第15話
翌日から、フランソワの暮らすガイヤ村において、あらゆるものの税金が引き上げられた。
買い物にかかる税から土地所有税、住民税など、もともとギリギリだったフランソワの生活はさらなる厳しさを味わうことになった。
それ故にフランソワは石炭、野菜、工場勤務だけでは生活を回すことが出来なくなり、工場勤務の時間を朝まで延ばした。
家に帰って寝る時間などほとんどなくなってしまったが、仕方のないことだと思うしかない。
「お、お疲れ様です主人」
「お、おう。お疲れ様。そ、それよりお前大丈夫か?顔色悪いぞ」
「そうですか?はは、寝てないんでね」
「お、おい………」
ふらふらと佇んでいる。立っているのがやっとのようだ。
いくら笑っても目が笑っていないし、普段と違い濁った瞳の下にはクマが出来ている。
野菜売り場の主人はフランソワの苦労を察した。自分も少なからず高率の税金によって苦しんでいるのだ。ましてや、はっきり言ってもともと貧しいフランソワは、身体を大車輪のように働かせないとならないのだろう。
とても不憫に思えてならないので、今日も適当な理由をつけて、無理矢理にでも野菜をたんまり渡した。
フランソワは疲れ果てて、形式だけでも遠慮する余裕すらないようだ。
ありがとうございますと気のない湿った声で言い、ふらふらとその場を後にした。
「大丈夫かなあいつ……」
ロイドの方はというと、やはり、いきなりの強引な増税に驚きを隠せていなかった。また、そんな話は今までに一切出ていないため、詳細を全く把握出来ておらず、一体どういうことかと執事や他の人間にたずねるが、いずれの人も分からないようで、ますますロイドの中で疑問が深まるばかりだった。
(何故こんな重要な決定を誰にも知らせずに実行したのだろう)
何か理由があるに違いないと思った。
指令を出した張本人であるアリアス国王に今回の増税の件についてたずねてやっと、ロイドは詳細を把握することが出来た。そして、その目的と大体の見立てはついた。
(もしかして……)
とりあえず、例のごとく来週に控えるソフィと夫人による昼食会にて今回の政策について何らかの会話があるかもしれないので、それまで待つしかないと思った。
ロイドの見立てがもし正しいのであれば、迂闊にその話題について触れると相手もこちらを疑ってくるに違いない。リスクはおかさない方が良いだろう。
ただ、唯一の問題はフランソワのことだ。
フランソワが元々極貧生活を送っていることは勿論、ロイドも知っている。
それなのにもかかわらず税率を50%も引き上げられようものなら、今頃ヒーヒー言っているに違いない。
早くフランソワの元へ訪問し、少なからず援助してやらねばと思った。
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