第5話 名告りの前に

 ふと、三歳からの子供に英才教育をする人がいることを思い出す。

「そうだ。それだ……。」

 僕はすぐさま自分の家を隅々まで綺麗にした。もちろん地下室も全てだ。そして、この大きな家中の各部屋の鍵を全て厳重になものにして、素材を集めた。人の写真やぬいぐるみ、動物に植物だ。各部屋に一種類ずつを詰め込んで行く。

 環境は完璧だ。

 

 そして近所の公園でこの研究に一番不可欠な



『子供』



を入手する為に、四・五歳ほどの子供に一人ずつ声をかけて部屋に招き入れてゆく。その際、戸締まりは特に気をつけて鍵もしっかり二重に掛ける。

 砂場で首まで埋もれた男の子は、呆然と一点を見つめていた。

 彼は、植物だけの神秘的で美しい部屋に迎え入れた。

 彼は、いじめられていたのだろうか……。

 助けを呼ぶ声もあげず。

 埋められていたままでいた男の子。

 を感じ、植物だけの神秘性を……。


 公園の滑り台の下でボロボロのぬいぐるみをキツく抱き締めて泣いていた少女には、たくさんのぬいぐるみが詰まった『The・女の子部屋!』に招いた。

 後から調べたが、彼女の家は放火犯によって家族共々灰になってしまったようだ。家族も家もないなんて……、


  研究にぴったりだ。


 僕はこのように着々と子供を集めていった。

 だが、兄弟を狙ったのはミスだった。

 兄の方に声を上げられ、右腕を噛まれて抵抗された。子供の割に力が強い。

 だが、彼もいずれ必要になりそうだな。

 

 僕が育ててあげよう。


 そう思い、そのまま連れ去った。僕の見た目が亡き母に似て美形だったのが幸いだった。近所の人にはあまり怪しまれずに済んだ。

 

 これは全て研究の為だ。


「これから僕が君たちのママ、パパの代わりだよ。」


 怯えた目をしているが、とても可愛らしく見える。

 

 またあの兄弟の兄が、何か言い出した。

「おれはいいから、他の子供たちを帰せ!お前ダレなんだよ!」

と……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る