俺は彼女とキスをした
六月
俺は彼女とキスをした
「こーらー!! そうじゃないでしょ!!」
彼女は顔を赤らませて僕を怒った。
剣道場で俺と彼女、他の友達は己自身を磨くために稽古していた。
彼女は大手企業の社長令嬢で円満な暮らしをしているのに、剣道を学びたいとここに来たようだ。
俺は彼女の事が……
「レイ、起きなさい!! エリーちゃんが来たわよ!!」
俺は母に呼ばれ、仕方なく起きた。
いつもの毎日。俺は急いでエリーのもとに行く。
エリーは玄関の前に待っていた。
「お待たせ!!」
「もう!! 遅い!!」
エリーは顔を赤らめる。可愛い。
俺は小学校の時からエリーを知っているけれど、こんなに人って変わるのだというぐらい綺麗になっていた。
俺はこの顔を見るためだけに寝坊したと言っても過言ではない。
そして、俺たちはエリーと二人で登校した。
十六歳。俺とエリーは同じ高等学校に進学した。
「また同じ学校だね!!」
「何言ってんだよ……。お前、もっと頑張ればもっと上の高校行けただろ?」
「そんなことはいいの!! よろしくね!! レイ!!」
エリーは俺に猛烈な笑顔を見せる。俺はその顔を照れながら、「よろしくな」と小さな返事した。
こうして、俺とエリーの学校生活が始まった。
俺とエリーは同じクラスになった。
「よー!! 俺はビル! お前の名前は?」
「レイ……」
「おいおい、声が小さいな!! よろしくな!! レイ!!」
いきなり入学初日でクラスメイトに絡まれた。俺は気を低くして
(こういうの苦手だな……)
と思いながら彼に応じた。昔は俺もこんな感じだったっけ?
彼が立ち去った後、俺は自然にエリーの様子を見ていた。
(あ、もうあいつ、友達と絡んでるよ)
エリーはフレンドリーな性格だ。だから、彼女がいくら社長令嬢と言えどすんなりと仲良くなれる。俺はそんなエリーの姿を見て微笑みながら眺めていた。
突如、エリーは俺の方に振り向く。
やばい!! 目が合った!!
俺は視線をそらし、全力で見ていないふりをした。
しかし、俺はそれでもエリーを見ていたいのか、本能的に少しだけエリーの表情を見た。
すると、エリーは俺が見たことのない深刻な表情をしていた。
初日の学校が終わり、放課後。
俺とエリーは昇降口で合流していつも行っている場所に向かった。
「ヤァアアアア!」
竹刀の音がする。ここは剣道場だ。
「さて、私たちも準備しよ!!」
「お、おう……」
俺とエリーは防具を纏う。
そして、いつものように練習相手になった。
「ヤアアアア!!」
エリーに俺は頭を一本取られた。
「こら! 何ボーっとしてんの!!」
「いやいやいや、俺は真面目にやったって!! 第一、お前が強すぎるだけだろ!!」
また、始まった。俺は必死でエリーにぶつかった。
「お前、俺の実力知ってるのになんで手加減しないんだよ!!」
「そんなのレイのために決まってるでしょ!!」
稽古するたびにいつも喧嘩になった。
エリーは普段、こういう喧嘩が嫌いなのだが、こういう時だけ強く当たってくる。
今日に限っては特に強かった。
そして、俺はこんなことを口にする。
「もういい、お前がそんな口ばかり叩くなら剣道なんて辞めてやるよ!!」
俺はこの言葉を出してしまった。別に本気で言っていない。俺は恐る恐るエリーの顔を見た。
エリーは黙ったままだった。そして、エリーの目から一粒の涙がこぼれた。
「え?」
俺は唖然とした。こんなエリーは見たことがなかった。
エリーも自分が涙を流しているのに気づき、目を当てながら剣道場を走り去った。
「どういうことだ?」
――二か月後
エリーの誕生日だ。
俺とエリーの間には未だに大きな亀裂が入っていた。
ああああ!! 俺はなんてことを言っちまったんだ!!
俺はいつもあの日の事を後悔していた。俺はエリーにこの二ヶ月間謝ることができなかった。
今日こそは! 今日こそはちゃんと謝る!!
そう思って教室の扉を開けた。
「ええ、君たちに残念なお知らせです」
おい、なんだよ。
俺は早くしてくれとばかり思った。すると、
「エリー・スミスさんが今日を以て転校することになりました」
「は?」
俺は思わず立ってしまう。
「ちょっと待てよ、先生。何冗談言ってんだよ!!」
「アーノルドくん、ちょっと落ち着きなさい。えーと、いずれも彼女は……」
「これが落ち着いてられるか!!」
俺は鞄を持って教室を出た。
(待ってろよ!! 今、お前のところに行く!!)
俺は直行でエリーの家に着いた。すると、とんでもない事が起きていた。
あいつの家には何度か行ったことあるが、ここまで厳重な警備になっているとは思わなかった。
「おい、そこの君。そこで何をしている!」
「それより、この警備はなんだ? 中に何が起きてるんだよ!!」
俺は警備員の胸倉を掴む。
「君、知らないのか? 今日はお嬢様の結婚式だよ。それで君の名……」
俺は警備員の顔を強く殴った。すると、他の警備員が自分の持っている警棒を抜く。
俺はすぐに警備員に捕まった。俺に今持っている武器なんて鞄しかない。
こんなのでは太刀打ちすらできない。
そう思った。俺は一度諦めたのだ。
すると、俺の目の前に一本の使い慣れた武器が見えた。竹刀だ。
「うおおおおお!!」
俺は掴まれた腕を強引に引き剝がす。そして、竹刀を手に取った。
(待ってろ……。今、お前のところに行く!! お前にはいろいろ話がある!!)
