7・完全に……
「こらああああ」
それを見送っていると突然、怒鳴り声が響き渡った。
「江川?」
振り向くと、樹里が仁王立ちになってこちらを見ている。
「なに、突っ立っているのよ。まだ全然見回りできていないじゃないの」
そういいながら、ズカズカと近づいてくる。
樹里もまた見回り当番だった。
二人は校舎の周りを東側と西側に分かれてみて回り、校門のところで合流する予定だった。樹里のほうはすでに見回りを完了させて、校門のところについていたのだが、弦音がまったく来なかったために待ちきれずに弦音が見回っている校舎の東側へとやってきたらしい。
「いや、その……。いろいろあって」
「話はあとで聞くわ。わかっているの? 実行委員の仕事はやまほどあるのよ。行くわよ」
「えっと」
「早く来なさい」
「はい」
弦音は樹里を追いかけて歩ぎだした。
その様子を弦音の友人二人が見ていた。偶然にも後藤と白石が近くでやきそば屋をしているところだった。
「完全に尻にしかれているなあ」
後藤が言った。
「さっきのこと教えてあげたほうがよくないか?」
「いいんじゃねえ。自分で話すさ。まあ、言い訳にしかならないけどさあ。いらっしゃいませ」
そうこうしているうちに客がくる。
「交代の時間です」
すると、同じ部活の後輩がやってきた。
「おお、じゃぁ、あとは頼むよ」
客に一パック渡した後、後藤と白石は着ていたエプロンを脱いだ。
「これから、どうする?」
「見て回ろうぜ」
「おう」
二人は文化祭を見て回ることにした。
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