第25話:パーテとパミング
武具生産が活発なペウスの街。
そんな街でも、深夜になれば人々は眠りについていた。
勇者パーテも例に漏れずに眠っている。
しかし、静かな街の中、外をひっそりと出歩く者がいた。
その人物は、全身を鎧で包んでいたが、音もなく足早に、パーテの眠る家へと忍び寄っていた。
その時、パーテの家に忍び寄っていた人物は、突如地中に沈んでいく!
パーテの家の前には、落とし穴が仕掛けられていたのだ!
侵入者は、大きな音を立てて、穴の底に激突した。
その音を聞きつけ、罠の仕掛け主であるパーテが、家のドアを開ける。
「ふふふふ! はははははっ! やっぱり来やがったなぁ! 来なけりゃどうしようかと思ってたところだぜぇ、パミングよおぉっ!」勇者
「いたたた。や、やあ。酷いことするじゃないか。私が遊びに来るのが、そんなにも怖かったんだ?」パミング
侵入者はパミングだった。
魔王亡き今、四天王かどうかすら怪しいパミングだが、相も変わらずパーテの元に忍び込みにきたのだ!
「来なかったら怖かったなぁ! もしテメェが姿を現さなけりゃよぉ、これから一生、お前の暗殺にビビッて生きてくことになってた! 絶対テメェは生きてて、俺を殺すつもりだと思ってたけどな!」勇者
「魔王が城で死んでいたけど、あれ、毒殺だよね。魔王ですら死ぬ毒なのに、よく私が生きてると思えたね」パミング
「魔王ですら動けねえ毒なのによ、テメェは走って逃げたんだから、そりゃ効いてるわけねえよな!」勇者
パーテは近くのシャベルを使い、パミングの入った穴を埋めていく。
パミングは体勢を立て直し、鎧に付着した粉を払う。
「生き埋めにするつもり? 無駄なことを。私は必ず生き延びて、お前を殺しにいくぞ。そして私を王とした魔王軍を再建するんだ」パミング
「テメェならやるだろうな。だがどうして俺の命を狙いやがる?」勇者
「他の四天王を殺してくれた時点で、お前は用済みだからね。それに性格悪すぎて、死んでる方が魅力的だし」パミング
「そいつぁお互い様だなぁ! 趣味は悪いが、生きてるテメェなんぞに比べたら、死んでるテメェのほうが一億倍可愛らしいに決まってんぜ! だから殺してやるよ! 死んで可愛くなってきなぁっ!」勇者
「穴の深さは、私の身長の3倍ほど。土の重さで殺せるほどじゃあないね」パミング
「そうだろうな! テメェが生き埋めで死ぬなんて思わねぇ! だからこれをくれてやるっ! あばよっ」勇者
パーテは家から遠ざかりながら、ランプと松明を穴の中に投げ入れる。
「ランプと松明? 悪いけど鎧は燃えないし、窒息は想定して……いや、違う。まさか!?」パミング
二つの可燃物がパミングに迫る。
その時、穴は壮絶な爆炎を吹き上げた!
パーテが穴を埋めるときに使ったのは、シャベルと火薬!
夕方にペウスの街で購入した火薬に、炎が引火したのだ!
穴から吹き上げた爆炎は、近くにあった購入済みの家にも燃え移る。
少しして、家の中にあった樽にも引火し、更なる爆発を引き起こした!
パーテは、穴の罠が破られることに備えて、家にも火薬入り樽を置いていた。
二度の爆発で騒然となる、ペウスの街。
そんな街を背に、勇者パーテは野宿先を探すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます