ココロ
大橋 美紀
第1話 僕
僕はある有名な教授の下で、助手として働いている普通の研究生だ。僕は自他共に認める秀才である。だから成績は常にオールA、大学のトップでもある。だが僕は、「秀才」という言葉を褒め言葉だとは認識していない。なぜなら「秀才」はどう足掻いても「天才」には勝てないからである。特にこの世界、学者や教授などの未知なるものを解明する人たちにとっては「天才」が憎たらしく憧れでもあった。それでも僕は周りに居る「天才」たちに負けず劣らず頑張ってきた。その努力が認められ、教授にスカウトされて今の僕がある。
教授は、優しく、温厚であり、他の研究生たちからも評判が良い。
僕の憧れだ。
こんな人の下で助手として働けるなんて、本当に僕は恵まれている。他の生徒に嫌味を言われるのも納得だ。まあ、推薦入学、学年トップに加えて有名な教授の助手になったのだから、誰しも少しはムカつき、不平を感じることだってあり得るだろう。それにこれはまた自慢に聞こえるかもしれないが、僕には一年と三ヶ月付き合っている彼女がいる。これに関しては本当に自慢なのだが、彼女がいたからこそ勉強に精が出たし、自分にも自信が持てたのだと思う。それに彼女と交際してからの研究は以前より楽しく、意欲が湧き続けるばかりなのだ。
弟しかいなかった僕の人生に、教授と彼女というぬくもりができたのだ。
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