完全版【003】:変態は歓喜し、鬼畜無理ゲーは泪を溢す!(3)

FHSLG(ファンタジー歴史シミュレーションゲーム)【アルグリア戦記】とは、アルグリア大陸の住人にり、四十七の人類じんるい国家こっか数多あまたあるモンスターのコミュニティを、全て統一とういつ制覇せいはする事を目指す一人用戦争ゲームでる。




勿論もちろん統一とういつ制覇せいはを目指さずに、悠久ゆうきゅうときの流れを楽しむプレイヤーも多い。現実世界ではし得なかった職業に付く者。れこそ、楽しみ方は千差万別せんさばんべつだ。


戦争ゲームではあるが、継承けいしょうシステムに理論上りろんじょうアルグリア大陸が統一とういつ制覇せいはされるまで、永遠えいえんに自分ごのみに遊び楽しむ事が出来るり込み型のゲームだった。




特色としては、選択したキャラアバターの能力を獲得かくとくした英雄ポイントでカスタマイズ出来る事だ。最弱さいじゃく底辺ていへんキャラアバターで成り上がりの浪漫ロマンプレイを楽しんだり、お気に入りのキャラアバターを強化し続けて、自分ごのみの最強のアバターに育成して遊ぶプレイヤーも少なくない。


ようこのみのキャラアバターで、自分が満足いくまでアバターライフを満喫まんきつ出来るのだ。現実世界では有り得ない歴史の回帰かいきを楽しむ。自由度は他のゲームの追従ついじゅうを許さない。但し【セーブ不能】の為、【ゲームアウト】は【ゲームオーバー】と同義どうぎである。




一期いちご一会いちえ。同じアバターでプレイしても、前回と同じ出会いがるとは限らない。少しの行動のれが、運命シナリオれを呼び、歴史が変わる。同じ時代でも、プレイヤーのくしゃみ一つで【何か】が変わる。そんな摩訶不思議まかふしぎな仮想現実ゲームが、【アルグリア戦記】だった。







『・・・・・・ご利用ありがとうご座いました! またのお越しをお待ちしております!』




プレイヤーが【ゲームアウト】で、エフェクト処理しょりされて分解されて消えていく。




『さて、来週から第二陣だいにじん一千万のプレイヤーさまが、新規しんきにアルグリア戦記に登録とうろくをされる。バグなど無ければ良いのですが・・・・・・』




執事服に身を包んだ無表情な黒猫の男がつぶやく。




彼こそが、【アルグリア戦記の総合案内人】である【ジョドー】でる。 




現在一千万のプレイヤーの対応を一手に引き受け、更に第二陣だいにじん一千万を加えた二千万のプレイヤーの総合案内人だ。




一千万のプレイヤーに同時どうじ接続せつぞくされながら、分身体ぶんしんたいつかい全て対応する。


激務げきむこなしながら本体ほんたいである執事は仮想空間かそうくうかんの中で、空中に映る映像を食い入るように見つめていた。




『くっくくくく! 流石さすがは【廃神オーバーアウト】と呼ばれるカルマさまだ。常人の斜め上を、意図も簡単にんでいく。鬼畜きちく無理むりゲーと呼ばれるシナリオ【創造神の試練】をクリアするとは。クリア第一号は、やはりカルマさまでしたか。流石さすがです』




さて、創造神カリダドの望みはかなうのでしょうか? 




画面を無表情で見つめる執事の呟きを、聞いている者は誰もない。仮想空間かそうくうかんは、ジョドーのみが存在そんざい出来できるプライベート空間くうかんだった。




FHSLG【アルグリア戦記】が他の仮想世界のゲームと隔絶かくぜつしているのは、クリエイターが変わった人物。いや、かなりイカれた発想はっそうの持ち主だったからだ。


のクリエイターは、本気ほんき本物ほんもののゲーム世界を構築するためには、クリエイターは不要ふようだと言い放った。


自分自身の存在そんざい意義いぎを、軽く否定ひていしたクリエイターの提案は、前代未聞ぜんだいみもんこころみだった。




人は本物ほんものの神にはれない。ならば人が世界を創造しても、れは偽物にせものでしかない。本物ほんものの世界を構築こうちくするには、本物ほんものの神に創造してもらえば良い。


