第143話 ゴーレムとの戦い



重装のゴーレムと入れ替わるように軽装のゴーレムが部屋から出て来たのだが、先ほどまでのタイプと違って動きが早い!


「くっ!」


レギさんがゴーレムのスピードに押されている!


「レギさん正面交代します!ナレアさん!ゴーレムの右側に入ってください!」


レギさんのいる正面に俺が入りレギさんが一度下がる。

俺ならば相手の動きに翻弄されることはないが......先ほどまでのタイプと違い攻撃が激しい!

相手の攻撃を受け流してはいるが、側面にいるリィリさんやナレアさんにも牽制するかのように攻撃をして二人とも攻めあぐねている。

両手が剣状になっていて下手に触れると指が落ちそうだ。

先程の重装のゴーレムは岩のような巨体だったが今度の相手は各部が尖っていて非常に痛そうなデザインをしている。

先程のゴーレムは体が大きく部屋の中は見えなかったが、今度のゴーレムは細身なのでチラチラと部屋の中が見える。

どうやら後ろに別のタイプのゴーレムが控えているようだ。


「ナレア代われ!腕を落とす!」


一度下がったレギさんがナレアさんと入れ替わり前に出てきてその勢いのままゴーレムの右腕に斧を叩きつけて叩き割る。

ゴーレムは体勢を崩したがすぐに立て直し無事な方の手で薙ぎ払うように切り払ってきた。

相手の右手側にしゃがむように躱したのだが次の目の前で何かが弾ける。

直接当たったわけでも無くダメージはなかったのだが驚いて体勢を少し崩してしまった。


『ケイ様!大丈夫ですか!?』


シャルの声が聞こえて慌てて体勢を元に戻す!

何が起きた!?

続けて攻撃を仕掛けてくるゴーレムの攻撃を受け流しながら状況を確認する。


「大丈夫か!?ケイ!?」


「大丈夫です!何かが目の前で弾けました!」


「部屋の中から魔力弾が飛んできたのじゃ!恐らく部屋の中にいるゴーレムの狙撃じゃ!」


『申し訳ありません!迎撃が遅れました!』


狙撃!?

......なるほど、他のゴーレムからの攻撃をシャルが直前で防いでくれたと言う事か。


「ありがとう!シャル!」


ゴーレムの攻撃を捌きつつ、再び飛んできた魔力弾を今度はちゃんと躱しながらシャルにお礼を言う。

それにしてもゴーレムが連携してくるってナレアさんの予想も当たったみたいだね。

体の影から狙撃してくるとは思わなかったけど......凄い精度だな。

とりあえず射線が通らないように前に出ているゴーレムの蔭に入るように位置取り、攻撃に合わせて相手に密着する。

攻撃の更に内側に潜り込まれたゴーレムは間合いを離そうと後ろに下がろうとするが、その隙を逃さずに胸の装甲に指をかけ一気に引き剥がす!

露出した胸部にはやはり魔晶石が三個埋め込まれているのが確認出来る。

装甲を剥がした反動で少し間合いが空いたため、再度攻撃を仕掛けてくるゴーレムの腕を横からリィリさんが弾く!

仰け反るように体勢を崩したゴーレムの頭部に胸の装甲を剥がした時に見た隙間が見えた。

咄嗟にゴーレムの頭部に手を伸ばして引き剥がすように力を籠めると、若干の抵抗を残して頭部の装甲が剥がれた。


「四つ目の魔道具じゃ!」


ゴーレムから離れると即座に後方から魔力塊が飛んで来るが、予想していたのでそれは問題なく躱す。

距離の空いた俺に先ほどまでなら追撃を仕掛けて来ていたゴーレムが残った腕で頭部に埋め込まれた魔道具を守るように隠している。


「分かりやすく弱点と言っているのか、誘っているのか......どっちですかね?」


「恐らく弱点じゃ......胸の魔道具それぞれと魔力が繋がるようになっておる。恐らく頭部の魔道具が総括しておるのじゃろう。」


「狙うのはそこだな......。」


レギさんが武器を構え直すと同時にゴーレムが俺に向かって突っ込んできた。

片腕になったゴーレムの攻撃をいなすのはそこまで難しくはない、力を逸らされて体勢を崩したゴーレムの頭部にレギさんの一撃が襲い掛かる!

しかしその斧に後方から放たれた魔力塊が当り軌道が逸らされた。


「ちっ!」


そのままレギさんは斧を床に打ち付けてしまい体勢を崩す。

そこに体勢を立て直したゴーレムが一撃を放つが間に俺が割って入り攻撃を受け止める!

