阿呆
@yhf
第1話 阿呆が生まれた日
その日は1993年6月8日であった。ほのかに初夏を感じる肌に暑い風が吹き付ける昼のことである。広島県の地方の田舎のとある病院で一人の妊婦が分娩室で声を荒げていた。
「ほら、もう少しですよ。ふんばって!」
「頭が見えてきましたよ。あと少しです。」
周りの助産師たちが声をかけるなか女は力いっぱいに力んでいる。
「痛い‥。フッンンンン!!」
女は痛みに必死に耐えているのか両目を力強くつぶりはを食い縛っている。
「あと少しですよ~。」
「フッンンンン!!」
この声を最後に女は体の制御を失ったかのように力なく横たわった。
「元気な男の子ですよ!」
そういう助産師の腕のなかにはけたたましく泣きさけぶ小さな生き物がいた。
「ほら、抱いてあげてください。」
女はその生き物をいとおしそうに見つめると、助産師の腕から奇っ怪な生き物を自らの腕で抱き締めた。
「産まれてきてくれてありがとう‥。」
女はそう小さくつぶやく。
「大丈夫か?!生まれたか??」
そう問いかけながら男が焦りつつ部屋に入ってきた。プレデターの父親である。この男は170cmをやや越える身長で服の上からでもわかる鍛え上げられた筋肉が見えていた。
「この子が俺の子か。ありがとう!」
感慨深そうに男は呟き、妻である女を労っいつつ続けてこう言った。
「この子の名前は浩二だ!」
「そう、いい名前をもらったわね。浩二」
男と女が語りかけるなか当の赤ん坊は全く純な表情で眠っていた。
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