のクリエイターは本物ほんものの世界を創るために、本気ほんき真剣しんけん本物の神電脳の神を創り上げ、全ての権限けんげんあたえ【新世界】を創造させた。


遊戯管理脳ゲームマネージメントブレイン【カリダド】が創造した世界こそが、ファンタジー歴史シミュレーションゲーム【アルグリア戦記】だった。


のカリダドを補助する補助管理脳アシスタントマネージメントブレインが、【アルグリア戦記の総合案内人】であるジョドーの本当の姿だった。






ーーーーーーーーーー






「マスターお帰りなさい。どうされましたか? 顔がひどく気持ち悪いのですが?」




うぐっ。ミリィの容赦ようしゃ毒舌どくぜつで精神にクリティカルヒットをらった俺は再度ベッドチェアーにしずみ込んで目をつぶった。




やったー! 【創造神の試練】をクリアしたぞ!





俺は心の中で、絶叫ぜっきょう発狂はっきょう歓喜かんき身悶みもだえした。




「熱も無いようですし、精神せいしん数値すうちにも異常いじょうは見られないのですが。はて、マスター大丈夫ですか?」




う、うん? なんだ?




俺は額のあたたかい感触かんしょくに、驚いて目を開けた。




「ぶっ! な、なにをしているんだミリィ?」




目を開けた俺の目の前には、事もあろうにミリィの顔がった。オートドールに額をくっ付けて検温けんおんする機能などは存在そんざいしない。


全て耳に掛けている【ダイブトリッパー仮想現実装置】で体調たいちょう管理かんりが可能だった。




天然てんねんメイドのミリィには困ったものだ。れに良いにおいもして、時々ドキリとする。




「マスター?」




そんな首を横にコテンとさせても、駄目だものは駄目だ。俺はふるえる手で、ミリィの肩をつかみ優しく押し退けた。




なんかお腹が減ったな。ミリィ、なにか軽くで良いから作ってくれないか?」




「はい、マスター! 了解しました!」




こぼれんばかりの笑顔ではないが、優しいひとみ微笑ほほえんだミリィが調理ちょうりに向かった。




ふー、助かった。ミリィには再三さいさん注意をしていた。あまり身体的な接触せっしょくをしないようにと。




「ミリィ、・・・・・・」




目の前で調理中ちょうりちゅうの【オートドール家庭用自動人形】ではない、もう此処ここには存在そんざいしない幼馴染おさななじみの名を、静かにつぶやいたカルマだった。






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ついに【創造神の試練】をクリアしましたよ、師匠ししょう! 聞こえますか、師匠ししょう?』




俺はMMOWG(多人数参加型戦争ゲーム)【矛盾バストーロ】で師事しじした師匠ししょうるプレイヤーネーム【クマメタル】に連絡を取ったが、例のごとく闘いにっているのだろう。全く反応が無い。


世界を震撼しんかんさせた一千万オーバーキルのテロリスト【クマメタル】と同じ名前で、仮想現実世界にいてプレイをするイカれた変態。なに如何どうって、仮想現実世界にいて、のプレイヤーネームで登録とうろく許可きょかされたのか、首をかしげげる事しきりだ。




『カルマ、やっぱり鳥は良いな! 空を自由にべる!』




イカれた変態は例のごとく、俺の話は全く聞いていなかったようだ。はぁ、トランスしている師匠ししょうにはなにを言っても届かない。自分のルールを忠実ちゅうじつに実行する災厄さいやくす。【られたらり返す】、いたってシンプルなのルールに全てをける狂人きょうじん


全てと言って良いプレイヤーからきらわれる存在そんざい、【凶神オーバーアウト】と呼ばれる禍々まがまがしいたましい燐光りんこう師匠ししょうだった。




師匠ししょう、またモンスタープレイですか? 楽しんでますね【アルグリア戦記】!』




『まあな、血のエフェクト処理しょり以外は最高に、興奮こうふんするぜカルマ!』




其処そこ仕様しようなので仕方ないですよ。あきらめて下さい師匠ししょうれから俺やりましたよ。【創造神の試練】をクリアしました!』




『ほう、鬼畜きちく仕様しようのマゾゲー(マゾヒズムを楽しむ変態のゲーム)シナリオをクリアするとは、お前はイカれてるよカルマ?』




否々いやいや、アンタにだけは言われたくないよ! イカれた変態が、俺を変態性へんたいせい嗜好者しこうしゃのように言うのは納得がいかない! 断固反対だんこはんたいする!




