第3話 測定

 夕闇が迫る頃、三つ目の街の掃除が終わった。

 ふっ、いい頃合いだ少し飽きてきたしな。


「ソローン、今日は帰るぞ」

「はい、マスター」


 ホムンクルスの少女は、軽く身体を微振動させると器用に獲物の血や肉片を分離させ衣服には染み一つ残っていなかった。少女の首には革のベルトが巻かれワンポイントで指輪が一つ飾られ、夕陽を浴びて妖しい輝きを放っていた。


 歩いて帰るのも面倒か。

「ソローン、手を握っていろ。いいと言うまで離すなよ」

「はい、マスター」


 名を捨てた魔導士、『ソローンの造り手』は己の館を思い浮かべると転移した。

「ふぅへい、座標が目まぐるしく変わります。異常事態?」


「あわてるなソローン、魔道を使って街から館まで跳んだだけだ。前を見よ、我の館があろう」

「はい、マスターと手をつなぐ時は気を付けます」

「まあ、魔力の在り様にも気付けば何とも無いのだが。慣れて覚えよ」

「はい、マスター」


「よし、約束通り夕飯は蝙蝠増量だぞ。よく食えよ」

「わーい、マスターありがとうございます」


 食堂では、ソローンがナイフとフォークを使って優雅に蝙蝠の空揚げやソテー、生き造りなどを食していた。

 館の主は、ワイングラスに注いだ赤い液体を飲み干すと、また魔道でグラスを満たし満足げにソローンの食事風景を眺めていた。


「テーブルマナーの学習プログラムは、順調に定着したようだな。今日は、魔道の初歩について学習させるか。あと、保育器インキュベータには追加で硫黄と水銀、硫酸、ついでにエメラルドも盛っておこうか。どれぐらい性能アップするか楽しみだな。その前に現状の性能を確認するか」


 『ソローンの造り手』の前に魔法陣が浮かび上がる。その中に一枚のカードが少女の姿と魔道文字で書かれた無数の文字が彼にだけ見えていた。

 名前の欄を確認すると確かにソローンと書かれていた。


「うわっ、まだ初期段階だが脳筋に育ってしまっているな。まあ、まだ引き返せるか?」 


 名前: ソローン

 種族: ホムンクルス

 LV: 15

 STR(筋力): 30

 DEX(器用): 28

 VIT(持久): 30

 AGI(敏捷): 28

 INT(知性): 10

 MND(精神): 10

 




 

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