俺は虐められている
ネコlove
第1話
「オラッ。早く買ってこいよ!」
腹を思いきり蹴られ、うずくまる。
蹴ったらもっと遅くなることすらわからないなんてコイツらはバカだなぁ。
そう心の中で思っても口には出さない。いや、出せない。
そう。見ての通り、俺は虐められている。
それはもうガチの奴だ。
その理由は二ヶ月ほど前に遡るのだが……
「痛っ」
「大丈夫ですか?」
反射的に体が動いていた。
目の前で足をくじいて、倒れそうになっていた女の子を支えてあげたのだ。
「は、はい……ありがとうございます……!」
ところが、それが学年一可愛いと言われていた女の子だったのがマズかった。
その子は普段、男に対して結構塩対応らしく、そんな彼女が笑顔で俺に感謝を述べたもんだから、たちまち嫉妬した野郎共からの虐めが始まった。
別にただ助けただけでそれ以外の意味なんてなかったのに……。
チキショウ……。
暴力には逆らえない俺は渋々購買まで行ってパンを買っていた。
「あの……」
買うべきパンを手にし、レジに並んでいた時だった。
「はい? あっお久しぶりです」
そこには以前助けた女の子が居た。
「ありがとうございます。私とっても嬉しかったです。なので、返事は『はい』です。これからよろしくお願いしますね。まずはお互いを知ることから始めましょうか」
「えーっと……へ?」
あ、あぁ。
前助けた時嬉しかったってか。
そう。それならよかった。
「あっ。うん別にいいよ。良かった良かった」
「次のかたどうぞ」
ちょうど解決したところでタイミング良く店員に呼ばれ、そのままパンを買って、アイツらのところへ戻った。
「おい。ちゃんとやっただろうな?」
「おう。あの子の席にキチンと二枚手紙を入れといたぜ。一つはあのクソ野郎からという体のやつ。もう一つがお前ので良かったろ?」
が、何か話しているのが聞こえた。
ここで出て行っても怒られる気がしたので、廊下の角で話が終わるのを待つことにした。
「はぁ〜あ。早く来ないかなぁ。絶対アイツのところに行くわけないもんな。フハハッ」
「ホントだよなっ」
この後も三分くらい会話していたみたいだが、区切りがついたのを見計らって疲れた演技をしつつ持っていく。
「は、はいコレ」
♢♢♢
今日も学校が終わった。
アイツらに絡まれる前に帰ろうと、学校の昇降口まで急いで向かった。
下駄箱から靴を取り出し、履く。
そして外に出ようとした時……不意に袖を掴まれた。
「ねぇ、私さっき言った通り君の彼女なんだから一緒に帰る権利くらいあるでしょ……一緒に帰ろう?」
さて……これはどういうことだ?
後ろを向くと、俺の袖を掴んで上目遣いで目、ちょっとうるうる。な、学年のマドンナちゃんがいた。
というか、今の状態に驚いてちょっと思考が回ってなかったけど、今の発言、おかしいところだらけだったよな……?
かのじょ……?
へ?
「今日手紙で告白してくれたじゃん! そしてお昼購買で私『いいよ』っていったよね?」
てがみでこくはく……?
なんのことでしょうかねぇ。
「ほ、ほら。ボクみたいなキモ男があなたなんかに告白してしまいすみませんが……ほにゃららみたいな!」
「ほぇ〜。知らないな」
俺はそんな自分を卑下してないしな。
「し、しらないっ!? えっ。じゃあ、あれは嘘だったの?」
おーっと。
雲行きが怪しい……。
目に涙が溜まってきてる。
あっ。
ここで俺は気付いてしまった。
アイツらが昼話していた内容のことだ。と。
つまりは、アイツらが俺が書いたふうにしてこの子にラブレターを渡す。
そして、雰囲気イケメン(w)のアイツも書いて、どっちを選ぶかってことだったんだな。
それで俺を選んだと!
よっしゃーーーーー!
「ごめんごめん。一緒帰ろっか。なんて呼んだらいいかな?」
け、決して可愛い子ってこと以外、何も知らなかったわけでは……ましてや名前すら知らなかったなんてことはないぞ?
「やったっ……。一緒に帰れる……。 あっ。私のことは愛梨って呼んでください!」
「わかった。よろしくね愛梨。あ、そうだ。敬語じゃなくていいからね? こっちがタメ口で話してて申し訳なくなってくるし」
愛梨……か。
可愛い名ま……まぁ知ってたけどな。
♢♢♢
いやぁ。
本当に愛梨が可愛い。
ってか、付き合った次の日。
愛梨が自分のところに来なかったって、君たちにめちゃくちゃ八つ当たりされたね。けど、それを君たちが望んでた愛梨に看病して貰っちゃったよ。
そして、やられっぱなしも嫌だから武術も習った。
カッコよく居たい気持ちが出てきてね。
勉強も頑張った。
かなり完璧になってきたと思う。
愛梨との仲も良好だ。
ただ一つ胸につっかえることがあるとするのならば……。
「ごめん。愛梨には黙ってたけど……。実はあの手紙、俺が書いたんじゃなくてもともと俺をいじめてた奴が書いたんだよ……」
「えっ? そうだったの? ……とでもいうと思った?」
「へ?」
「実はね……あの人が私の机に手紙入れてるの見てたの……」
「えぇーっと?」
「よ、要するに、私が、アイツを利用して、練くんとつきあったのっ!」
「ま、じ、で?」
目の前で テヘペロッ♪ としてる俺の彼女はやはり可愛い。
それはもう本当に。
茶色のロングな髪の毛に、女子の理想的なスタイル。
可愛らしい性格だけど、憎らしくない。
さらに料理も上手で家庭的。
……俺ももっと頑張らなきゃな。
高校二年生の春。
アイツらのお陰で俺に恋人ができた。
ありがとう。そしてクソくらえっ!
半年たった今でも幸せだよ!
俺は虐められている ネコlove @sakikou
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