チャットアプリを始めたら、疎遠になっていたはずの幼馴染からなぜかいきなり話しかけられるようになったんだが

はちみつ

第1話 俺の好きな人

 突然だが、俺、有村卓ありむらすぐるには、幼馴染がいる。幼稚園の頃からずっと一緒で、なんと高校まで同じところになった。家も当たり前のように隣同士で、親同士の仲も良好!


 だが、一つ……たった一つ、一番重要な問題がある。


 それは……俺が幼馴染とすっかり距離が離れてしまったことだ……!


 ここで俺の幼馴染を紹介したい。


 彼女の名前は岩永由愛いわながゆめ。幼馴染と言ったら!っていう感じの、もう本当に絵にかいたような美少女で、性格もめちゃくちゃいい。肩まで伸びた綺麗な茶髪に、くりっとした大きな瞳、そして何と言っても、100点満点の笑顔!


 そんな可愛らしい彼女に心を射抜かれている奴は後を絶たず、告白してくる男子も大勢いる。ちなみに物心つく前からずっと一緒にいる俺も、小学校5年生くらいの時からだんだんと女の子らしさを増していく由愛に心惹かれ、それ以来ずっと彼女の事が好きだ。


 しかし、そんな輝かしい由愛に対して俺はというと……


 髪の毛はぼさぼさ、顔も特にイケメンではない、そして陰キャぼっち。もう本当に、由愛と比べたら天と地ほどの差がある。


 まぁそんなわけで、俺はしっかりと身の程をわきまえ、中学に入ると同時くらいに、彼女とは距離を取るようになった。もともと6年生の時から一緒に遊ぶ機会も減り、すっかりただの友達程度の関係になってしまっていた。距離を取ることだって容易にできる。


 ただ……、俺としてはつらい以外の何物でもない!好きな女の子と疎遠になっちゃうんだよ?つらいでしょ?


 由愛に聞けば、彼女は優しいから離れる必要なんてないと言ってくれるかもしれないが、俺的にはやはりだめだと思ったんだ。


 彼女は日向にいるべき存在だ。俺みたいに日陰にひっそりと生きるやつと一緒に居るべきではない。


 そんなわけで、俺はこうして頭の中では由愛と呼んでいるものの、現実ではもはや名前を呼ぶことすらない、呼んだとしても「岩永さん」と名字で呼ばなくてはいけないほど、浅い関係に成り下がってしまったのだ。







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