第200話 舞台挨拶

「ミウがなんで壇上にいるの?」

「リョウくん、ミウさん急遽主題歌歌う事にしたみたいですよ。たぶんリョウくんが舞台挨拶すると思って一緒にあがろうと考えたのかと。」

「俺みたいなチョイ役はあがれないでしょ?」

「目立ってましたけどね。でも、オファーあったんじゃないの?」

「いや、見てない・・・というか家にいなかったような・・・ねぇ俺宛の手紙ってどこにあるの?」

「知りません。」

「リョウくん、こっちだよ、上がってきて!」

ミウが呼んでる。

「あずちゃん、これは行くべきなのでしょうか?」

「空気読んだら行くかなぁ~」

「えーお兄ちゃん行っちゃうの?」

「うーん、場違いな気はするんだけどなぁ。」

「さあ、桐谷くん上がってきたまえ。遠慮することはないぞ。」

ケンさんも俺に気付き呼び始めた。

「仕方ない、リナ、ちょっと行ってくるよ。」

「むー、早く帰って来てね。」

「はいはい。」

俺はリナの頭を撫でて舞台に上がる。

「ケンさん、俺が上がってよかったんですか?ワンシーンだけの登場ですよ。」

「かまわんさ、君の凄さは映画を観ればわかる。」

「そうだよ、リョウくん!それに一緒に舞台に上がる為に主題歌歌ったんだから上がってもらわないと困る。」

「ミウ、横取りは良くないよ。誰が歌う予定だったか知らないけど、ちゃんと謝ってね。」

「はーい、あとで謝っておきます。」

「おやおや、歌姫さんも彼氏さんには弱いですね。」

「中村さん、からかわないでください。私はリョウくんには勝てませんから。」

「えーと、中村さん、ミウには俺も勝てませんよ。」

「ははは、二人して仲がいいんだね。」

中村さんと談笑していると司会の人が睨んでる。

「あの~進めてよろしいですか?」

「すいません、やっちゃってください。」

司会が運行を開始する。

俺は椅子に座り足をブラつかせながら話を聞いていた。

「監督、この映画の見所は?」

「リアリティーにこだわった戦闘シーンを観て欲しいですね。特に新人が頑張ってくれましたからね。」

監督が俺の方を見る。

するとマイクがまわってきた。

「そうですね。急遽決まった島左近役のタツの演技は中々よかったですね。彼の今後に期待したいですね~」

「桐谷くん!頑張った新人は君だよ!」

「えっ!俺の出番少ないですし、それよりタツのセリフとか臨場感あってよかったですよ。」

「タツくんも頑張ったけど、君の戦闘は他と違っていたんだよ。」

「暴れすぎましたね。リアリティーというよりはリアルです。」

「えー、桐谷さんは実際に馬に乗って立ち回り。演じたとの事ですがスタントを使おうとは思わなかったんですか?」

「なんで?鎧着て、槍や剣を振り回せるんですよ。歴史好きならたまらない瞬間じゃないですか。その為に撮影に行ったのに何故スタントさんに譲る必要が?」

「そ、そうなんですね。でも、ケガの心配とかはしなかったんですか?落馬とかもありますし。」

「そんな、心配はした時に考えます。何より鐙もついてる馬から落ちるなんて考えた事もありません。」

「乗馬が得意なんですね。では、彼と一番近くで共演なされたケンさんに伺います。ずはり、この作品の魅力は!」

「この作品は監督が戦場の姿を上手く表現できた作品です。最近の映画にしてはエキストラの数も多く集める事が出来たので迫力あるシーンが多いところも魅力ですね・・・」

司会が他の出演者にも質問していき、やっと上映時間となった。

出演者はみんな舞台袖に下がったが俺はこっそり元の席に戻る。


「ただいま、リナ。」

「お兄ちゃん!」

リナは俺に抱きついてきた。

「ほら、映画始まるよ前を見ないと。」

「見たいシーンはまだ先だからその前にお兄ちゃんを楽しむの♪」

「リナさん、リョウくんに落ち着かせて観させてあげて、何せ初めての出演映画なんですから♪」

「うん、そうだった。ごめんなさい、お兄ちゃん。」

リナは離れてくれたが・・・

「アズちゃんのオニー!忘れようとしてるのに!」

「さぁ、銀幕デビューですよ~」

「うーーー!」

「リョウくん、静かにしないと他の人の迷惑になりますよ。」

俺は仕方なく、映画を観ることにした。

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