第176話 レオンの船

「リョウはモテるね、取りあえず東京に着くまでに決めたらいいじゃないか。」

「レオンさん、そうですね、二人とも東京着くまでに考えるからちょっと待って。」

「「はーい、」」


「リョウ、もう行くのか?」

「うん、早めに動くよ。また時間が出来たら来るから。」

「いつでも帰ってきなさい。それと娘を頼むよ。」

「頼まれなくても面倒見るよ、家族だしね。」

「そうだな、家族だからな。だから困ったら遠慮なく頼ってくるんだぞ。」

「はい。おじさんお世話になりました。」

俺はアキヒロおじさんの家を後にした。


「これに乗るの?」

「そうだよ、リョウ。さあ早く乗った。」

レオンさんに案内されてついた場所にあったのは世界を旅行するような豪華客船だった。

「レオンさん、貸切とかいってなかった?」

「貸切だよ、私達と護衛、スタッフしか乗ってない、そして、スタッフも自前の信用できる者で固めているから、安心して乗ってくれたまえ。」

「リョウくんどうしたの?」

「ミウ、アズちゃん小市民の俺には敷居が高いよ~」

「リョウくん、変なところで遠慮するよね?私の家の家具や、源家の家具もこれより高いよ?」

「へっ?」

「気付いてなかったの?それにサエさんの所なんか、登録したら国宝クラスがゴロゴロしてたよ?」

「そうなの?」

「気付いてなかったの?歴史ある御屋敷だからね、置いてる物も違ってたよ。もう二度と手に入らない歴史的な物もたくさんあったし。」

「私の家も歴史はあるけど、やっぱり芸術品は公家の土御門のほうが上だったわ。」

「知らなかった・・・」

「それに比べてここにあるものはまだ買えるものだから全然平気だよ。」

どうやらミウとアズサにとって船にあるものはそうでも無いものらしかった。


「アントくん、ラルフ、セレブなみんなが怖いよ・・・ラルフ?」

「ワン。」

「なんでいるの?」

「クゥーン?」

「首をかしげてもダメ!ラルフのお家はおじさんの家でしょ!」

「ワン!」

「はぁミズホと離れたくないって?でも、おじさんがきっと探しているよ。お家に帰りなさい!」

「ワン!」

「イヤじゃない!」

「リョウ兄、ラルフを責めたらかわいそうだよ、私達が心配でついて来てくれたんだよ。お父さんには私が電話しとくから。」

「うー仕方ない、ラルフいいこにしとくんだぞ。」

「ワン♪」

「あーワンちゃんいる!」

「おっ、エミリー来たよ、久しぶりだね。」

「リョウ!」

エミリーはリョウに抱きついた。

「リョウ心配したんだよ、病院からも抜け出して名古屋に行っちゃうし。」

「ゴメンゴメン、ちょっと用事があってね。」

「重傷なんだよ、もっと体をいたわってよ。」

エミリーは抱きついたまま、泣き出した。

俺は頭を撫で落ち着かせていたら・・・

「リョウさま!」

「エミリーを泣かすのは貴様か?」

俺の首に剣が添えられた。

「なっ!」

まったく気配がしなかった。

一応カエデがクナイで受けてくれてはいるが、この腕前の剣士だ。その気になればクナイごと俺の首を飛ばすことは簡単だろう。

「やめろ!リチャード!」

「レオン、エミリーを泣かしたんだぞ。」

「彼を心配して泣いてるのにお前が彼を傷つけたらエミリーに嫌われるぞ。」

「そうなのか?これは失礼した。」

リチャードは剣をしまう。

俺はエミリーを体から離し、リチャードと会話を始める。

「凄い腕前ですね。まったく気配がしなかったです。」

「そちらのお嬢さんは気付いていたようですがね。」

「出来れば敵対したくはないのですが、よろしいですか?」

「いや、こちらこそすまなかった。エミリーが泣いていたから頭に血がのぼってね。」

俺とカエデはリチャードに対する警戒レベルを上げた。

「レオンさん騎士道精神ってなに?」

「すまないって、まさかリチャードがこんな感情的な行動を取るとは思わなかった。」

「レオン、あまり責めないでくれよ。リョウだったか、君もすまなかった。」

「短い旅ですが、やりあわないようにしましょうね。」

「もちろんだ、しかし、やりあうとはいささか違うかな?私が斬るか斬らないかだと思うが?」

その言い方に俺は少しカチンとくる。

「一応、これでも剣士ですので。」

「これは失礼した。しかし、剣士を名乗るならもう少し警戒したほうがよろしいのでは?」

「よく言われます、普段の警戒が疎かになっているのは認めますが、まさかレオンさんが安全をうたっていた場所で襲撃を受けるとは思いませんでした。」

「リョウ、確かに招待した私の落ち度だ。頭を下げても足りないな。」

「レオン!すまない、リョウも許してくれないか?」

「いえ、許しはしますが、警戒もさしてもらいますね。こちらは非戦闘員が多いので。」

俺は意識を戦闘用に変えた。

「リョウ・・・」


「みんなどうする?このまま船で移動する?それとも一度降りて別の手段をとる?」

「少し待っていただければ、源グループでも船は用意できます。」

「リョウくんに任せるよ。」

「レオンさん、俺はあなたを信用していますが、航海中は距離をとらしてもらってもいいですか?さすがに今のこの身体で警戒を続けるのは少々厳しいので、駄目なら別の手段で移動さしてもらいます。」

「すまない、わかった。航海中は近付かないようにする。リチャードもいいな!」

「わかった。」

「えっ!リョウに近付いちゃ駄目なの?」

「エミリーごめんよ、でも、この船で油断すると命に関わるのがわかったからね。少し距離をとらしてもらうよ。」

「そんな・・・」

「レオンさん、部屋は適当に使わしてもらいますよ。」

「ああ、客室はどこも空いてるから使ってくれ。」

「それでは、お世話になります・・・」

俺達はレオンさんと別れた。

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