第9話:勇者殺しの罠

勇者パーテは、昼の勇者殺しの山を進んでいた。それも剣を振りながら。

パーテが剣を振る度に、見えない糸のようなものが、バチンバチンと音を立てて切断されていく。


「ははん。こんな小技で勇者たちを切断してたとはな。何度も再生する糸の罠! 糸を張る仕組みはわからないが、切断の原因がわかれば大したことはない!」勇者


パーテは、崖際に横たわる死体を蹴落とす。

地面は遥か下にあり、すでに下山には数日かかる位置にパーテはいた。


「餓死者の死体、落石で潰された死体、落下死のような死体! 道中で見つけた死体は事故死ばかりだ! ……だが糸で切断する罠はあった。切断された死体だけに的を絞り、何者かが、山の入口へと飛ばしていることは確かだ。そうなんだろ、糸の設置者さんよぉーっ! 俺が糸を切りながら進んでいることに、もうすでに気づいてんだろーっ!」勇者


パーテの叫びに、返事はない。

パーテは転がっている死体を叩き切り、先に進んでいく。


「結局のところ! 平原での集団戦に長けた勇者ギルドの連中を、ホームの山で、エサにしているだけみてーだな! あとは重装備勇者を燃やした罠、死体を浮かせた罠、それらに気をつければいい」勇者


次なる罠の見当もついていないパーテ。

しかし、そんな罠に遭遇することなく、パーテは山頂へと到達した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る