第48話 - 作戦の会議 -
「お前と組む」
「朝姫」
――安定思考の俺が、最も未知な相手を選んだ。
「ククク。そうだ、それでこそお前だ。歓迎しよう。だが、なぜ私を選んだ?」
「賭けだ。お前みたいな奴は、絶対メインヒロイン枠じゃない。俺は自分の意志を貫く」
――嘘だ。意志は変えた。しかしあくまで一時的だ。目的に近づくのであれば。
「ふむ。そう、予定通りいくかのう?」
ここではフローラが現れるかもしれないので移動をした。
――そうだ。エセ占いとか揶揄したこともあったが、なんだかんだで全て結果的にコイツの言う通りになっている。そしておそらく見えている。今日、俺が朝姫を選択するところまで。
・・・
「救出作戦はおそらく4つ巴だ。戦力を分析しよう。俺らの他に…」
アスティ派(仮)……フローラ、アレク将軍、宰相?
ベーリット派……ベーリット、カーリ、ユミ、オッド?
ドウター派……大輔、マリーヌ、アンナ、エスティナ
・・・
どこも強烈だ。ややアスティ派が劣勢には見えるが、国の騎士団は基本ここに所属する。実際は数も多く、最も強力だろう。普段遠征を共にする大魔導士ルーファウス等も、基本アレク将軍寄りだ。この作戦に参加するかは不明だ。
「……俺らの仲間は?」
「? 私とお前だけだが?」
――ありえないだろ。
「舐めてるのか? 今回は救出だぞ。ていうかはっきり言って、シャーロテはこっちなんかに来たくないだろうから、ぶっちゃけ拉致だ。お前の得意な暗殺じゃないんだぞ」
「殺すか拾ってくるかの違いしかない。闇に紛れればよかろう」
――こいつほんとに巫女か? 頭痛がしてきた。
「と、言いたいところだが」
昼に西区庁舎から、シャーロテを城へ移送する、との話を聞いているらしい。昼間にやり合うことになるだろう。以前札を渡しており、そうシャーロテ本人に通信で聞いているそうだ。
「ん? じゃあ俺たちに拉致られたいってことか?」
「そうではない。さまざまな思惑があり、お互いを最大限利用し合おう、最後はどこが出し抜くか、ということじゃ」
4者勢ぞろいの乱戦は避けたい。が、それはどこも同じだろう。片方を攻めている間に脇腹を突かれたくはない。朝姫は自身の目的達成には、アスティ派とカチ合いたいと続ける。
「俺は大輔を討伐したいんだがな。先に殺らないか?」
「正直、私はそこの勢力には最も関心がない。というか、返り討ちに合うだけではないのか? 魔人を倒したそうじゃないか」
――ごもっともだ。朝姫も式典に来賓してたな。重そうな服で。目的のためには、まずはコイツのやりたいことをやらせるしかない。唯一のマユの手がかりのために。
「失礼します」
そこへ、堂々とこちらへ向かってくる、敵勢力の女がいた。エスティナだ。交渉の意図だろう。話は簡単だった。シャーロテ移送までの行動は一致するはず、ガードらは手勢が不足、協力体制を組まないか、という提案だった。
「私は良いのだがな。こやつがドウターの大輔討伐に拘っている」
「好きなタイミングで、裏切っていただいて構いません」
意外な提案だった。しかし一考すれば単純だ。出方の一番読めない、ガード側の動向を掴んでおきたいということだ。
そういうことならデメリットがない申し出だ。逆に先に裏切られるということもあるわけだが、ドウター派はシャーロテ救出に最も注力している。事が達成される前までは可能性は低い。
「アスティ派は城内で待ちの姿勢のはずだ」
これだけ移送の話が筒抜けなら、時間をずらしてくるだろう。こちらとドウター派で、事前から張り込み、移送中を狙う作戦とした。
「こうなれば初戦はおそらく対ベーリット派だ。ユミが討てるといいな」
「ええ、そうですね」
目に力がこもっていた。しかしやり遂げた後の具体的なエスティナのプランは不明だ。単に仇討のみとしているなら危うい。明日は国民の祝日。通常勤務の人間が少ない日。移送の日、自体が変わることはないはず。
・・・
「よし、じゃあ夜中に誰か暗殺しようぜ。戦力が削れる」
「お前もなかなかじゃの。ま、ドウター派はそれが嫌での協力申し出であろうな。それもいいが、明日の仕事がなくなるわけじゃない。睡眠をとる方がいい」
「これより私は魔力を溜めに入る。明日、ここで落ち合おう」
朝姫と別れ、南区の斡旋状況を確認しにいくことにする。札を数枚渡された。自宅に貼れということだ。襲撃を警戒しているのだろうか。
・・・
南区の斡旋所へ立ち寄る。エロ本は……、まだ、未達成。移送や護衛関連の斡旋を受注済みまで片っ端から見ていく。
「やけに砦側のドンパチの依頼が多いな。魔人は退けたんじゃないのか?」
それらしい依頼を2件ほど見つけた。受注済みだ。おそらくオッドが取ったのだろう。
自宅へ戻る。言われた通り、札をぺたぺた貼っていった。これで安眠だ。普段のエルの魔力も大分遮断された気がした。
ニュースではシュルーサー邸で葬儀が行われ、マリーヌがシュルーサー家当主を継いだようだ。ドウターの大輔は元より養子、女系当主も最近では多い。
ハンス卿は自身の入閣のために、ドウター関連の法案に多く関与し、大輔を婿養子にしたりと、強引なやり口が目立ち、陣営以外の他貴族からの支持が得られていなかった。大物が殺されたのに周囲の反応は意外と冷ややかだ。
シャーロテの扱いが慎重なのも、この前例があるからだろう。似たような轍は踏みたくない、ということだ。
「明日で、何かが変わる。異常なしか、ありか」
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