第483話 終戦
レギさんとクルストさんが壮絶な殴り合いをした後、倒れたクルストさんとレギさんは何やら話をしているようだ。
ナレアさんの方もキオルとなにやら話し込んでいるようだし......二人とも今回の件については情報をしっかり得た感じかな?
......俺だけ何もしていない気がするけど......まぁ、対峙した相手のせいという事にしておこう。
そんなことを考えていると俺の傍にファラが飛び降りてきた。
......どこから?
ついに忍者的な登場の仕方でも覚えたのかな......?
『ケイ様、お待たせしました。この施設について調査報告をさせて頂きたいのですが、よろしかったでしょうか?』
「お疲れ様、ファラ。聞かせてもらえるかな?」
俺はファラの部下に探してきてもらったロープで倒れている奴らを縛りながら、ファラの報告に耳を傾ける。
『まず、この施設は檻が所有するものではなく、国立の施設のようです。』
「国立?何処の国?」
『セウレン王国という国でして、都市国家群よりも北に位置する小国です。国自体が檻と関係しているかはまだ調べられておりませんが、この施設に現在人はあまりいないようです。』
「それは夜も遅いからってことだよね?」
『はい。普段から使われているような形跡が各所に見られたので、恐らくケイ様のお考えが正しいと思われます。この部屋の外には警備が巡回していますが、あまり気を張った様子はありません。』
「......なるほど。」
ルーティンワークの巡回って感じか。
リィリさんを攫ったとは言え、相手はこの場所に踏み込まれるとは考えてもいなかったみたいだし警備が厳重になっていなくてもおかしくはないけど......少し違和感はあるかな?
人を攫ってきているのだから少しは警戒していてもおかしくないと思う......特にこの部屋の周囲を守っていないのはおかしいだろう。
つまり......外にいる警備はこの部屋で何が行われているか把握していない可能性が高い?
「檻の構成員......少なくとも今施設内にいる構成員はこの部屋にいる奴等だけかもね。」
『その可能性は高いように感じられます。この施設は魔術の研究機関のようですが、行われている研究は平和的な物が多く......また、魔道国にあった研究所に比べ技術も低く感じられました。』
「なるほどね......この施設はキオルによって利用されているだけって感じかも知れないね......まさか、ここで俺が気絶させた人達も檻とは無関係って可能性は......いや、関係があろうがなかろうが、リィリさんが攫われてきているにも拘らず、気にせず普通に研究しようとしていたのだからぶっ飛ばされても文句は無いよね。」
攫われてきたことを知らなくても、意識の無い女性を実験台にするような奴に手加減は必要ないだろう。
いや、まてよ......同意の上ってキオルが説明していたりしたとしたら......。
まぁ......もしそうだとしたら、この場にいた不運ってことで諦めてもらおう。
そんなことを考えながら手を動かしていたけど......これが最後の一人だったみたいだ。
後はナレアさんの傍で転がっている奴等だけだけど......魔力視を使って見た限り、幻惑魔法が手足に絡みつくように掛けられているから......恐らく拘束が見えない様になっているだけだろうね。
『そうですね、当然の報いかと。』
ファラが俺の言葉に頷いてくれる。
「ありがとう、ファラ。他は何か分かったことある?」
『はい。この施設の外の事ですが、山道が整備されておりまして、道沿いに山を下ったところ街を発見出来ました。』
「ナレアさんの予想通りだね。でも近くに街があるのにわざわざ山の中に研究施設を作ったのはなんでだろ?不便じゃない?」
『この施設の裏に水源がありまして、そこの管理もしているようです。元々は管理の為の施設だったのかもしれませんね。』
「なるほど......その水源で何か調査するようなことがあって、次第に研究施設として拡張されていったとかかな?」
そんなことを話しているとナレアさんがこちらを見ながら手招きをしている。
どうやら話がついたようだね。
レギさん達の方を見ると......うわぁ......。
