第9話 玄関先で

 翌朝。緊張のあまりいつもより30分も早く起きてしまった。また寝てしまうと由愛が登校するタイミングに間に合わなくなってしまうかもしれないから、二度寝することはせずに学校の支度を始めた。


 そして、朝の7時。由愛はいつも7時30分頃に家を出ている。俺はすでに身支度を終え、あとは由愛が家を出るタイミングに合わせて俺も玄関に行くだけだ。


 珍しい俺の早起きに、両親はとても驚いていたが、そんなことにいちいち構っていられる余裕はない。あと30分、ひたすら耐久だ。


 俺は自室のカーテンをほんの少しだけ開けて、由愛の部屋の方を見た。部屋の中はもう明るくなっていて、すでに起きているらしい。



 そして、時は刻一刻と流れ、7時30分まであと10分。俺はすでにカバンを背負い、いつでも出られるようにしている。


 ところがおかしい。なぜかまだ由愛の部屋の電気がついている。いつもは出ていくときに消しているから、きっとまだ家を出ていない。どうしたんだろうか?寝坊でもしたのか?


 ところで、誤解のないように言っておきたいが、俺は決して覗き魔というわけではない。いつも、すぐ近くで由愛が生活していることを感じられるこの瞬間が、とても幸せに感じるから、こうしてカーテンのわずかな隙間から垣間見ているだけだ。


 うん?それも立派な覗きだって?


 …………。ま、ばれてないから大丈夫だと思う……。と、とにかく、由愛が部屋の電気を消さない日はないんだから、もう少し待ってみよう。


 そして、それから30分が経ち、結局いつも俺が登校する8時になったころ、ようやく由愛の部屋の電気が消えた。俺も慌てて玄関へ向かう。


「あれ?卓ったらまだ行ってなかったの?早く行かないと遅刻するよ!」


 まさか由愛の部屋を覗いてたら30分経ってたなんて言えるわけもなく……、


「行ってきま~す!」


 慌てて玄関を飛び出した。と、そこには……、


「「あっ……」」


 思わず、声を出すタイミングが重なってしまった。俺も彼女も少し気まずそうに顔をそらしてしまう。


 そう、そこには、俺がおよそ10年にわたって恋焦がれている幼馴染の姿があった。





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 9話でようやく主人公とヒロインが直接会いましたね。

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