私の家ではある一つの規則があった。
それは十六の誕生日に必ず結婚し、スミス家を必ず反映させること。
私は学校の帰りは毎日、花嫁修業していた。メイドもいるこの家で私は苦痛で仕方なかった。
とある休憩時間、公園に逃げた私の目にある者が止まる。
小さな少年たちが竹刀を持って叩きあっていた。私が一度彼らに
「何してるの?」
と聞いた。すると彼らは
「剣道を練習しているの!!」
と言ったのだ。
私はこれをきっかけにすぐ父に剣道を習いたいと言った。だが、父に断られる。
私はそれでも諦めず、父にお願いするも断られ続けた。
そんなある日、私がいつもの通りにお願いしていたら、母がやってきた。そして、私は母のおかげで剣道を習ったのである。
「ええ、紹介する。今日から毎日、君たちと稽古することになった、エリー・スミスさんだ」
剣道場で紹介された私はすぐに周りが騒がしくなった。
それもそのはず。私は大手企業の有名なお嬢様なのだから。
私は顔を暗くする。
「俺はレイ・アーノルド!! よろしくな!! エリー!!」
私は顔を上げた。私の目に彼が移った。
普通の少年だった。でも、私の目にはカッコ良く見えた。
一目惚れだっだ。
それから、私は彼と共に稽古した。最初は彼に教えてもらうことが多かったが、次第に私が彼を指導するようになった。
そして私はある人に恋したこと父に伝えた。父の反応はこうだった。
「俺にはもうお前のわがままを一つ聞いた。もうこれ以上は聞き入れることはできない」
予想通りの反応だった。
だからかな? 最近、レイに強く当たりすぎてたのは。
「ええ、ではまず新郎。入場」
神父の声が聞こえる。もうすぐ、私もここに入るんだ……。
私は心の中でこう叫んだ。
(お願い!! 早く来て!!)
どこで式を挙げられるか見当がついていた。
屋敷の奥にある教会だ。あそこに必ずエリーがいる。
俺は竹刀で驚くほどに警備員を倒していった。あんなにエリーに怒られたのに今ではすごく体が動ける。
しかし、教会に近くなるにつれてだんだん警備員が多くなる。
その度に俺の足の震えが大きくなる。
それでも、いいんだ。俺にはエリーの声が聞こえてくる。
『助けて!!』
聞きたくない言葉が聞こえてくるのだ。俺はその度にこう言った。
『必ず助けに来る!! だから、そこで待ってろ!!』
そう言うと、足の震えが止むんだ。
次々と警備員が来る。
「うおおおお!!!」
俺は竹刀を振り続けた。お前を助けるために。
「では、次に新婦。入場」
私は父とともに教会に入った。そして、このまま誓いの言葉までことが進んだ。
「それでは、両者お互いに誓いのキスをお願いします。」
神父がそう言った。
あーあ……。せっかく大事な人を見つけたのに……。
私はすべてを諦め、目を瞑った。
すると、教会の外が何か騒がしい音がした。席に座っている人たちも騒がしくなる。
「うわああああ!!」
その声が教会中に響いた瞬間、誰かが教会の扉を開いた。
私は一粒の涙を落した。
そう、その扉をこじ開けたのはまさしく彼だった。
「どうして来てくれたの?」
「よう!」
「ど、どうして……。どうして来たのよ!!」
「そんなもん、お前が心配だったからに決まってるだろ?」
「それでも……それでも!!」
「お前、そのドレス、めっちゃ似合ってるぜ。綺麗だ。」
「!!」
エリーは顔を赤らめる。俺はエリーのもとに行った。
「そんなにボロボロになって、レイ、本当にバカじゃないの?」
「そりゃ、好きな人が他の男に奪われるってなったらこうもなるだろ」
そう言った瞬間、エリーは俺を強く抱きしめた。大きな喚き声とともに。
「き、貴様!! なんてことをしてくれるんだ!!」
エリーの父が押しかけてくる。だが、
「ちょっと、あなた!! 今はそっとしてあげなさい」
「しかし……」
「あなただってわかってるでしょ。彼らが今、どう思っているかぐらい」
エリーの母は俺たちを懐かしい様子で見ていた。
俺はただ、エリーを抱きしめた。
こうして、エリーの疾走は俺の妨害で事が終わるのである。
――三年後
俺と彼女は十八になった。俺ももう結婚できる歳になった。
あの時はいろいろあった。けど、もうそんなことなんて今ではどうでもいい話だ。
「新郎、入場」
神父に言われて俺は教会に足を踏み入れる。
「よう!! 俺の親友!! 結婚おめでとう!!」
ビルが俺に祝福してくれた。俺は彼に微笑みを見せる。
そして、次に彼女の入場だ。綺麗なドレス姿は前見た時を合わせて嬉しいことに二度目だ。
「新婦、入場」
彼女が父とともに入場した。俺はまた思う。綺麗だ。
彼女も俺の姿を見て嬉しそうな表情を浮かべた。
こうして、俺はこんな晴れ舞台で素敵な彼女とキスをした。
完
俺は彼女とキスをした 六月 @shimoshiro
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