第3話 初出勤
引っ越しも終わり、ついに出勤日。
遅れないよう朝を早めに出て、電車に乗りついた会社は背の高いビルだった。
田舎者の俺としては二の足を踏むとこだが行かない選択肢はないので中に入り、受付に初出勤の話をしどうすればいいか確認した。
どうやら、俺は営業に配属になるらしい。
受付に言われた営業部に向かい課長に挨拶を行い、朝の朝礼で部署全体に挨拶をした。
教育係りについてくれた先輩の安倍勇太さんに仕事の説明を受け、仕事につくことになった。
昼休み
安倍さんと飯を食べてた。
「なぁ、桐谷くんは何でこの時期に転属してきたんだ?」
「俺にもさっぱり、前の会社の社長命令みたいなものですね。」
「変わった移動なんだな~何かの繋がりか?」
「ああ、それは・・・」
すると石戸係長が話しかけてきた。
「君みたいな学歴の人間が入ってくるのは理解が出来ないのだがね。」
余り友好的でない話し方に少しムカついたが
一呼吸おき冷静になり。
「そうですね、自分もわかりませんが来た以上頑張りたいと思います。」
「君みたいなのが頑張っても無駄だ、さっさと田舎に帰ることだ。」
なかなかイラつかせる人だが上司にあたる人とやり合う訳にもいかず、言葉を選んでいると、
「なんだ、田舎者は言葉もわからんのか?これだから学力のないやつはダメだな、安倍もさっさと見捨てないと時間の無駄だぞ。」
言いたい事を言い終わったら石戸係長は立ち去った。
「安倍さん、あの人なんなんですか?」
「悪いな、あの人は昔から学歴主義で認められない人には冷たくあたる癖があるんだ。」
「はぁ、あの人と同じ職場と思うといきなり帰りたくなりましたよ。」
「待て待て、あんなのばかりじゃないからな。」
休憩も終わり仕事に戻ると、石戸係長は暇なのか俺に粘着してきた。
「君はパソコンもろくに使えないのか!入力が遅すぎる!」
「なんだ、その電話応対はその程度そこらを歩く高校生でも出来るじゃないか!」
・・・なんだコイツ、1日でだいぶ苛ついてきた。
「聞いてるのかね!君のアタマじゃ理解出来ないかもしれないが・・・」
そこで石戸係長に電話が入った。
「まだ、いいたりないが仕方ない。」
電話をとると急にへりくだった会話を始める事に少し笑いがでた。
電話が終わるとまた俺の所にきた。
はぁ、また小言を言われるのか?と気を重くしていたら、
「き、桐谷くん、社長がお呼びになってるので社長室について来てくれるかね。」
「はい、わかりました。」
「桐谷くん、社長と知り合いなのかな・・・」
「ええ、ここに来た理由が社長に呼ばれた事ですので。」
石戸係長は顔を青くしていたが俺は気にせず社長室を目指した。
「タツヤ叔父さん久しぶりです。」
中に入るとミウのお父さんがいた。
「おーリョウくん、娘と嫁は昨日あったみたいだが俺は会えなかったから呼ばせてもらったよ、仕事中なのにすまなかったね。ああ、石戸くんだったかな、案内ありがとう、ここからは家族の話になるから下がってくれるかな。」
「はい、失礼いたしました。」
石戸係長は素早い動きで部屋を後にした。
俺は早や!と驚愕しながら叔父さんと会話を再開した。
「いえ、お気になさらず、隣の人はミウからしたらお祖父様ですか?」
「うむ、そうだ、ワシがミウの祖父の竜蔵だ、ミウが世話になってるな。」
「はじめまして、知っているとは思いますが桐谷りょうです。ミウは昔からいい子ですから、俺のほうが世話になってました。」
「ふむ、しかし、似ているな。」
「はぁ?何とでしょう?」
「いやなんじゃ、昔の戦友の顔にそっくりでな、丁度年の頃がそれぐらいでな。」
「そうでしたか、残念ながら戦場に行ったことはないので自分では無いですね。」
「そうじゃの、まあ、話は戻すがミウは結婚するには早すぎるとは思わんか。」
「そうですね、幼き約束を守る必要も無いでしょう、きっと自分よりいい人がいるはずです。」
「そうじゃろ、じゃがな、ワシも見込みある若者をそれとなく会わせてみたのだが、誰にも興味をもたなかった。」
「まだ、若いからでしょう、きっと大人になればいい人が現れますよ。」
「じゃあ君は身を引いてもいいということかね。」
「はい、何故好かれているかわかりませんが、ミウにはいい人と結ばれ幸せになってもらいたいです。」
「なら、婚約解消で問題ないな。」
「婚約?結んだ覚えがないのですが・・・」
なんか知らない話が出てきて困惑した。
「お父さん、待ってください、何を言ってるんですか!」
「なんだ、タツヤ、リョウくんは身を引いてもいいと言ってるではないか。」
「それをミウに伝えますよ、」
「うっ!いや、なに、彼はこれから仕事が忙しくなってミウと会えなくなる予定に・・・」
「なりませんよ、せっかく会えるように段取りしたのに台無しにする気ですか。」
「しかしだな、ミウはもっと上の人間が相応しいと思う!」
「ならそれをミウに伝えてください。」
「それはデキン!」
「なら言わない事ですね、リョウくん、もう少しミウを見てあげてくれないかな?ミウはリョウくんに相応しくなりたくていっぱい努力してきたんだ。」
「それはわかりますよ、逆に俺が相応しくないんですよ。」
「そんなことはないよ、君には君の輝きがあるし、君がいるからミウも輝けるんだ、もっと自信を持って。」
「はぁ、まあ、いいですよ。ミウを泣かせる気はありませんし、特に彼女もいないのでミウが飽きるまで付き合いますよ。」
「それでいいよ、無理いってごめんね。」
「それより、婚約ってなんですか?」
「あはは・・・」
「叔父さん、笑って誤魔化さないでもらえますか。」
「言っても怒らない?」
「内容によります。」
「はぁ、実は今回の引っ越しの時にリョウくんの実家に許可を貰いにいったんだ。」
「知らなかったけど、そうなんですね。」
「そこで、どうせならと思い、婚約にしましょうって持ちかけたら思いのほか上手くいきまして・・・」
「なんで?本人いないのに!」
「しかも、リョウくん次男でしょ。」
「まあ、アニキがいるよ。」
「だから、婿にもらう権利も貰っちゃいました。」
タツヤ叔父さんは笑いながらいった。
「俺の親って一体!なんでそうなるの?」
「リョウくん大丈夫、ちゃんと婚約祝いを渡してきたから、きっと今頃実家を建替えてるよ。」
「まさかの身売り!?」
俺はあるショックを受けていた。
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