れで、鬼畜きちくシナリオの報酬ほうしゅうなんだったんだ?』





完全かんぜん制覇せいはクリアの特典は、一千億英雄ポイントけん・身体能力値の限界突破券げんかいとっぱけん・スキルわく撤廃券てっぱいけん・ユニークスキル創造券そうぞうけん・特別シナリオ【ゲーム世界へ転生】の選択券せんたくけんが各一枚づつですね!』




中々、破格はかくな特典内容だった。能力値(筋力STR耐久力VIT知力INT敏捷AGI器用DEX魅力CHA)を英雄ポイント分で、人種種族の成長限界値の上限を設定変更が出来る。但し、スタート時の能力値は初期設定値のままなので、所謂いわゆる俺Tueeeは出来ない。


スキルわく撤廃てっぱいって、無限むげんにスキルをセットして良いらしい。勿論もちろん、スキルもカスタマイズ可能だ。


【アルグリア戦記】では、キャラアバターごとにスキルレベルの成長上限値が設定されている。其の成長限界値を、英雄ポイントを使用してカスタマイズする。初期設定値は変更不可な仕様しようなので、最初からの俺Tueeeは勿論もちろん出来ない。




ユニークスキル創造って、もうチートだよね?




最後の特別シナリオ【ゲーム世界に転生】の選択券せんたくけんいたっては、インダストリア社の運営チームが悪乗わるのりしてネーミングしたとしか思えないものだった。




『ほう、【ゲーム世界に転生】か? 浪漫ロマンじゃないか、! はっははははは~!』




豪快ごうかいに笑う師匠ししょうに、『ははは、・・・・・・』と苦笑にがわらいで応答おうとうする俺だった。




なんにしても、楽しんで来いカルマ! 一回いっかいりの人生だ、いの無いようにな!』




全くその通りだ。一回コッキリの人生だ。




俺は亡くなった幼馴染おさななじみの分も、人生を楽しむと決めていた。




『じゃあ、師匠ししょう! ! また連絡しますから、楽しみにしていて下さい!』




『おう! またなカルマ!』






----------






俺はめずらしくおどけた調子のカルマとの通信つうしんを切った。そして、自分がした闘いの顛末てんまつを見届ける。



地平線ちへいせん一杯いっぱいに、人類じんるいだったむくろが転がっている。


惨憺さんたんたる光景こうけいに、感情の無い目を向ける。


生きとし生けるもの全てが炭化たんかしていた。


其処そこ灼熱地獄しゃくねつじごくごとく、ほのおの熱が充満じゅうまんしていた。




俺は大空を滑空かっくうしながら、気持ち良く熱風と舞う。




凄いなカルマのやつ。誰一人としてクリアした者がいない、鬼畜きちく無理むりゲーシナリオをクリアするとは。恐れ入ったぜ、俺には無理だ。退屈たいくつで死んじまう。なにが楽しくて【カルマ値(行動に因るゲーム設定上の善悪の数値)】を調整しながら遊ばなければならないんだ。




「ふん、そんなものはクソらえだ!」 




俺は我道わがみちをいく。自分のルールにのっとって、【アルグリア戦記】を楽しむ。そんな大陸たいりく統一とういつ制覇せいはために、楽しみを封印ふういんしてまで作業ゲー(楽しみの無い行為を繰り返すゲーム)のような事なんか出来るかってんだ!




プレイヤーネーム【クマメタル】は、そう毒突どくづくとに燃える翼をひるがえし大空をばたく。プレイアバター【ラフレシア】として、十の災厄アンタッチャブル一角いっかく、【不死鳥ふしちょう】として災厄さいやくをバラく。




アルグリア大陸の生きとし生きるもの全ての頂点ちょうてん十個体じゅっこたいの内の一体をプレイするクマメタルに取って、闘いとは殲滅せんめつを意味する。ようするに皆殺みなごろしが、彼の流儀りゅうぎだった。


十の災厄アンタッチャブル】には、縄張りテリトリーから外には移動不可の制限が付く。ゆえにアルグリア大陸の住民達は、十の災厄アンタッチャブル勢力圏せいりょくけんおかさない。所属国家ごと滅ぼされた数多あまた教訓きょうくんが、たましい脳髄のうずいに【畏怖いふ】としてきざみ込まれていたからだ。


