第106話 鉄壁の守り

話し合いの後、

「さあ、帰ろう。」

「病院が先だよ!」

「そもそも帰れるの?」

「うっ!新幹線なら・・・」

「それはダメです、移動ならドクターヘリじゃないと。」

「ボク、名古屋で療養する。」

「わかりました。源家の屋敷を提供しますね。ちゃんと医療体制も整えていますからユックリしていってください。」

「アズサさん源家がリョウくんを取込み過ぎじゃない?」

「でも、西園寺は名古屋に屋敷はないでしょ?ホテル暮らしはセキュリティ的に不味いし、リョウくんは病院は嫌なんですよね。」

「いや!」

「ほら、源の屋敷なら例え警察が来ても守りきれます。」

「うう、仕方ないけど・・・」

「それにミウさんはいつまでも名古屋にいれないでしょ?そうなると安全な場所は大事だよ。」

「うう、お願いだから抜け駆けはしないでよね。」

「もちろん♪望まれたらね♡」

「リョウくん、ここは危険だよ。ヘリで帰ろう!」

「むーりーお空はダメ。人が踏み入れたら行けない領域だった・・・」

「リョウくん、少し良くなったら岡崎城や清須城、あと少し足を伸ばして彦根城なんか行ってみない?名古屋からだと近いよ。」

「・・・いいかも。」

「リョウくん、誑かされないで!甘い誘惑は罠だよ。」

「まあ、全ては治ってからだね。さすがに今日はもうしんどいや。」

リョウはちょっとふらつく。

「「リョウくん!」」

「アズサさん早く御屋敷に行きましょう」

「ええ、私達が争ってる場合じゃありません。」

二人はもめるのを止め、急ぎ屋敷に向かった。


屋敷について、医師の診断を受けたが特に問題はなかったが安静にしろと怒られた。

「ふう、しばらく厄介になるよ。」

「ここをリョウくんの家だと思ってくつろいでくださいね。」

「こんな立派な家には住んだことないけど、くつろがさしてもらうよ。」

「リョウくん、もう大丈夫?」

「ああ、ミウにもまた心配かけたね。」

「リョウくんは人の事を気にしすぎだよ、もっと自分を大事にしてよ。」

「はーい、取りあえずのんびりすごすよ。」


「若様、お食事の準備が整いました。」

「ありがとう、大広間でいいんだっけ?」

「いえ、こちらにお持ちいたしました。」

「ありがとう、それじゃ此処でいただくよ。」

部屋に食事の準備がされる。

「おーうまそう。」

これぞ和食!といったメニューが用意されていた。

「はい、リョウくん。」

アズちゃんが御飯をよそってくれて、みんなで食事を楽しむ。



その頃、玄関では。

「ここに桐谷リョウがいるんだろ、出してもらおうか。」

「お断りいたします。」

「こっちは警察官だ、さっさと出さないと次来るときは逮捕状になるかも知れないぞ。」

「御勝手に、例え逮捕状を持ってこられても主を売り渡すような輩は此処にはおりません。」

「俺達も桐谷を取って喰おうって訳じゃないんだ、ちょっと話を聞かせてもらうだけだよ。」

「弁護士を通してください。」

「何、時間はかけないさ。少し署の方で話をな。」

「お断りします。また、拷問にかけるおつもりですか!」

「人聞きの悪い事を言うな!桐谷が圧力に負けて交渉しようとしてるのは知ってるんだ、今なら有利な条件を提示してやるって言ってるんだよ。」

「勘違いをなされてますね、若はお優しいから警察に恩情をかけようとしているだけで圧力に負けたわけではありません。」

「あー、わかってる。そういう事にしたいんだろ、今なら桐谷を殴った奴を免職にして終わりにしてやろうって話を持って来てやってんだよ。さっさと引き渡せ。」

「おかしいですね、此方の要求は命令を出したら宇都宮警視監の懲戒免職、松本巡査長の懲戒免職が最低条件ですが。」

「あん?宇都宮警視監の懲戒免職なんぞ要求出来る訳がないだろ、ここらで折れておけばいいんだよ。」

「そうですか、なら我々はそちらの要求には従えませんね。」

「なんだと!」

「あと貴方も我々の敵と認定されましたよ田中警部、貴方は宇都宮警視監の派閥に所属されていて、えーと奥さまは源デパートで働いていて、娘さんは第三源小学校に通っていらっしゃいますね。」

「そ、それがどうしたんだよ。」

「源グループは敵にたいして容赦しません。明日から貴方が路頭に迷ってもかまわないと言うことです。」

「家族は関係ないだろ!」

「我々は若の為なら鬼になれるのです。あの方は我等を仲間と呼んでいただきら下の者にまで心をくだき、自らのカラダを厭わず駆け付けてくれました。我等は末端の1人まで若に尽くすつもりです。まあ、この話を奥さまになされたら離縁されると思いますがね。」

「な、なんだと!」

「あっ、連絡がついたようです。此方をどうぞ。」

田中警部は電話を受けとる、

「あなた!一体何をしてるの!」

「何って、仕事だよ!」

「若を誘拐するのが仕事なの!ふざけないでよ!」

「なんだと!これに成功したら出世間違いなしなんだよ!」

「あなたはそれをしたらどうなるか考えてないの?」

「はあ?」

「この街で生活なんて出来なくなるのがわからないの!」

「何を言っているんだ!」

「もし、貴方が若に迷惑をかけるなら私は離婚します。娘には選んでもらいますがたぶん私に着いてきてくれると思います。」

「なんでそうなるんだよ。出世したらお前にもいい暮らしさせてやれるんだぞ。」

「そんなのいりません。いい、絶対若に迷惑かけないで。」

「なんだと!」

「兎に角、一旦実家に帰らせていただきます。後はあなたのやったことで決めさせてもらいます。」

そこで電話は切れた。

「なんなんだよ・・・」

「それでどうします?離婚覚悟で来ますか?まあ、私達を突破出来たらですけどね。」

「くっ、また来るからな!それまでに引き渡す準備をしとけ!」

「お断りします。」

田中警部は慌てて家に帰って行った。

名古屋に来た事でリョウの守りは堅くなっていた。

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