人生からの逃避行

ジェラジェラ

人生からの逃避行

『生きる』ってなんだろう。

このことが分からなくなったのはいつからだっけ...。

理由ならハッキリと分かる。

そう、中学生の頃のこと。


中学で幼稚園から一緒に進学してきた友達と違うクラスになって1人で本を読んでいたところに話しかけてくれたのが佳奈美との出会いだった。

佳奈美とは毎日毎日一緒に行動して、笑って、喧嘩もしていた。

佳奈美とはショッピングモールに遊びに行ったり、プリクラだって撮った。

佳奈美のことはずっと仲良くしていたかったし、高校だって一緒に行きたかった。

だけど、もし一緒の高校だったらもっと早くに心がもたなかったかもしれないな...。

「るあ〜行くな」って佳奈美はいつも部活の集まりがあってもギリギリまで行かせてくれなかった。

もっと酷かったのがバックにつけていたストラップを取られたりしたこともあった。

「るあはあの子たちから嫌われてるよ」とか理不尽な理由つけて怒られたこともあった。

そういうことがストレスだったのかな。


高校生になってから新しい友達も出来た。

だけど...完全に信じることなんて出来ないままでいた。

新しく出来た友達もいじめられっ子で、高校1年生の時、クラスメイトからのいじめを受けた。

助けたかったけどどうやったら助けられるかなんて分からなかった。

ただ、ただ、友達の話を聞いてあげることしか出来なかった。

だけど、友達から私も嫌われてるということを知らされた。

元々嫌われやすい性格だと自分でも思っていたし、覚悟はしていた。

いざ、嫌われるとなるとそれは本当に心が押しつぶされるほど苦しいものだった。

高校に入学してからというものの友達のことを完全には信じることが出来なかった。

自分も嫌われているということを知ってから友達以外のクラスメイト、学校の人達まで信じれなくなって怖くなって見えない恐怖に怯えながら生活をしていた。


ある日、スマホで「人が怖い」などと気になったので、検索をしてみた。

すると、「対人恐怖症」という恐怖症の1つがヒットした。

対人恐怖症チェックというようなものが調べていくうちにたくさん出てきて、いろんなチェックをしてみた。

すると、ほとんど当てはまっていた。

後ろに人がいるのが怖かったり、人混みも極力避けたり、どもってしまったりと自分は対人恐怖症なんだって思い始めたら止まらなくて苦しかった。

だから、こんな人生から逃げてやるって思った。

私が死ぬことで小学校の時にいじめきたあいつも中学校の時の佳奈美も少しは悔やんでくれるかな。

なんて思いで人生を終えるための旅を始めた。

もうすぐで夏休み...ちょうどよかった。


夏休みも始まり親も仕事で居ない、だけどずっと帰らないと心配するだろうからたまには連絡入れないと。

持ち物はスマホ、お財布あとはお気に入りの猫のストラップ。

人生を終わらせる旅だからそんな大掛かりな荷物なんていらないからね。

旅の目的は風景の綺麗な所へ行くこと。

そして、人生を終わらせること。


最初に向かったのは綺麗だとメディアでもよく言われている滝だった。

滝はマイナスイオンだとかどうたらこうたらで気持ちがリフレッシュされるような効果があるそうだ。

まぁ、私には関係ないけど。

最寄り駅しか調べてこなかったから当然、滝の場所なんて分かるわけなんてなかった。

キョロキョロしてたら地元の住民でいつも通っているのだろうそんな風なおばあさんが「どうしたんだい?」「滝へ行きたいのかい?」なんて聞いてきた。

「あ、はい。滝への行き方が分からなくて...。」

「じゃあ、一緒に行こうか」

「いいんですか?」

「あぁ、もちろんいいさ」

「1人で来たのだろ?もうひとりじゃないから。おばさんが一緒だからね」

って言葉を聞いた瞬間うるってきてしまった。

私は『もうひとりじゃない』ってきっと今までの人生で言って欲しかったのだろうってこの時思った。

1人でいろいろと抱えてきて、1人で全部背負って対人恐怖症になって毎日毎日頭痛くなるまで自分を苦しめ続けてきていた。

うかつにも人生を終わらせるために旅に出たのに『ひとりじゃない』って言われて慰められた気になってもう少しだけ生きてみようかななんて少し思ってしまった。

滝に着くまでおばあさんの話を聞いたり、滝についての話を聞いてるうちに滝へと着いた。

「は、迫力がすごい...。」

「そうでしょ、この滝は迫力がすごいのよ。なんだか 、おばさん毎日滝に来ているけどいつも滝の迫力に驚かされて命の大切さ改めて気づかされるのよね」

「そうなのですね...。」

『命の大切さ』か、またまた生きていたいって思ってしまった。

おばあさんと出会った駅の所に戻ってきて「またおいでね」なんて言われてしまった。

「はい」って言ったもののこれは人生を終わらせる旅。だから、もう来ることはないって心では思っていた。


それからはぶらぶらと電車に乗るのも疲れたから歩くことにした。

澄み渡った青空に力強くなくセミの声、風に吹かれて揺れる草花。

何気ない風景だけど、今までは忙しく過ぎる日々だったからそんなの見る余裕なんて全然なかった。

だけど、今なら分かる気がする。風に吹かれて揺れる草花のようにのびのびと生きてもいいのだって、頑張りすぎなくてもいいのだって。


歩いてるうちに花畑に着いてまたまた花の綺麗さ、そして、案内してくれた人々の温かさ、優しさが存分に分かった。

なんでだろう。

人生を終わらせるために旅に出たのに...。

もう少し生きてもっと旅がしたいって思ってしまうのは。

今までのこと誰かに相談してみようかな。

そして、生きてまた滝のおばあさんに会いに行こうって。


だって私は『ひとりじゃない』のだから。

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人生からの逃避行 ジェラジェラ @aibakun5

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