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「大丈夫です。俺がちゃんとどんな花火か解説入れますから。たとえば……赤と黄色の光が超パチパチ光ってますとか。シューッて滝みたいに花火が流れてますとか……」


「明日香君ったら、おかしい」


 希ちゃんがクスクスと楽しそうに笑った。俺は大真面目に答えたのに、舞さんもつられて笑っている。


 その笑顔を見て、俺の気持ちも和む。


 夕食まで御馳走になり、希ちゃんは浴衣に着替える。白地に赤や紫の朝顔の花柄、ポニーテールにした髪型も新鮮で可愛い。


「……どうかな?似合う? この浴衣、ママの浴衣なんだよ」


「舞さんの……。すっごく似合ってるよ。綺麗だよ」


 恥ずかしそうに笑った希ちゃん。

 縁側から庭に出ると、夜空に星が輝く。


「星が……すごく綺麗だよ」


 俺は舞さんに話しかける。


「そう……」


 見えない目で、舞さんが夜空を見上げた。その美しい瞳に、光を取り戻してあげたいと切実に思った。


 舞さんが心から見たいと思えるように、俺は三人の楽しい時間を作る。


 花火に火を点けると、希ちゃんが子供みたいに「キャーキャー」騒いだ。


「ここを持って下さい」


 俺は舞さんの手を取り、花火を渡す。


「怖いわ……」


「何恐がってんの。大丈夫だよ」


 火を点けたら、花火はシューッと音を立て勢いよく赤い光を放った。舞さんは花火を音で楽しんでいるようだった。


「綺麗?」


「すごく、綺麗だよ。昔、この庭でよくやったよな。二人で浴衣を着て、希ちゃんみたいにハシャイでたよな」


「えっ……?」


 ――それは翔吾の記憶だった。

 フラッシュバックのように映像が脳裏を過ぎり、自然と口から零れ落ちた。


 舞さんは口を噤み、花火に視線を向けた。


「明日香君、何? ママと何の話をしてるの?」


 希ちゃんが花火を持ったまま近付いてくる。


「危ねぇ……。希ちゃん、花火をこっちに向けないで」


「あははっ、ごめん、ごめん……。ねぇねぇ明日香君。次はこれやろうよ」


「わかったから、焦らないで」


 俺は希ちゃんと一緒に、次々と花火に火を点けた。


 戸惑っている舞さん……。

 ゆっくりでいいんだ。


 翔吾とのことを思い出して……。

 光がある世界を思い出して……。


 光がある世界はこんなにも綺麗なんだよ。


 ――夜空に赤や黄色の光が舞う。

 幻想的な光は、俺達の笑顔を明るく照らした。

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