林間学校にて

筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36

(一)

朝、登校すると、クラスの僕の机の上には一輪の花がささった花瓶が置かれていた。

 僕はそれが何を意味しているのか、わからずに、席の前に突っ立っていた。

「なんだ富山、生きてんじゃん」

 クラスメートの高崎翔太がそう言った。そして葬送行進曲のワンフレーズを大声で口ずさんだ。

 クラス中のみんなが大声で笑った。

 「そういうことするの、止めなよ」「かわいそうよ」などと言う女子生徒もいたが、ほとんど全てのクラスメートが、僕の席を包囲して、僕がどう行動するのか、注視していた。

 教室の前の扉が開き、先生が入ってきた。

 クラスメートが一斉に着席した。

 僕は動けなかった。

 それを見た先生は「富山も席に着け」といった。

 先生は教壇のところから歩いて僕の席までやってきた。「またお前らこんなことして」といいながら、僕の机の上の花瓶を持ち上げて、教壇の脇にある教卓に置いた。

「つまんねーの」

 高崎が言った。

「どうせこのクラスにいなくたって別に問題ねーじゃん」

 高崎が付け加えた。

 クラスが笑いに包まれた。

 担任の先生も笑っていた。


(続く)

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