんな子か見に来たんだよ。」
「弟子というほどではないですけど、そこのアキラくんに教えてますよ。まあ、もっぱら楽譜を書いてもらってますけど。」
「はじめまして、先生の弟子、織部アキラと言います。先生の作られた曲を書き残す為に弟子にしてもらいました。以後お見知り置きを。」
「織部アキラといえば若手のホープじゃないか、君ならプロになるのも夢じゃないだろ?」
「ボクがプロになる事より、先生の曲が残らないほうが問題です。それに先生が指導していただいてからボクの弾く曲がボクじゃないぐらい良くなっているんです。きっと、ボクが先生の弟子になることはボクが音楽家になるのに必要な事なんです!」
「・・・そんなに変わるのかい?指導を受け始めたばかりだろ?」
「最初に少し指導を受けただけでかなり変化がありました。そして、ここに来てから更に成長が実感出来ているんです!」
「アキラくん、オーバーだよ。俺はちょっと見ただけだからね。ほとんど楽譜書いて貰ってるし。」
「そんなことないですよ!先生が指導教室開いたら世界中から集まって来ますよ。」
「それは言い過ぎだよ、まあ褒められて嬉しいけどね。」
「・・・リョウくん、一体どんな指導をしたんだい?」
「ちょっと指が動きやすくなるようにほぐしたり、弾き方の表現を指摘するぐらいですよ。」
「私も少し指導してもらっていいかな?」
「えっ?」
「アキラくんがそこまで言う指導方法に興味があるんだがダメだろうか?」
「いいですけど、あってるかは知りませんよ。俺は我流でピアノを覚えたものですから。」
「是非お願いするよ。」
「それじゃあ、取りあえず何か曲を弾いてもらえますか?」
「何でもいいのかい?」
「いいですよ。」
「それじゃあ、リョウくんがこの前作った曲を弾かしてもらうよ。」
そして、キサクは演奏した。
「キサクさん、さすがですね。」
「これで長年飯を食べてきたからね。それでどうだい?」
「そうですね、少し背中を触りますよ。」
「ああ、かまわないが?」
俺はキサクさんの背中のツボを押す、
「この辺りに違和感がありましたから、ここの血流を治して、あとここかな?」
俺は何ヵ所かツボを押す。
「これで弾きやすくなったと思いますよ、もう一度同じ曲を弾いてもらえますか?」
「・・・ああ。」
キサクはもう一度、弾くが・・・
「なんだ、これは!指がスムーズに動く、いや腕もか!」
「カラダが固まってましたから、取りあえず軽くほぐしました。あと、腕が動くのですから、もっと大胆に力強く演奏してみてください。」
キサクは言われるまま、力強く演奏する。
「なんと、全然違う!」
演奏が終わってから、キサクは固まっていた・・・
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