叙唱メモリアル:黒い狼の奇妙な旅路

@axlglint_josyou

第一章 一匹狼

プロローグ"生きる"



目の前にあるのは肉塊。

血を流し、生きていたはずのソレはもう動かない。

周りは瓦礫、腐った死体。

地獄とは、なんなのか。

後に振り返れば、此処こそがそうだったとわかるだろう。



「・・・腹減ったな。」



背丈の小さい俺は、満月を見上げた。

目の前に倒れた大の大人には目もくれず、落とした携帯食料を手に取った。



「うん、ご馳走だ。」



腐ってない、それでいて食べかけじゃない。

最高だ、こんなの滅多に食べられない。

その場で貪って食べた。

味はどうだったか。でも確かに腹が満たされた感じがした。


毎日、こんな風に食べられたらいいのに。


だけど、そんな願いは次の地獄の底に、いつでも叩き伏せられる。

俺はそれを知ってるから、もう期待なんてしなくなっていた。



「次、誰を殺せばいいのかな。」



まずは寝床を探さなきゃ。

小さな俺は、まだ人間だった頃の俺は走り出した。

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