その隙にリィリさんが頭部に取り付き魔道具をむしり取る。

頭部の魔道具を失ったゴーレムは糸を失った人形のように崩れ落ちた。

魔道具を奪ったリィリさんに向けて魔力塊が放たれるがレギさんがそれを打ち落とす。

リィリさんはすぐに射線から外れて魔道具をナレアさんに渡した。

俺とレギさんも射線から外れるように移動する。

倒れたゴーレムは部屋の中に引きずり込まれ代わりに重装ゴーレムが再び姿を出て来た。


「......なんで胸の装甲が戻っているのですかね?」


「いや、腕が二本あるほうがおかしくないか?」


再び姿を現したゴーレムは先程与えた損傷が元に戻っていた。

俺とレギさんがぶつくさ言っているとナレアさんが呆れたような声で突っ込みを入れてくる。


「普通に考えて別個体じゃろ......問題はどこで交代したかと言う事じゃな。」


階段前で待機している個体や別の階から代わりのゴーレムが来たのであればファラから連絡が入るはずだ......


「とりあえず、正面は俺が代わる......下手するとさっき倒した奴もまた戻ってくるかもしれないな。」


そんな無限に湧いてくるのは勘弁してもらいたい所だけど......実際目の前に新しいのがいるからな......無いとも言い切れない。

レギさんがゴーレムの攻撃を受け止めるが......腕はしっかりくっついているようだ。


「俺が抑えるから頭を頼む!」


腕を振り下ろし床に叩きつけたゴーレムの腕を上から斧の柄の部分で押さえつけたレギさんが叫ぶ。

すぐに俺はゴーレムの頭に飛びつき装甲と魔道具を一気に取り外す。

動力を失ったゴーレムが力を失うと同時に部屋の中から魔力塊が放たれる。

部屋の中に残っているのは軽装の......恐らく遠距離タイプのゴーレムだと思う。


「一気に制圧します!」


「油断するなよ!」


レギさんの声を背中に聞きつつ部屋に飛び込むと、こちらに向かって腕を伸ばしているゴーレムがいた。

続けざまに魔力塊を放ってくるが撃ってくる動作が丸見えで躱すのは難しくない。

一気に接近して頭の装甲を剥がし、魔道具も続けて外す。


「倒しました!」


部屋の外に声をかけるとレギさんとリィリさんが部屋の中に入ってくる。

部屋の隅には最初に倒した軽装のゴーレムが置かれているが......何故か腕が付いている。


「重装のゴーレムは交代した訳じゃなくて直ったってことですかね......?」


部屋の中に入ってきたレギさんとリィリさんに問いかけてみる。

軽装タイプのゴーレムを調べると頭部には装甲が付いていたが魔道具はついておらず、動き出す様子もなかった。


「戦闘中にこんな一瞬で直るものなのか......?」


「ナレアさんはさっき交代したって言っていたと思うので、普通は直らないのだと思いますが......ナレアさんは?」


何故か部屋に入ってきたのは二人だけだったのでリィリさんに聞いてみる。


「部屋の外で倒れているゴーレムを調べているよ。」


早速か......。


「......これ、一度全部外に運び出して安全な場所で調べてもらった方が良くないですか?」


「その方が良さそうだな。ナレアもこのゴーレムを見るのは初めてのようだしな。しっかりと調べてもらわないとこの遺跡を調べるのはかなりきつそうだ。」


「じゃぁ、レギにぃに部屋の外のゴーレムを外に運び出してもらおう。私は今倒した奴を、ケイ君は最初に倒した奴をお願い。」


いくらレギさんでも重装タイプのゴーレムを一人で運ぶのは厳しいだろう......重さは何とかなっても自分より大きな人型のものだ......道具も使わず運ぶのは無理だろう。


「いや......あれを一人で運ぶのは無理だろ......。」


「抱えて運ぶのは無理ですね......引きずっていけば何とかなりますかね?」


「......ぶつけながら運び出したらナレアが文句言いそうだしな......ケイ手伝ってくれ。」


「分かりました。」


とりあえず重装タイプのゴーレムを調べているナレアさんを引き剥がして遺跡の外にゴーレムを運ぶことにした。

ファラとマナスも一度引き上げてもらおう。

遺跡にきて何度目だろう......こう思うのは。

この遺跡、相当厄介だ......。


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