第2話:舌戦
格調高い音楽がオレゴン公爵家の楽団によって奏でられています。
公爵家を、いえ、王国を守ってくれている妖精達に感謝を伝えるために、公爵家が集め養っている音楽家達が、普段の練習の成果を見せてくれています。
私が精霊達に愛されている事も間違いのない事実ですが、歴代のオレゴン公爵家当主が、真摯に精霊に感謝し、精霊の喜ぶ御礼を探し続けてきた成果です。
「ふん、僻地の野蛮な公爵家らしい、陳腐で粗野な音楽だ。
やめろ、やめろ、やめろ、こんな曲は王家に相応しくない!
もっと荘厳で格調高い、王家を称える曲を演奏しろ!」
酔っぱらった王太子が、だみ声でわめき散らしています。
聞くに堪えない悪口雑言を並べ立てています。
直接の単語は使っていませんが、我が家を貶めるような言い方です。
あちらこちらで、同調するような嫌な笑い声が上がります。
家臣達が屈辱に耐えるように顔を歪めています。
ここまで馬鹿にされ、オレゴン公爵家は耐えなければいけないのでしょうか?
「はて、それは我が家に対する侮辱でございますか?
誇り高いと申される王家ならば、そのような迂遠な言い方をせず、もっとはっきり口にされ、我が家に喧嘩を売られてはいかがです、卑怯下劣な王太子殿下!」
私の言葉に、会場に集まっていた王侯貴族は静まり返りました。
我が家の事を嘲笑っていた者達も、顔を青くして押し黙っています。
皆勘違いしていた、いえ、我が家を舐めていたのです。
王太子がどれほど無礼を働いても、正面から喧嘩を買う事はないと。
精々嫌味を返してくる程度だと、高をくくっていたのです。
「な、私を事を侮辱するか!
おのれ、下賤な妖精と通じて力を得ただけの者が、高貴な血統の王侯貴族に逆らうなど、身の程を知れ!」
「「「「「おおおおおおお」」」」」
王太子の言葉に、同じように我が家を蔑んでいた王侯貴族が同意の歓声を上げた。
同意の歓声はあげないものの、他にも我が意を得たりという表情を浮かべている王侯貴族が数多くいた。
だが慎重な者は、何の表情も浮かべず、事の成り行きを見守っている。
「王太子、それは幾ら何でも言い過ぎだぞ。
生まれ育ちや成り立ちはともかく、オレゴン公爵家は代々王家の忠節を尽くしている家で、マリーナ嬢はそなたの婚約者だ。
ここは大人の態度で、広い心で愛情を示すのが上に立ち者の振舞いだぞ」
国王が間を取り持つようなふりをしながら、更に我が家を貶め、自分達が上の立場に立とうとしています。
国王は分かっているのです。
本当の力関係は、オレゴン公爵家の方が王家よりも強いという事を。
だからこそ、このような茶番を仕掛けて、自分達が優位に立とうとしているのですが、そのような事を私が、いえ、精霊達が認めると思っているとしたら、馬鹿以外の何物でもありません。
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