大野くんの非日常―The Clock Runner―

アイハラシン

【00】XXXX/XX/XX

ACT00 プロローグ

 もういちど、その口で私に「おはよう」と言ってくれないか。

 もういちど、その目で私を見てくれないか。

 もういちど、その耳で私の声を聴いてくれないか。

 もういちど、その手で私に触れてくれないか。


 君の存在は、記憶の人ではない。

 君の存在は、思い出の人ではない。

 君の存在は、消え去る過去ではない。


 私は認めない。

 私はさせない。

 私がさせない。


 もういちど、この口で君に「おはよう」と言うために。

 もういちど、この目で君を見るために。

 もういちど、この耳で君の声を聴くために。

 もういちど、この手で君に触れるために。


 君の存在を、記憶の人にはさせない。

 君の存在を、思い出の人にはさせない。

 君の存在を、消え去る過去にはさせない。


 全てを空想にする。

 全てを虚構にする。

 全てを悪い夢にする。

 

 私がそれを成し遂げる。

 私は神に逆らう。

 変えられない運命など無い。

 それを私が、証明してみせる。

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