顔中を変形させたレギさんとクルストさんが並んでこちらに向かって来ている。
まぁ......凄い殴り合いだったからな......少し時間が経って、一気に腫れが来たのだろう。
回復魔法を掛けてあげたい所だけど......ここで回復魔法を見せるわけには行かないしな。
それに、レギさんはともかくクルストさんは......治してあげる必要は無いだろう。
多分まだ殴られるだろうし。
「ファラ。俺はナレアさん達と合流するけど、ファラは姿を見せない方がいいだろうね。」
『承知いたしました。陰に潜んでいます。』
ファラという情報収集担当がいることは絶対にばらさない方が良い。
知ったからと言ってそう簡単に防げるものではないけど、知らなければ防ぐのはほぼ無理だからね。
俺はシャルとマナスを連れてナレアさんの所に近づく。
ナレアさんの前には椅子に座って落ち着いた様子を見せるキオルがいて......どうやらナレアさんはキオルに一撃も加えていないようだね。
レギさん達も合流して......クルストさんはキオルの傍に立つ。
「おや?お馬鹿さんが一人足りませんね。」
「あの馬鹿なら向こうでのんびり寝てるぞ。」
キオルの発言にクルストさんが顎で倒れている男を指す。
「まぁ......あのお馬鹿さんは居ても居なくても同じなのでいいでしょう。」
何と言うか......扱いが酷いな。
いや、呼び方も相当ひどいけど。
「とりあえず、お互いの情報をすり合わせるのじゃ。お主等は......余計な事はするでないぞ?」
「えぇ、当然です。」
どんなやり取りをしたのか......キオルは随分と素直に言う事を聞いているな。
「......レギ殿、ケイ。すまぬ。独断で奴と取引をすることにしたのじゃ。」
「......取引の内容次第だが、聞かせてくれるか?」
レギさんの言葉にナレアさんは頷くとキオルとの話の内容を聞かせてくれる。
檻の目的、そして魔道国で何をしようとしていたのかを。
「とんでもねぇこと企んでやがったな。」
「王都から戦力を引きはがしてからダンジョン化......王都の人達の持つ魔力を全てダンジョンの魔力へと変質させる。最終目標は......神の復活ですか。」
魔神なんか復活させて一体何になるっていうのか......母さん達から聞いている話では百害あって一利なしって感じだけど。
魔神にも加護とか眷属化みたいなものがあるのだろうか?
確か......ナレアさん達とは違う、魔神の眷属としての魔族というのが昔はいたみたいだけど......魔神と共に滅んだとか......。
「檻の目的に関しては......現時点でどうすることも出来ないじゃろうが、魔道国に対する行動は防ぎたいのう。」
「南の方の魔物の襲撃はその時の為の仕掛けだったのですよね?」
「うむ。じゃが、妾達を王都から離すために今回その仕掛けを使ったようじゃ。向こうの計画では魔物の調査の為に妾達が南に向かい、クルストがそれに同行することで誘拐をやり易くすると言った感じだったようじゃな。」
それはなんというか......計画倒れしていますね。
「まぁ、普段であれば南に向かっておったじゃろうな。」
「龍王国でのことが無ければ行っていた気はしますね。」
軍を王都から引きはがす為に魔物の襲撃が計画されたと考えていたけど......狙いが俺達だとは思わなかったな。
誘拐には成功したものの、計画は失敗って感じだ。
まぁ、その誘拐も成功の様な失敗の様な......微妙な感じではあるけど......ナレアさんとの取引によって相手は目的を果たせたのだろうか?
「そうじゃな......ところでレギ殿の方も話し込んでいたようじゃが、何か聞けたのかの?」
「あぁ、俺は......奴らの目的というか......何故リィリを攫ったのかをな。」
クルストさん達の目的......先ほどのダンジョンでは頑なに話そうとしなかったけど......聞き出すことが出来たのか。
俺とナレアさんは、顔を晴らしたレギさんからクルストさん達の過去、そして目的を聞かされた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます