第10話 虚像は公爵令嬢に救われる3
ダリアは、自分の事を買ったらしい貴族の女の思考が読めなかった。
だってダリアは魔物で。虐げれて、ゴミが燃やされるように命が尽きるのが普通で。
「ロキには手を出さないで。命令よ」
…………なのに何で、同じ魔物の男は、こんなに大事にされているのか。魔物の男は特に驚いた様子もなく、それが彼等にとって普通の事なのだと言うことが伺えた。
「なんだよ……そんなの……」
呟いて、ダリアはセルディナに向かって駆け出した。
セルディナを……大嫌いな貴族を殺すため。ダリアは自分が死んでも良いと、手を伸ばした。
魔物が、貴族を守るなんてあり得ない。口ではどう言っても、貴族が殺されそうになったとしたら庇う筈がない。
「死ね、大っ嫌いな
姿を消したまま、ダリアはセルディナの首を掴もうとした。
……しかしダリアの<幻影>は、実体こそ消すことが出来ても、音や匂い、殺気までは隠しきれない。
「セルディナ様に触れるな」
「ロキ、殺しては駄目!!」
ロキの手がダリアに伸びるのと、セルディナがロキを止めるのは同時だった。
ダリアの<幻影>が崩れて、何も無かったはずの空間から、セルディナに向かって手を伸ばすダリアの姿が暴かれる。
その腕を、ギリギリと音が鳴りそうな程に強く握っているのはロキで。その手の強さが、魔物の筈のロキが、セルディナの事を心の底から守りたいと思っている事が伺えた。
「そんなの……おかしいだろ……」
呟いて、ダリアはガクリと座り込んだ。
大嫌いな貴族と、同族の筈の魔物が信頼し合うなんて、そんな事がある筈がないのに……。あり得ない筈の光景を前に、ダリアはどうすればいいのか分からなかった。もしかしたら、ダリアはもう死んでいて、この世界は、ダリアが生きていた、辛いばかりの世界とは違う場所なのかもしれないなんて、そんな馬鹿みたいなことまで考えてしまって……。
「セルディナ様は、普通の貴族とは違う」
項垂れるダリアの腕を掴んだまま、ロキが言った。
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