第20話 通学路

 俺は今、由愛と肩を並べて歩いている。どうしていきなりこんなことになったのかって?そんなの俺が聞きたいよ……。全てはあの母親のせいで……!


「ね、ねぇ、卓くん?やっぱり、一緒に行くの嫌だった?なんか、難しい顔してるし……」


 はっ!お、俺ってば、余計なことを考えるあまり、由愛を全く何も会話してないじゃん!


「そ、そんなことないよ!俺も、またこうして、ゆ、由愛と一緒に行けて嬉しいと思ってる……」


 ふぅ……。なんとか誤解は解けたか?ま、待て由愛!なんでお前はそんなに顔を真っ赤にして手で隠してるんだ⁉俺、何も面白いこと言ったつもりじゃないけど⁉むしろかなり真面目に言ったつもりなんだけど⁉


 やっぱ俺が、陰キャだからなのかな……?陰キャでコミュ障だから、俺的には普通のこと言ってるつもりでも、大喜利みたいに聞こえちゃうのかな……?


「ふ、不意打ちはずるいよ、卓くん……」


 ほら!やっぱり笑われてたんだ!不意打ちって言われた!真面目に言ったのに、うけ狙ったやつみたいに思われてる!もう、自信なくなっちゃったよ……。これでも毎日、Yさんとの会話、頑張ってるんだけどなぁ……。


「あ、あのさ!なんか、こうやって話すの、すげぇ久しぶりだよな!」


 うなだれてても仕方ない!とにかく、会話しないと!由愛と話せる機会なんて、これが終わったら、もうしばらくないかもしれない。


「そ、そうだね!小学校の時以来かな?」


「だ、だよな!だから、なんかめちゃくちゃ懐かしい感じがするわ!」


 俺、パニック!女の子と喋るのなんて初めてに等しいんだから、何喋ればいいか分かんねぇ!


「ふふっ。卓くん、同じようなことずっと言ってるよ」


 終わったぁ……。会話はじめて20秒で、俺がコミュ障だとばれてしまいました……。そうだよ、俺はコミュ障なんだよ。だから、女の子と会話なんて、緊張しちゃうんだよ……。


「卓くん、緊張してるの?なんか、おろおろしてる気がする」


 そこまでばれちゃうなんて……。もう隠し通すの無理だな。


「あ、あのさ、俺、こうやって異性と話すのって、慣れてないんだ。だ、だから、正直今もめちゃくちゃ緊張してる。ご、ごめんな。こんな奴と一緒に歩いてても、何も楽しくないだろ?」


 いきなりつらつらと喋り始めたのかと思ったら、まさかの自虐って。由愛もドン引きだろうなぁ……。


 すっかり落ち込み気味の俺には、隣で由愛が頬を赤らめて嬉しそうにしていたことなど全く気が付かないのであった。

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