ラウンド

@BOX-BUN

序章

『セコンドアウト』


アナウンスが響く。

疲労した体の気怠さと、まだ整っていない呼吸の苦しさに後ろ髪を引かれながら、俺は赤コーナー側の椅子から立ち上がった。

「よっし!行ってこい」

セコンドから背中を叩かれる。

「行ってきます……」

乳酸が溜まっているのか腕を上げるのも辛い。足もさっきからガタガタ震えている。熱くて頭もボーっとする。満身創痍だが、体が勝手にリングの中央へ動いた。

ふと青コーナー側を見る。あいつは余裕そうな笑みを浮かべて、俺を一直線に見つめていた。

「……このやろう」

心臓が張り裂けそうなぐらい高鳴り、身体中に血を巡らせている。

目の前のあいつを倒せと、本能が全身に命令している。

あぁ、あと1ラウンド、たった2分間で全てが決まってしまうのだ。

勝ちたい。勝ちたい勝ちたい勝ちたい。

頭の中はもうそれしかない。

腕が自然に上がった。足の震えもぴったりと止まった。

頭の熱は……まだ熱いままだ。でも意識ははっきりとしている。

あいつと殴りあうために、勝つために、フル回転で回っている。

準備は整った。

さぁ、始めようか。


『ファイナルラウンド』


カーン

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る