第9話 シド&ナンシー

 学校に行く途中で村田姉妹と遭遇した。早速試練の時が来た!見てて下さい、ロックの神様!やり遂げてみせます!まずは先手必勝!




 「お、おあひゃう!」








 ……噛みまくったーーーーー!!!










 ロックの神様、あんた中々厳しいな……だからロッカーは早死になのか……?




 「おはよう」




 「おはようございます。……どうしたんですか?顔が赤いですよ?」




 よ、良かった、特に気にしてないみたいだ。ロックの神様は見捨ててなかった!




 一人俺が慌てているのをよそに加奈さんが話しかけてくる。




 「遠藤君、分かってるね?今日からGIRLS FREE!!本格始動だよ。とりあえず絶対昼休みと放課後は部室に来ること!練習だけじゃなくて、メンバー間の親睦も深めないとね」




 「あ、ああ、分かってます。昨日めっちゃ練習したし」




 「いいねーそのやる気。紗奈もいい?お昼ご飯は部室で食べよ?友達付き合いは別のとこでしっかりやればいいからさ」




 「うん。実は私もバンド楽しみになってきちゃったんだ。だからやるんならしっかりやりたい!」




 「お、紗奈もやる気あるじゃん!我々の前途は明るいよ!」




 ふう、今日も眩しいぜ加奈さん。もし紗奈さんがいなかったら惚れてたかも……って何を考えてんだ俺は!でも魅力的なのは事実だな。いいとこはどんどん認めてこーぜ、俺。




 道すがら自然と昨日の話をしながら、学校の前まで来た。そこでまどかさんとカスミさんとも遭遇する。




 「お、バンドメンバー揃ったね。詳しい話は今日の昼休みしよ!取り合えず、バンドの方向性とか皆それぞれ考えといてよ。」




 「OK」、「了解です~」なんて返事をしながらそれぞれのクラスに散っていく。でも俺と紗奈さんは同じクラスだし、後の3人も同じクラスなんだよな。だから、教室に着くまで紗奈さんと2人だけで歩く。僅かな時間だが緊張するな。




 「えと、紗奈……さん、大丈夫?昨日結構友達できてたでしょ?貴重な昼休みを部室で過ごしてもいいの?……俺は、まあ友達いないからいいんだけど……」




 言ってて寂しくなったぜ。でも隠せるもんでもないしな……




 「うん。友達は友達でちゃんと付き合っていくよ。そこは分けていくから大丈夫。それより遠藤君、友達……いないの……?」




 「う、実は……そう……なんです」




 「……だったら、私と……友達に……なる?」




 うおおおおおおおおお!!!!ロックの神様!あんたいい仕事してくれるぜ!何このおいしすぎる展開!ロックの神様、あんた新たなジョンとヨーコやシドとナンシーを求めているのか?その期待に応えてやるぜ!




 「え……いいの?俺、クラスでめっちゃモブキャラだよ?」




 「だって遠藤君ギター上手いじゃん。ギター弾いてる時の遠藤君は全然モブじゃないよ。もっと自分に自信もちなよ」




 ……目の前に女神がいる。神はこの世にいた。ああ、きっと今俺に羽があったら大気圏を突破するくらい飛んでいるだろう。あっ、でもギターかあ……しまったな……




 「そっか、忘れてた。ギター家から持ってくれば良かった。エフェクターとかも部室にはなかったしな……明日は機材持ってくるね」




 「遠藤君、ごめん……エフェクターって……何?」




 そうか、紗奈さんは加奈さんと違って普通のJKなんだ。エフェクターなんて分かんないよな。俺もシールドのこと最初ケーブルだって分からずに盾のことかと思ったもんな。




 「エフェクターってのはさ……ギターの音色を変えるアイテム……っていう認識でいいかな?エレキギターって色んな音出すでしょ?それを作ってるのが大体エフェクター」




 「へえ、遠藤君物知りなんだねー。友達いないなんて信じられない」




 ……微妙にグサッとくる一言だが、悪気がないのは百も承知さ。この位じゃへこたれないぜ。




 そんなことを喋ってたら教室に着いてしまった。教室に入るなり、紗奈さんの友達が話しかけてくる。




 「おはよー紗奈。なになにバンド組んだんだって?何か噂になってるよ?」




 「えへへ、実はそうなんだ」




 そんなやり取りを聞きながら、俺は自分の席に着く。そしてイヤホンを……取り出さない!変わるって決めたんだ。……でも取り合えずこの時間何しよう……すげー手持無沙汰。いきなり陽キャになるのも変だしな……変わるのは後にして、取り合えず音楽聞くか……そんな俺の耳に紗奈さんの友達の声が入ってくる。




 「えー、紗奈、バンドって遠藤と組んだの?あいつかなりの陰キャだよ?人と話してるの見たことないよ?もっと他にいたんじゃないの?」




 きっと俺がいつも通りイヤホンで音楽を聴いてると思ってでかい声で話しているのだろうが……もう少し言いようってもんがあるだろ……




 「えー、遠藤君全然そんなことないよ。ギターにも詳しいし、そう!ギターめっちゃ上手いんだよ!」




 「あの遠藤が~?」




 紗奈さんの友達Aがこっちを見てきたので、見返してやった。そこで俺がイヤホンを付けず机にも突っ伏していないことに気付いて、気まずそうに視線を逸らした。ふん。ざまあみろ友達Aめ!




 でも紗奈さんが俺をかばってくれたことは素直に、超うれしかった。昼休みもこの調子で話ができるといいな。


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