【不死鳥ラフレシア】の縄張りテリトリーは、【アゾット炎獄えんごく】。炎が燃えさか地獄じごくのような火の監獄かんごく。誰もおとずれない炎獄えんごく守護しゅごする鳥は、ほむらやす事無ことなく、炎獄えんごく以外の空を翔ぶ事はかなわなかった。




自分が燃やし尽くした灰燼かいじんから立ち昇る命の残照ざんしょうを、美味おいしそうに吸い込み大空をまわる。




アルグリア大陸の四十七国家を掌中しょうちゅうおさめる事を目指めざさず、全ての勢力を倒す殲滅せんめつプレイヤーである【クマメタル】にとって、【アルグリア戦記】とは息抜いきぬきにほかならない。


攻撃されなければ、攻撃をしないルールを持つ【クマメタル】は、俺を攻撃しろ、毒饅頭どくまんじゅうらえと、で、今日も陽気ようきに【アルグリア大陸】を飛翔ひしょうしていた。






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『ぽ~ん♪ マスター、ようこそ仮想空間へ! 本日のご用命ようめいを、おうかがいします!』




現実と仮想現実の世界とのエントランスである【ポータルサイトの案内人】の【ナリア】が、いつものごとく行き先をたずねる。




『やあ、ナリア! 【アルグリア戦記】で頼む!』




あおひとみあお毛玉けだまごとたぬきが、了解りょうかいとばかりに、空中くうちゅう可愛かわいらしくうなずく。




『いってらしゃいませ、マスター!』




『ああ、行って来る!』 






----------






『【カルマ】さま! ようこそ、【アルグリア戦記】へ! 現在、継続けいぞくプレイ中のアバターはごいませんが、新規しんきアバターでプレイを始められますか?』





純白じゅんぱくの空間に浮かぶ執事服に身を包んだ黒猫の姿の、【アルグリア戦記の総合案内人】である【ジョドー】が、つねに変わらない慇懃いんぎんな動作でカルマを迎えた。




『ああ、ジョドー。今回は【ゲーム世界に転生】の【カルマ】でプレイするよ!』




『なるほど! 【創造神の試練】クリア特典ですかカルマさま? ほう、特別シナリオですね、・・・・・・【ゲーム世界に転生】? なんと厨二病ちゅうにびょうあふれるネーミングでしょう! のジョドー、あきれを通り越して笑ってしまいそうです!』




そう言いながらも、全く感情を表に出さないポーカーフェイスの執事に、カルマは内心ないしん苦笑くしょうをしてゲームスタートの準備を始める。


特別シナリオ【ゲーム世界に転生】を選択券で指定し、プレイアバター【カルマ】を選択する。




あれ、封印ふういん状態じょうたいじゃないぞ? 如何どうなってるんだ?




キャラアバターのステータス情報を見ながら、カルマはいぶかしむ。




スキルと能力値欄のうりょくちらんで、ポイント固定の封印ふういん表示ひょうじが無い!


はて、特別シナリオってイージーモードなの?


まあ、無いなら無いで問題は無い。




次に能力値を限界突破券で上限値を解除かいじょにして、英雄ポイントで上限一杯まで限界値を上げていく。




う、うん? あれ、未々まだまだ上がり続けるぞ?




一千億英雄ポイント券を使用してポイントを獲得かくとくしてと!




おっ! 百億英雄ポイントで【無限表示】にったぞ!




筋力STR耐久力VIT知力INT敏捷AGI器用DEX魅力CHAの各能力値をマックスの【無限表示】まで上げる。


状態値である生命力HP魔力MP精神力MSP持久力EPは、育成次第で人種種族関係なく無限に成長が可能だった。




状態値まで【1】ポイント固定だったら、【創造神の試練】はクリア出来なかっただろう。


次にスキルだ。れは悩むな。スキルわく撤廃券てっぱいけんで制限を解除かいじょ。現在所持している全てのスキルを付与するのは、容易たやすい。


だが、スキルは生き物なのでスキル同士で相性が悪いと、逆に力を発揮はっき出来できない。


目指すは両親の早世そいせいを阻止する。【創造神の試練】でアルグリア統一とういつ制覇せいはげた仲間達の無念むねんを全て改変かいへんする。


ために全ての特典とポイントを使用して、プレイヤーネーム【カルマ】なら絶対にしない無双むそうプレイをると決めていた。自重じちょうはしない。


十二万三十四回。合計でプレイアバター【カルマ】の両親が亡くなった回数だった。両親が脳裏情報マインドインフォメーション事切こときれるたびに、胸の奥がチクリと痛んだ。自分のために文字通り命を投げ出した両親。


