第182話 出勤

「ミウ、俺の家はここじゃないよ?」

「ここだよ?」

「違うよね!」

「リョウくん、実はね君が住んでた家は警察に荒らされる前に解約したから、リョウくんの家はここなんだよ。」

「タツヤ叔父さんは冗談上手いなぁ~~~ねぇ冗談って言ってよ。」

「ははは、冗談じゃないんだな。荷物も用意した部屋に入れてあるから。」

「ミズホ~俺家なき子だったみたい・・・」

「リョウ兄、しっかりして!」

「あーミズホちゃんの部屋もあるからね、新しく家を用意するにしてもしばらくはうちに泊まったらいいよ。」

「お世話になります。」

「自分の家の様にくつろいでね。」

「ありがとうございます。お言葉に甘えさしてもらいますね。」

「それで、リョウくん。明日一度会社にきてもらえるかな?」

「いいですけど、ついにクビですか?」

「クビにしないよ、それにリョウくんは営業成績一位だし。」

「それ、ミウからも聞いたけどどういう事ですか?働くどころか会社にも行ってないのに。」

「・・・源グループが名指しで買っていってる。人事が泣いてたよ、出勤してないからマイナス査定なのに売上げトップだからプラス査定どっちをとればいいんですか!って俺の所にも連絡がきたよ。」

「御迷惑かけてます。」

「それで、特別処置としてリョウくんは外で働いてた事になったから。」

「えー、マイナス査定でもいいですよ。働いてないし。」

「君をマイナス査定すると売上げ出てない人をどうするかで揉めるから大人しく受けてくれ。」

「はーい、でも一度源グループにお礼に行かないといけないね。」

「接待費も充分でるから、ちゃんともてなしてくれるかい?」

「わかった~」


翌日、俺はタツヤ叔父さんと一緒に出勤した。

すると、チラチラと視線を感じる。

「叔父さん、なんか目立ってる、」

「そりゃね、警察に力強くで勝っちゃったんだもん、みんな気になるよ。」

「そうかな?」

「それに首謀者が自殺したって話も誰も信じてなくて、リョウが始末したことになってるみたいだよ。」

「俺はやってないのに~」

「俺は、がポイントだよね?」

「なんの事かな~」

「まあ、俺も追求はしないけど、リョウくんの周りは危険が多いし。」

「じいちゃんとかヤバイしね。」

「アキラさんはヤバすぎるから、世界の危険度ランキングずっと一位だよ。」

「・・・そんなのあって、爺ちゃんが一位なんだ。」

「僕達、要人にあたる人は気をつけるべき人として情報が回っているよ。まあ、おかげで俺はアキラさんの関係者として狙われにくくなっているんだけどね。」

「へぇー爺ちゃんが役に立ってるならいいや。」

「アキラさんには感謝しているのだけど、うちの親父ときたら・・・」

「竜蔵さんがどうかしたの?」

「リョウくんがケガしたことでアキラさんが自分に責任を求めて来るんじゃないかと怯えて引き込もっているんだ。」

「爺ちゃんはその程度の事で襲ってきたりは・・・するよ、気分次第で。」

「するの!」

「爺ちゃんだもん、何が理由で斬る気になるかわからないし。まあ警察に襲われた相手が俺じゃなくてミウだったら、今頃警察が全滅してるかもね。」

「ミウは可愛がられているなぁ~」

「あの爺ちゃん、耄碌して自分の孫と勘違いしてるんだよ、実際の孫には厳しいのに!」

「それなら、ミウはお嫁にいっても大丈夫だね。」

「まあ、まだ先の話ですよ・・・ね。」

「すぐの話だよ。」

タツヤ叔父さんに追い詰められながら、社長室に入る。

「あれ?つい着いて来ちゃったけど、俺部署に行くべきじゃね?」

「リョウくん、人事の人に書類持ってこさせてるから、ここで待ってたらいいよ。」

「はーい。」

俺はソファーに座り、人事の人を待っていると人事の中川課長がやって来た。

「桐谷くん、これが・・・」

大量の書類にサインを書かされて、グロッキーになった・・・

「叔父さん、俺はもうだめだ・・・」

「何を言ってるんだい?ただ名前を書いてるだけだろ?」

「文字がね、俺を責め立てるの!読むだけで頭が一杯だよ。」

「何も連絡なく長期で休んだんだから文句言わない。」

「あう~そうなんだけど・・・」

「あと昼からは政治家に会うからね。」

「へっ?なんで?」

「あれだけ暴れたんだから、一度政府の人と話しておいたほうがいいからだよ。」

「爺ちゃんに任せていい?」

「ダメに決まってるでしょ!リョウくんはそんなに人が死ぬのが見たいの?」

「叔父さん、ひどいよ!爺ちゃんだってきっと意味なく人を斬ったりしない!」

「リョウ、こっちを見て話してみ?」

「むり!」

「お前も信じてないじゃないか!」

「信じてるよ、爺ちゃんならきっと相手の譲歩を最大限に引き出すと!」

「それは要求を押し通しているだけだからな。」

「でも、メリットはあるよ。」

「リョウ、人の話し合いは互いの譲歩を行うものだよ。」

「叔父さん、話し合いは自分の都合を押し付けるものだよ。」

俺は半分冗談で叔父さんをからかっていた。

「リョウ、からかってるのはわかるが、くれぐれも政治家に会った時はその冗談はやめてくれよ。」

「相手の出方しだいかなぁ~」

俺はタツヤ叔父さんに連れられ、料亭に向かった。

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