第8話:勇者殺しの山

勇者パーテは、伝説の武具があるという山にやってきた。

山の入り口には、すでに多くの勇者の死体が転がっている。

先に進もうとするパーテに、見張りの兵士が声をかける。


「そこの勇者様。ここは通称、勇者殺しの山と呼ばれる聖域です。入山の際は、どうかお気をつけくださいませ」兵士

「それは承知の上だが。入口なのに死体が多いな。しかも、なんだこの綺麗な切断跡は?」勇者

「私は入山したことないのでなんとも。ただ、これは見張りの経験則ですが。軽装備で入山した勇者様方は、高確率でこのように切断されて降ってきますね」兵士

「降ってくる?」勇者

「ここの死体は空から降ってきたものです。空を見張っていますが、死体がまとまって飛んでくるのですよ。ああ、またきましたね」兵士


パーテが空に目をやると、そこには黒い塊のようなものが飛んでいた。

黒い塊は、ある地点で飛ぶのをやめ、いきなり落下を始める。

そして、パーテが足を踏み入れるはずの、山の入り口に激突した!

落下の衝撃で、黒い塊はいくつかのパーツとなって散らばってしまう。


「うわっ。焼け焦げてる」勇者

「あれは重装備の勇者様ですね。すみません。片付けも仕事ですので」兵士


兵士は気にした様子もなく、手際よく、散らばった塊を隅に投げていく。

人の原型はほとんどなく、焼け焦げた鎧だけに等しい。

パーテはため息をつき、山の中に足を踏み入れていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る