第23話 部屋とリア充とLINE
色々と方向性が決まったので、今日は解散となった。しかし……あの愛花ちゃんの表情……気になる。確かに顔を赤らめていたと思うんだよな~。……まあ俺には紗奈さんがいるし、深く考えるのはよそう。それよりオリジナルとカバーの練習をしないと。
帰り道、いつものように加奈さんと紗奈さんと一緒に帰る。今日の話題はオリジナルの曲のことより、愛花ちゃんの話だった。
「びっくりしたよねー。急に「椎名林檎がいいです」なーんて言ってくるんだから」
加奈さんが言う。
「そうですね。しかも意外なチョイス(笑)ああ見えて、実は音楽かなり聴いてるかもしれませんよ」
俺が応える。
「紗奈はどう?歌えそう?」
「うーん……曲を聞いた限り、音域は問題なさそうだけど、歌い方が独特だから……そこが悩みどころかな……へへ」
紗奈さんが笑うと俺は幸せな気持ちになる。いいなあ。これがリア充というやつなのだろうか。でも、相変わらず教室ではバレない様に、俺はぼっちの振りを続けてるけどね。世の男子どもよ。お前らの知らないところで、俺は超絶美少女ときゃっきゃうふふしてるんだぜ!さぞうらやましかろう。はっは。……何て心の中で呟いても誰も気付かないけどね……いつかオープンにできるといいな。でも……その時加奈さんはどういう顔するだろう。喜んでくれるかな。それとも……
「和人……紗奈と付き合ってるって本当?」
「本当です。お互いに好きあってます」
「そんな……じゃあ、私の、私のこの気持ちはどすればいいの……?」
「え?加奈さん、それは……」
「……黙ってたけど、実は和人、私もあなたが好き。多分紗奈に負けない位。ねえ、私の気持ちはどうすればいいの!?」
「加奈さん……気持ちは嬉しいけど……」
「和人。私は紗奈の次でもいい。私のことも見て!私のことも、紗奈の半分でいいから……好きになって……」
「加奈さん……」
「聞いてる?遠藤君、遠藤君!」
はっ、一気に現実に引き戻される。たまーにやっちゃうなー加奈さん妄想。好きなのかな。なーんて。で、何の話だっけ。
「すいません、聞いてませんでした」
「大丈夫?今話してた愛花ちゃんのことなんだけど、軽音部に入れて良かったんだよね」
「それはそうですよ。まどかさんも元気になったみたいだし、聞き専でもいいから彼女に居場所を作ってあげたのはめっちゃいいことだと思います」
「そうだよね。嫌がってる風でもないし、これでいじめ自体無くなってくれてればいいんだけど……」
「そうですね……」
本当にそう思う。俺のぼっち生活が報われたように、彼女も報われて欲しい。そのためには椎名林檎のカバーをいいものにしてあげようと思う。
「あ、ところでオリジナルの方はどうします?一応ストックはあるんで、何かに録音して渡しましょうか?」
「んー、どうしよっかなー。結局皆に聞かせなきゃいけないからね。だから録音したものをくれると同時に、部室で一回弾いてみてくれない?それで、皆自分のパートのイメージを掴んでもらってさ。そうだ、遠藤君LINE交換しようよ」
うっ!来た!ぼっちの天敵LINE!実はぼっち生活が長かったせいで、俺はああいうSNS系には拒否反応が起こるのだ。そのため紗奈さんとも交換したのはメアドのみ。くっ、どうする俺!……正直に言うか。
「加奈さん、実は俺LINEやってないんです。……やらなきゃやっぱまずいっすか?」
「えー!今時やってないの?めっずらしいねー」
くぅ……刺さる、刺さるよ加奈さん。
「LINE使えば、曲を録音したやつを共有できるからさ。登録しちゃいなよ」
うう……逃げ道はないのか……紗奈さんをちらっと見る。すると紗奈さんも俺にLINEを登録してほしそうな子犬のような目でこっちを見ていた。……腹を括るしかなさそうだ……
「分かりました。……どうやるんですか?」
「えー、そっから?そんなんストアからインストールして設定すればいいだけだよ。スマホ貸してくれれば私やっちゃうよ?」
い、いやこのスマホには紗奈さんとのいちゃらぶメールがたくさん入っている。これを人に貸すわけにはいかない!
「あ、いや大丈夫です。えっと、ストアから……あったあった。インストールっと……」
「じゃあ、設定しといてね。どうせだから、今度部室に集まった時、全員LINE交換してグループ作ろ。その方が連絡が取りやすくていいっしょ」
グループとは何なのか今一分からないが、恐らく、軽音部の掲示板を作るようなことかな。でも、物は考えようだ。これで紗奈さんのLINEがゲットできて、メールより頻繁にやり取りができる。……俺の黒歴史からも連絡が来るのが目に見えているが……それは何とかしよう。とにかく、どうせならポジティブに捉えて使いこなしていくしかない!
……LINE一つで何をやってるんだろうね、俺は。
まあ、でもこれで一つリア充に近づいた訳だ。それに、メンバー間の親睦も深まるかもしれない。何だいいことづくめじゃないか。よし、帰って早速設定しよう。そして紗奈さんのLINEをゲットした暁には……ぐふふ……
俺はまたしても妄想の世界に入り、加奈さんに心配されることになったのであった。そして、このLINEがまた一つ、違う扉を開くきっかけになるのであった。そのことを俺はまだ知らない……
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