2章 ダンジョン
第41話 ミーティングの時間です
レギさんと森に行った日から一週間程準備に時間を費やした後、俺達はダンジョンへと向かった。
ダンジョンは結構遠く、まずは隣の街、というか国か?
そこを経由してさらに西へと進んだところに村があり、そこから山間を進んだ先にある谷底にあった。
それはそうと都市国家っていう形態、街がそれぞれ独立してるって言われてもな......よくわからん。
みんな国とは呼ばずに街って呼んでるしな......。
まぁ今はそれはどうでもいいか。
「さて、一月ぶりだな。」
「......毎月きていたんですか?」
俺達は今、件のダンジョンの入り口まで来ていた。
「まぁ、ここまではな。最初は入り口見つけるのも一苦労だったぜ。脱出した時は殆ど意識がなかったから場所を覚えてなくてな......。当時はかなり探し回った。」
「そうだったんですね......。そういえば上にあった試験で使われていたダンジョンはどうなったんですか?繋がってしまったんですよね?」
「何が起こるか分からなかったからな。すぐに攻略されたよ。研究の為に残すって意見もあったらしいが、それよりも危険を少しでも減らしたいって意見の方が多かったからな。」
「なるほど......。」
確かに研究した方が今後の為になるだろう。
未知は恐怖を伴う、既知にして安心を得たいのは当然の欲求だと思う。
一度起こった事は二度起きないとは限らない、いやどちらかと言えば必ず起こると言えるだろう。
それを未然に防ぐため、条件を状況を状態を調べなくてはいけない。
だが、それでも何が起こるか分からないという恐怖の方が勝った。
どちらも未来に対する備えには違いないし、どちらも未知を既知にする手段の一つだとは思う。
どちらが正解かはわからないけれど、こういうことにはっきりとした正解なんかないんだろうね。
「それじゃぁ突入前のミーティングを始めようや。」
「はい。」
今回ダンジョンに突入するのは、レギさん、俺、シャル、マナスの四人だ。
最初はグルフも来てもらうって案もあったが洞窟系のダンジョンなので狭い部分もある、そういった時の対応に困るので今回も留守番だ。
早く体の大きさを変えられる魔道具を作れるようになる必要があるね。
「俺達の目的は......ダンジョン内の探索だ。ギルドで地図を買ってきているが上層部しか書かれていない、探索はあまり進んでいないようだな。まずはこの範囲を全部回る。入り口付近はほぼ通路で構成されていて広さもあまりない、この辺は今日中に回りたいな。出てくる魔物はアンデッドの類、厄介なのは相手に痛覚や恐怖心がないことだな。俺は一撃で叩き潰すようなスタイルだがにーちゃんは相手を翻弄して削り、急所を狙うタイプだろ?」
「そうですね、コボルトの時とは戦い方を変えるつもりです。流石に新しい武器を練習する時間はなかったのでいつもの武器で行きますが、戦い方は変えるつもりです。」
「分かった、少し慣れる必要があるだろうから最初の戦闘はにーちゃんに任せる。次の戦闘は俺がやろう。身体強化をかけてもらった状態での実戦は俺も初めてだからな。」
「了解です。」
初めて戦うタイプの相手ということは心配だけど、そこまで不安があるわけじゃない。
それよりもレギさんの方が気になる。
前回はダンジョンに入ることが出来た、今もここでいつも通り話すことが出来ている。
聞いた話ではダンジョンの入り口で倒れていたらしいけどここに来て顔色一つ変えていない。
このダンジョンこそが元凶なのだが、そこに近づいて少なくとも表面上は平静でいられる。
平気なはずはないと思う、だがそれでもしっかりとこの場に立っている。
後は中に入ることが出来ればある程度は大丈夫だと思うけど......。
「シャルの索敵の範囲はダンジョンだと狭くなるって言ってたな?」
「そうですね、地形にもよると思いますけど、前のダンジョンで接敵するまで歩いて三、四分って距離くらいまでは探知出来ていました。」
「......本当に、無茶苦茶な奴だな......だが、助かる。ある程度警戒は任せて大丈夫そうだな。」
「はい、大丈夫です。」
レギさんは顔をしかめながら頭をかく。
