第231話 マイの不幸はまだ続く
しばらくして一時間がたったのか、リョウくんとアズサさんが部屋に入ってきた。
「決まりましたか?」
「リョウくん、君は酷い事をする・・・」
「何がですか?」
「愛する妻と離婚させただけじゃなく、娘とも縁を切れと!君はどこの悪魔だ!」
「別に嫌ならどうぞお帰りを、てめぇの妻とやらに殺されかけた身としては今さら愛する妻とか言われると虫酸が走る、俺としては別にてめぇがどうなっても関係ないからな!」
「なっ!」
「それだけ罵声をかけてきたんだ、話し合いも終わりだろ?さっさと帰れ!」
「リョウくん、娘がマイがどうなってもいいと!」
「父親が娘を人質に交渉か?世も末だな。」
「なっ、ボクは別に人質になんて・・・」
「まあ、もう話すことはない!誰かお客さんがお帰りだ!」
「ま、待ってくれ!考え直してくれー」
ボクは屋敷を追い出された・・・
現在住んでいる、安アパートに戻ると・・・
「おい、金は出来たのか?」
「ま、まだなんです、でも、すぐにすぐに用意しますので!」
「おいおい、もう無理だろ、利子だけでもいくらになると思っているんだ!」
「来週には必ず!」
「もう、待てるか!今お前の娘の所にも取り立てに行ってるからな。」
「なっ!娘は関係ないだろ!」
「関係あるかないかなんて関係ないんだよ!俺達も金を回収しないと不味いんだよ。」
ボクの債権はどうやら不味い所に流れたみたいで取立が既に非合法のレベルになっていた。
「おっ、連絡がきたな、お前の祖父が一部支払ったらしい、これでお前の祖父の家にも取立に行けるな。」
「なっ!お父さんは関係ない!」
「だから、そんなの知らねえよ!それよりお前は自分の身を心配しな、これから豚小屋で働いてもらうからな。」
「なに?」
「大丈夫、簡単な仕事だからな、バカでも出来る。」
「何を、私が働けばそれ以上の稼ぎを出せるから・・・」
「でも、働く先がないんだろ?だったら其処で稼いでもらうぜ、あと、娘がいるみたいだが中々いい器量みたいだな?あれならいい値で売れるぞ、よかったな。」
「娘をどうする気だ!」
「安心しな、いきなり風俗にしないから、ただあの歳を好む金持ちは結構いるんだ、いい子にしてたら可愛がってもらえるぞ。」
「娘に手をだすな!」
「おまえが金を用意しないのが悪いんだ!借りた金は返す、親に習わなかったか?」
ボクは無理矢理車に乗せられ、知らない工場で単純作業をやらされる事に・・・
「マイ大丈夫か?」
「おじいちゃん、支払ったらダメだよ。」
「マイが助かるなら、あれぐらい構わないさ。」
「ちがうの!これからアイツらがおじいちゃんから回収しにくるよ。」
「なに・・・?」
「ど、どうしよう、お父さん、りょうさんと交渉しなかったみたい。」
「どういう事だ・・・」
マイは知る限りの情報を祖父に伝えた。
「トオルはなんてバカなんだ・・・マイ、そのりょうさんに連絡はつくかい?」
「たぶん・・・」
「つけてくれないか?私が息子の不始末をお詫びする。大丈夫だよ、おじいちゃんを信じなさい。」
「うん・・・」
マイは祖父に言われるまま、リョウに連絡をとり、すぐ会ってくれる事になった。
「マイちゃん大丈夫?」
「はい、今は・・・」
「君がリョウくんかね?」
「あなたは?」
「マイの祖父、トオルの父親で山中シンジという。このたびは息子と息子の嫁が迷惑をかけた。」
シンジは深々頭を下げる。
「ええ、迷惑でしたね。いきなりきて、借金の要請に、かけた最後の情けも罵声を浴びせられましたから、息子さんを助ける事はしませんよ。」
「私も息子を助けてくれとは言わない、ただマイだけでも助けてくれないか?」
「マイちゃんだけを助けるのはいいですが、彼が親権を持つ以上誘拐したとかいいだしませんか?」
「それは大丈夫だ、マイの親権は既に私の所にある。」
「えっ?」
「アイツは忘れてるようだが、二回目にうちに逃げてきた時に籍を私の方に移したんだ、あの時点で既に普通に暮らせそうになかったからな。」
「それなら・・・」
「じゃが、次期当主を侮辱したとあらばケジメをつけなければ、源家も動けないだろう。」
シンジは流れるような動きで床に座り腹を出す。
「老いぼれの腹で悪いが、これでケジメにしてくれ。」
短刀を抜き、腹に刺す・・・
所をリョウの左手が刀を受け止めた。
刀はリョウの左手を貫通していた。
「「リョウくん!!」」
「グッ!シンジさん、アンタの覚悟は受けとるが、残されるマイちゃんの事も考えてやれ。」
「しかし、じゃが、ケジメをつけなければ・・・」
「アズサ!源家としてケジメはこの覚悟でいいか!」
「はい!いいですから早く治療を!」
「シンジさん、謝罪は受け取った!奥さんもこちらに避難させてください。迎えは出します。マイちゃんもここで待機してて!」
「カエデ!借金取りを調べてくれ、すぐに追い込みをかける!」
「すぐにしますから、早く治療を!誰か早く医者を!」
「りょうさん、ごめんなさい・・・また、私のせいで・・・」
「マイちゃんのせいじゃないけど、ご家庭の教育はお願いしたいかな?」
「ごめんなさい・・・」
俺はマイの頭を撫で、
「気にするな、子供が気にするような事じゃないけどおじいちゃんの覚悟は覚えてあげて、マイちゃんの為に命をかけて訴えたんだから。」
「うん。」
「リョウさん、ワシの覚悟が更に迷惑をかけてすまない。」
「シンジさんの覚悟の邪魔をしたのは自分ですから、気にしないでください。それより漢の覚悟を邪魔した自分の方がもうしわけないです。」
「いや、お陰で助けてもらえるならワシラとしては助かるが・・・」
「ええ、キッチリ片をつけますがしばらくは屋敷で滞在してください。」
「わかった。それより早く治療に行ってくれんか?何かあればみんな困ってしまう。」
「そうですね。それでは失礼して・・・」
俺は出血のせいかクラっとする。
「リョウくん!」
アズサが抱き締める。
「無理しないでください!」
アズサはハンカチで手を縛り止血する。
「このまま治療室に運びますから動かないでください。」
「いや自分で行けるよ。」
「おとなしくしてください!」
「あい!」
アズちゃんの迫力に負け俺はタンカで運ばれた。
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