理想の告白をしたい彼とさっさと告白して欲しい彼女
久野真一
第1話 理想の告白をするには
「改まって相談って何だよ?まーた、くだらないことじゃないだろうな」
友人の
俺、
「……理想の告白を考えてるんだが、なかなかいいのが思い浮かばないんだ」
前置きをしても仕方がないので、単刀直入に相談事を話す。
「俺、帰ってもいいか?」
陽介の奴は、早くも
「待て待て、なんでそれだけで呆れた目つきになるんだよ」
「そりゃ、お前が予想通りくだらない事を言ってきたからだよ」
「俺は真剣だぞ。シチュエーション、言葉選びで返事だって変わるかもしれない」
「それが
「いやいや、杞憂じゃないぞ」
「はあ。お前、
その言葉に、俺はこれまで、想い人の
「ざっと、5回といったところかな」
「それだけ応じてくれるって事はほぼ間違いなく脈ありだ」
「そうかぁ?」
「疑り深いな」
「慎重と言ってくれ」
「とにかく、それ以上行くと、逆に「私に興味がないのかな」と思うラインだ」
生物部というと一見陰キャが属するイメージがある部活だ。しかし、陽介は男女ともに友達は多いし、彼女持ち。その言葉には重みがある。
「陽介の言うことだからそうなんだろう。しかし、相手は寛子だぞ?断るのは悪いからとかで、デートをOKしてくれてても、おかしくない」
あいつは自己評価が低い上に、NOと言えない性格なので、頼み事や面倒事をやたら押し付けられているのをよく見る。伊達に小さい頃から付き合いがあるわけではない。
「幼馴染だからだってか?にしても、お前は慎重過ぎるだろ……。正直、次のデートのラストで、ふつーに直球で告白すりゃOKだろと思うけどな」
陽介の言う通り、俺はやたら慎重過ぎるところがある。どうしてもできるだけ確実を期して、という思考になってしまう。
「慎重過ぎるってお前の言葉はもっともだと思う。ただ、できるだけいい告白をしたいと思うんだ。相談に乗ってくれないか?」
切実な想いで嘆願する。
「はあ。わかったよ。じゃ、まずは告白の言葉だが、シンプルイズベスト、だ」
「というと?」
「長々とした口上は良くないってことだ」
「なるほど。理由は?」
「逆の立場になってみろよ。デートは順調。ムードも最高潮。さて、早く告白してくれないかな……ってところに、長口上が来たらどう思う?」
「少なくとも、困惑はしそうだな」
「そういうこと。理由は言ってもいいけど、後にしとけ」
なるほど。ためになる。メモっておこう。
「告白の言葉は……まあ、千差万別だ。知り合ったシチュエーションやお前らの関係性、その場の雰囲気にもよる。その辺は、お前の方が相澤さんの事わかってるだろうから、よく考えろ」
「なるほどな。あいつが望んでいる言葉、か……」
自己評価が低くて、自信がないあいつが言われて嬉しい言葉はなんだろうか。
「告白のシチュエーションはどこがいいんだろうな。夜景を見ながらとか?」
「夜まで一緒にいるのならな。まあ、慎重を期するのなら、帰り際ってのが一番ありがちだな」
「まあ、帰り際って「楽しかったなあ」っていうのと同時に、寂しい気持ちが出てくる時だからなあ」
寛子とのデートの帰り際を思い出す。その日の楽しかった思い出と、もう少し一緒に居たいという気持ちが同居するのが常だった。もし、俺の目が曇っていなかったのなら、あいつもまだ離れたくないと思っていたような気もする。
「よくわかってらっしゃる。下手打たなきゃ大丈夫だ。たとえば、大勢の前とかな」
「さすがにそれはドン引きだろ……。やる奴いるのかよ」
「世の中にはいるんだよ。そういう奴が。で、お前はそんなのやらねえだろ?」
「そりゃ、もちろんだ」
何が悲しくて衆人環視の中で告白などしなければいけないのか。
「じゃ、後は遊園地でも映画でも適当に誘って、サクっと告白して来い」
「簡単にいうなあ……」
「脈アリな事が明白なところでやたら慎重になってるお前がおかしい」
「性分だ。お前もよく知ってるだろ?」
「その慎重さは美点だと思うぜ。ただ、恋愛で慎重になりすぎるのはやめとけ」
「肝に銘じておくよ」
そうして、陽介との相談は終わったのだが、次のデート、どこに誘ったもんだろうなあ。放課後にでも聞いてみるか。
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