3つの真実

HalTo

True

私の名前は「梅宮 咲穂さくほ」。

学校ではかわいいカッコとか、化粧とかして、放課後にはタピる。

それでそれで、青春ラブコメ映画みたいなドキドキの恋をする。

そんなどこにでもいる普通の女子高生。

でありたいって思う。

でも現実はそうはいかない。

進学校だからか校則で過度な化粧や髪染めみたいなものは禁止。

毎日課される課題や勉強しなくちゃいけないことも多いからタピる余裕はない。

そして何より…

私はの人間じゃない。

もしかしたらこれがなのかもしれない。


今日も自習のために学校から家の間ぐらいにある図書館に来ていた。

ここは病院も近いからか多くの人が使う、だからかとても広く、本の数も多い。

しかし静かだ。ここは私のお気に入りの場所。

その中でも私のお気に入りは図書館の入って左奥、生物学コーナーの近くにある座席だ。

ここは外からの心地よい風と光が注ぎ込んできて、不思議と落ち着く場所だ。

「よし、今日もここで…。」

通路を曲がるとそこには先客がいた。

すぐに違う席を探そうと思った。が思うようにそこから動くことができなかった。

そこに佇み本を読む青年は、端正な顔立ちをしていながらどこか愁いを帯びたような神秘的で幻想的な雰囲気を放っていた。

私はそんな彼からうまく目を逸らすことができずにいた。

どのぐらい見つめていただろう、ふと彼がこっちを向いた。

「どうかしましたか?」

優しい笑顔で尋ねる。正面から見ると凛々しさも感じられる。

「は、えっ、」

声がいつものように出せない。

彼は不思議そうな顔をしてこっちを見つめる。

「あ、失礼しました!」

思わずその場を立ち去る。

その日、私はいつもの場所からは遠い座席で勉強をした。

いつもと違う席だからか、とても落ち着かなかった。



次の日

何故だか落ち着かない気分だった。

ここはいつもの図書館で、いつもの座席で、いつも通り自習をしているのに。

昨日はよく眠れたし、朝お母さんとのいざこざがあったわけでもない。

学校はいつも通りだし、喧嘩をするような友達もいない。

何故だろう。

そう思いを巡らすことに夢中ですべてが上の空だった。

何故だろう。



翌週

今日も今日とてこの図書館

左奥、生物学コーナー。

古生物、昆虫、魚類、恐竜、哺乳類、菌類、エトセトラ…

その先にあるあの窓辺の座席。

「あっ。」

まただ。

そこには彼がいた。

先週と同じ。

鼓動が早くなる。

彼は気づき、読んでいた本を閉じ、こっちを見る。

「やっぱり。ここに居れば会えると思って。」

彼の声は澄んだ綺麗な音だった。

「えっ、それはどういう…。」

自分の声とは全く違う。

彼は立ち上がる。

「君とお話してみたかったんだ。」

何を言っているのか分からなかった。

何で?とか言おうと思ったが出た言葉は

「是非。」

の一言だった。


「へぇー!毎日自習のために来てるんだ。」

ここは図書館屋上。周辺の様子がよく見える場所。

そこのベンチに腰掛け、話す。

とってもいい天気だ。

「僕は週に1回、この曜日だけここに来れるんだ。」

彼は朗らかな表情、明るい表情で話す。

いつぶりだろう、こんなに話に花を咲かせたのは。

楽しい。

時間も、勉強も忘れて会話を楽しんだ。


どのぐらい話したろう、ふと彼が時計を見た。

「そろそろ帰らなくちゃ。今日はありがとう、楽しかったよ。」

彼は立ち上がる。

「また…来週、話し相手になってくれるかな?」

「はい。」

彼は立ち去る。

「待って!」

思わず大きな声が出る。

「どうしたの?」

彼は振り向く。

「名前…名前を、知りたい。」

私の声を聴き、彼は笑顔で

「僕の名前は「榊原 悠吾ゆうご」、君は?」

と言った。

「咲穂…「梅宮 咲穂さくほ」。」

「サクホ…いい名前だね。じゃあ、また来週。」

彼、いや悠吾は手を振る。

「また来週。」



それから私たちは毎週会っては他愛のない話をした。

誕生日、家族構成、普段何をしてるか、趣味…。

短い時間ではあるがこれが1週間のオアシスだった。

同時に私の心にある器に得体の知れない血液にも似たが少しずつ、少しずつ溜まっていた。

それが何であるかはよく分からなかった。


そしてある日

「そっか、あの大学目指してるってことは相当賢いんだね。」

「いや、そんなことはないですよ。」

口ではそう言うものの、照れ笑いは隠しきれなかった。

「可愛い。」

ふと悠吾が言った。

「…え?」

自分でもわかるほどに赤面した。

「あっ、なんかごめん!」

「ううん、違うの…とっても嬉しいです。」

その時、私の中にあったが溢れ出した。

「…悠吾さん…私、好きです。」

「え…?」

まずい、引かれた…。

「あ、こ、これはじょうだ

「すごく嬉しい。」

私の言葉を遮って悠吾は言う。

「…僕も好きだよ、サクホ。」


その日から私たちは付き合うことになった。

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