辛苦しんくを共にし、文字通り命をけて大陸たいりく統一とういつ制覇せいはげた仲間達。誰もが身体に、心に傷をっていた。共に戦い共に笑い共に死んだ仲間達。何万回と見た戦友ともの死。無念むねんおもい。全て俺が変えてやる。運命シナリオくつがえなお改変かいへんする。




カルマはそう心に決めていた。




スキルの選定せんていは、最終スキル構成を想定そうていして逆算ぎゃくさん(目的地から逆に辿たど算段さんだん)で作り上げていく。両親を仲間を助けるため、カルマは未来地(最終目標)を設定し、現在地(生まれた時)から小目標を設定し、ルートを設定していく。れをすスキル構成を的確てきかく付与ふよしていくのだった。




お、アイテムの持ち込みも制限がないぞ?




スゲー、流石さすがは特別シナリオ! やっぱりスーパーイージーモードだ!




つねのカルマなら喜ぶどころか、しぶい顔にる状況だが、なにせ今回はまんいちにも失敗は許されない。何故なぜなら特別シナリオ券は一枚しかない。失敗すれば再度【創造神の試練】をクリアしてももらえるか不明ふめいだった。


過去のシナリオでもシナリオマラソン(特典目当てで何回も同じシナリオをプレイする事)での特典とくてん獲得かくとく防止ぼうしために、初回しか獲得かくとく出来できない限定特典も存在そんざいしたからだ。




ふ~ん、子孫しそんでの継承けいしょうプレイは、不可ふかなのか?




全てのカスタマイズを終えたカルマは、ジョドーに【ゲームスタート】を申告しんこくする。




『準備は万全ばんぜんのようですね。カルマさま、・・・・・・』




執事の言葉には、うれいがあった。顔には全く表さない感情かんじょうが、ノンプレイヤーキャラクターをよそおうジョドーのこころうちった。




如何どうしたの、ジョドー? なにか心配事でもるの?』




普段とは様子の違うジョドーにカルマは、小首こくびかしげる。




『いえ、全く問題はありません! 【カルマ】さま、準備が整いました! !』




『行って来、えっ?(なに、お元気でって?)』




珍妙ちんみょうな顔をしたままのカルマが、エフェクト処理しょりされ分解ぶんかいされながら消えてった。






---------- 




「おぎゃああああああああああああああああああ~!」




「マルナよくやった! 元気な男の子だ! ・・・・・・よし! 【カルマ】と名付けよう!」




「カルマ、うっ、うう・・・・・・生まれてき、てくれて・・・・・・あり、がとう~」




お元気でってなんなんだよ? 如何どうう意味だよ、ジョドー?




俺は普段と様子の違う執事の言葉が、みょうに心にかっていた。




まあ、今更いまさら考えても仕方ない。シナリオクリア後に聞けばむ事だ。




特別シナリオ【ゲーム世界に転生】でも、始まりは【創造神の試練】と全く一緒いっしょだな。




そりゃそうか、違ってたら逆に変だ。

 



さあ、此処ここからは時間との勝負だ。呑気のんきに状態値を上げているわけにはいかない。そんなゆるい時間はない。設定した小目標をクリアするため早速さっそくうごす。

 