鬼ごっこでシャルにやられたのを思い出しているのかもしれない。
グルフやマナスと一緒に空に打ち上げられていたからな......。
「よし、今日はレストポイントまで行く。そこまで時間はかからないと思うが、初日だし今日の探索はそこまでにするつもりだ。」
「わかりました。」
レストポイント......ダンジョンの中で偶にある魔力が薄い場所。
そこに魔物は新しく発生せず、うろついている魔物もあまり足を踏み入れない。
百パーセントではないが、安全地帯だ。
一日で探索できる範囲はそう多くない、レストポイントを中心に探索していく必要があるが、地図の範囲外はレストポイントの場所さえ分からない。
探索を続ける上で絶対に見つけなくてはいけない場所だが、地図が入り口付近しかないということは奥の方を探索するためのレストポイントが見つかっていないってことだと思う。
それに関してはうシャルのお蔭でかなり楽に探せるんじゃないかと思う。
探知範囲に魔力の薄い場所があればそれが分かるそうなのだ。
普通の冒険者は、実際にその場に赴いて魔道具で測定しないといけないらしい。
もちろんその魔道具も回数制限があるのでいくらでもホイホイ使うわけにはいかない。
それもあってレストポイントの発見は難易度が高いのだろう。
レギさんが言うには勘で魔力を測定するかどうか決めるらしい......。
そういえば、ダンジョンに入った時に肌がピリピリした覚えがあるな......もしかしたらレストポイントはそれがないのかもしれないね。
一応測定をする魔道具も持ってきてはいる、念のため確認する必要はあるだろうしね。
「探索の方針は以上だ。後は、そうだな。にーちゃん一応言っておくがアンデッドは首を刎ねても動きは止まらないからな?バラバラにするか叩き潰さないといけないぞ?」
「面倒ですね......。」
確かに、俺の戦い方では向いてない相手だな......。
『ケイ様、アンデッドは体のどこかに高密度の魔力核を持っています。』
「魔力核?」
『はい、アンデッドの体はその魔力核によって動いていますので、その部分を貫けば一撃で倒せます。貫けなくても体の大元から切り離せば動けなくなるので後はどうにでもなるかと。個体によって魔力核の場所は違いますが。』
「へぇ......そんな弱点が......でもそれって外からみて分かるわけじゃないよね?そんな弱点があるならみんな気付くだろうし。」
『強化魔法で魔力視を出来るようにすれば見えます。』
「なるほど、魔力視か......そういえばデリータさんが最初にあった時に魔力を見る魔道具を使っていたな......あれだと見えるのかな?」
「どうした?にーちゃん。」
「あぁ、すみません。今シャルからアンデッドの弱点を教えてもらっていまして。」
「アンデッドの弱点?」
「はい、アンデッドは魔力核ってものを持っていてそこを潰すか体から切り離せばいいそうです。」
「なんだそりゃ?聞いたことねぇぞ?」
「魔力視をしたら見えるそうです。」
「それはまた高価な魔道具が必要だな......。」
「高いんですか?」
「あぁ、かなり高いな。俺の持ってる解毒の魔道具が十個くらい買える値段だ。」
「それは凄そうですね......でも、強化魔法で見えるようにできるので大丈夫ですよ。シャルから教えてもらいました。」
「......魔法が便利なのはもう驚かないが......シャルは一体何者なんだよ......アンデッドの弱点なんて多分誰も知らないぞ......。」
俺はシャルの頭を撫でる。
「シャルは賢くて凄いんです。」
「......そういうレベルか?いや、まぁいいか。その強化魔法、俺にも掛けてくれ。」
「了解です。」
「よし、じゃぁそろそろ行くか!」
レギさんが気合を入れるように自分の頬を両手で叩く。
「ケイ、それにシャル、マナス。宜しく頼む。」
レギさんが頭を下げてくる。
......初めて名前で呼ばれたな。
「必ず、ヘイルさん達を連れて帰りましょう。」
レギさんが顔を上げ、ダンジョンに向かう。
俺達はレギさんを追うようにダンジョンへと足を向けた。
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