の前にステータスの確認をしないと! 俺は脳裏情報マインドインフォメーションに自分のステータス情報を表示した。




----------




【情報表示】:▼


氏名NAME:【カルマ】


個体LV:【1】


備考:▼


年齢:【0歳】


種族:【森精霊人エルフ普精霊人ヒューマン混血クオーター


身分:【未設定】


職業:【未設定】


称号:【異世界転生者】▼


   【異世界転生者】:転生した異界者いかいしゃの称号。異世界言語いせかいげんごを使用可能。


   【プレイヤー】▼


   【プレイヤー】:ゲームプレイヤーの称号。ゲームシステムを使用可能。



才能スキル:【分体ぶんたい分裂ぶんれつ★】▼


   【分体ぶんたい分裂ぶんれつ★】:母体ぼたい分体ぶんたい分裂ぶんれつする能力スキル。


   【存在遮断エクジストブロック★】▼


   【存在遮断エクジストブロック★】:存在そんざいを別次元に隔離遮断かくりしゃだんする能力スキル。


   【迷宮創造ダンジョンメーカー★】▼


   【迷宮創造ダンジョンメーカー★】:迷宮ダンジョン創造そうぞうする技術スキル。


   【魔力無双マジックオーバー☆】▼


   【魔力無双マジックオーバー☆】:現在の魔力値×10000倍にする能力スキル。


   【状態じょうたい異常いじょう無効むこう☆】▼


   【状態じょうたい異常いじょう無効むこう☆】: 諸有あらゆる状態異常を無効状態にする能力スキル。


    【心眼しんがん☆】▼


   【心眼しんがん☆】:鑑定眼の上位版の能力スキル。


   【神童しんどうLV1】▼


   【神童しんどうLV1】:十八歳まで獲得経験値×10倍とする能力スキル。


   【浮遊ふゆうLV1】▼


   【浮遊ふゆうLV1】:空中に浮く能力スキル。


   【時空魔法LV1】▼


   【時空魔法LV1】:時空をあやつる魔法スキル。


   【無属性むぞくせい魔法まほうLV1】▼


   【無属性むぞくせい魔法まほうLV1】:無属性の魔法スキル。


   【他】▽


説明:▼

   【運命うんめい宿命しゅくめいもう


【状態表示】:▼


生命力HP:【6/6】


魔力MP :【80000/80000】


精神力MSP:【9/9】


持久力EP:【3/3】


満腹度FP:【11/100】


【能力表示】:▼


筋力STR  :【1】


耐久力VIT :【1】


知力INT  :【1】


敏捷AGI  :【1】


器用DEX  :【1】


魅力CHA  :【1】



【部隊編成表示】:▼


統率力LEA:【未設定】


攻撃力OFF:【未設定】


防御力DEF:【未設定】


機動力MOB:【未設定】


持久力END:【未設定】/【未設定】


戦法力TAC:【未設定】/【未設定】


士気力MOR:【未設定】/【未設定】


詳細:▼


主将:【未設定】


副将:【未設定】


副将:【未設定】


部隊:【未設定】


戦法:【未設定】


特性:【未設定】


説明:【未設定】




----------




ブホッ! なんだよ、称号【異世界転生者いせかいてんせいしゃ】って? 【ゲーム世界に転生】ってそう言う意味かよ?




俺は全てをさっした! つまり【異世界アルグリア】に転生した設定でプレイするシナリオなんだ!




ジョドーのあの様子も、あの言葉も、雰囲気ふんいきを盛り上げる設定だったんだ!




なんだよ、実は本当にゲーム世界に転生したかとあせったじゃないか! ジョドーに一杯いっぱいわされた! 




れで、【プレイヤー】の称号もるのか。




さてこうしている場合じゃない。




俺は両親の一瞬いっしゅんすきを付いて、ユニークスキル固有才能の【分体ぶんたい分裂ぶんれつ★】を使用し、母体ぼたいは眠った振りをして、分体ぶんたいは【時空じくう魔法まほうLV1】の【短距離転移ショートワープ】で屋外にんだ。




なんだかワクワクするな! れじゃ、れいところまいりますか!




俺はぱだかままで、極寒ごくかんの吹雪の中を短距離転移ショートワープで進んでいく。




脳裏地図マインドマップ脳裏情報マインドインフォメーションから、への最短距離を空中に浮かび短距離転移ショートワープ併用へいようして進む。




時折ときおり、個体レベルを上げるご褒美ほうびタイムを満喫まんきつする予定だ。




おっと、スノーラビットだ!




俺は気配を隠蔽いんぺいするスキルの最上位さいじょういであるエクストラスキル【存在遮断エクジストブロック★】を使用する。のスキルは其処そこ存在そんざいしながらも、本当の身体は別次元べつじげん存在そんざいするスキルで、ファントムロード(種族)でプレイしたアバターでの完全制覇かんぜんせいはクリア特典だった。


現在の次元じげんいて、、姿も気配も熱も臭いも感じる事は無い。尚且なおかつ、通常武器ではダメージをわない。聖属性武器以外は物理無敵ぶつりむてきのチートスキルだった。まあ、聖属性攻撃に激弱げきよわなんだけどね、・・・・・・




ブォン!




空気を切り裂く透明のつぶてが、スノーラビットをおそう!




無属性むぞくせい魔法まほうLV1】の無属性むぞくせいの魔力を、ドリルのように回転(攻撃力を上昇する)させながら、殺傷能力さっしょうのうりょくを高めたつぶてがスノーラビットにヒットする!




バシュッ!




透明のつぶてはスノーラビットの眉間みけんを、寸分すんぶんたがわず打ち抜いた。




そして、はなを、しろい雪原にかせたのだった。




へぇ~、綺麗きれいだ! ・・・・・・、じゃあないわ!!!




俺は一人ひとりみと言う特殊とくしゅ高等こうとうテクニックを、唯一人ただひとり披露ひろうして唖然あぜんとした。




純白じゅんぱくの雪が降り積もる雪原にいた一輪いちりんはなのように、たしかに其処そこにはった。




普段はエフェクト処理しょりされ、こぼれるように粒子りゅうしが舞い散るところだ。




マジッスか? 本当に冗談じゅうだんではなく転生したの?




俺は脳裏情報マインドインフォメーションから、運営への【GMコール】をするためにコールボタンを押そうとしたが、・・・・・・ボタンが無い?




マジッスか? いやいや、インダストリアのクリエイターはイカれているからな、れはなにかのドッキリ?




演出えんしゅつ一環いっかんとも言えるか、・・・・・・言えるか!!!




俺は一人ひとりみと言う特殊とくしゅ高等こうとうテクニックを、唯一人ただひとり再度さいど披露ひろうして疲労感ひろうかんおそわれた。




現実世界と仮想現実世界での唯一ゆいいつの違いは、のエフェクト処理しょりだった。




プレイヤーの精神をまもためのシステム。のシステムを切るのは、【仮想現実世界の原則げんそく】に大きく違反いはんする。




れで精神に異常いじょうを起こしたら、賠償額ばいしょうがく天文学的てんもんがくてきな数字が提示ていじされるだろう。




ふむ、他プレイヤーとの通信つうしんシステムのボタンはるが、灰色表示でなにかロックが掛かっているようだ。




れに、緊急時きんきゅうじの【ゲームアウト】ボタンも無い、・・・・・・よ?




やっちまったな! ジョドー!! やっちまったな!!!




俺は【ゲームスタート】する時の、【アルグリア戦記の総合案内人】であるジョドーの言葉を思い出していた。




『いえ、全く問題はありません! 【カルマ】さま、準備が整いました! !』




全く問題まくりじゃないか、ジョドー?




聞いてないよ~、ジョドー? 此処ここは本当に異世界なのか?




ドッキリイベントじゃないのか?




異世界なら、俺がお亡くなりになったら【ゲームオーバー】らぬ、【ライフオーバー人生終了】にっちゃうの?




俺、如何どうっちゃうの?




ゲーム世界に転生って、なんじゃ! そりゃあああああ~!!!








「おぎゃああああああああああ~! (ゲーム世界に転生って、なんじゃ! そりゃあああああ~!)」




暖かい暖炉だんろの炎にらされながら、母体ぼたいのカルマも泣き叫ぶ。




「よ~し、よしよし~お腹空いたの~? 泣かないで~」




ウグウグっ! ・・・・・・母ちゃん、・・・・・・母乳が美味すぎる・・・・・・、ゲポっ!




マルナにあやされ授乳じゅにゅうされるカルマは、至福しふくに包まれた。








「あぅあぅあぅあああ!!!(テメエ、知ってやがったな! ジョドー!!)」




極寒ごくかん雪化粧ゆきげしょうの中、空中に浮かぶぱだかで叫ぶ!




視線しせんの先には、飛沫しぶきはなのようにいていた。







【アルグリア戦記】には、セーブ機能きのうは存在しない。全て最初からのスタートとる。で、セーブなどは出来るはずもない。此処ここは【アルグリア世界】、もう一つの現実の世界。現実の一秒が、三千百十万四千秒に相当そうとうする仮想の現実世界。現実の一時間が、百二十九万六千日(三千五百五十年と二百五十日)に相当そうとうする【悠久ゆうきゅう歴史れきしきざ世界せかい】。




たして、【アルグリア世界】は、仮想の現実世界なのだろうか? れとも、実はもう一つの現実世界【異世界いせかい】なのだろうか? の答えは【プレイヤー】だけが知っている。








To be続きは continuedまた次回で! ・・・・・・

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