第457話 ミオ、珍しく普通に怒る

 フィルメリアさんと契約を済ませた後、天使のみなさんは一度天界へと帰って行きました。


 その帰り際に、


「天使か悪魔と契約すると、その相手といる世界が違っていたとしても、いつでもどこでも会話ができますので、何か困ったことがあれば何でも訊いてくださいねぇ。あ、悪魔よりも天使の方が何かと知識は多いかもしれませんよぉ~」


 と言ってきた。


 なんと言うか、本当に仲が悪いんだね、天使と悪魔。


 まあ、反対に仲が良かったら今回のような事態にはならなかったと思うし、ある意味では正常な関係なのかもしれないけど……。


 でも、それは別として仲良くして欲しいなぁ、という気持ちがある。


 やっぱり、種族関係なく、仲良く暮らせたらそれに越したことはないからね。


 ちなみに、フィルメリアさんが教えてくれたんだけど、一応契約の証として右手か左手の甲に紋章のような物が浮かぶそうです。


 これは、天使と悪魔共通の認識らしく、紋章の形は違っても、基本的には紋章が現れることは同じみたいです。


 普段は見えないようになっている上に、紋章を浮かび上がらせても、法の世界の人たちにはまず見えないそうです。


 その辺り少し疑問に思ったんだけど、どうやらこの二つは、天使の人たちが有する天力と悪魔の人たちが有する悪魔専用の魔力で浮かび上がる物らしく、魔法を見たことがない人や、天使、悪魔、もしくは魔力を持つ生物――魔物や、魔法その物を認識したことがない人には見えないらしいです。


 ちなみに、未果、晶、女委、態徒、美羽さん、、エナちゃんの六人は見えるとのこと。


 ステータスが見えるようになったり、そもそもボクの魔法を見ていたりするから当然と言えば当然なのかも。


 あと、右手に甲に天使の契約の紋章が出て来て、左手の甲に悪魔との契約の紋章が出てきました。


 なんだろう、中二病にしか思えない……。


 しかもこれ、中二病の人がするようなペンとかで書いたものじゃなくて、本物の紋章なんだよね……。


 よかった。あっちの世界の人には基本見えなくて……。


 ただでさえ、変に目立っているのに、紋章が見えでもしたら、ボクはさらに目立つことになっちゃうもん。


 中二病、という不名誉な単語が追加されたら、それこそ学園に行きたくなくなる。


 あ、ちなみに天使の紋章の方は、なんか、盾のような形をした五角形の中に、翼が二枚にその手前にクロスするように剣が描かれているもので、悪魔の方は盾のような形は一緒だけど、その中に描かれているのは二枚の蝙蝠の翼と二本の斧だった。


 なんで斧なんだろう?


 その辺りはよくわからないけど、色合い的にはそれっぽかったり。


 天使の紋章は金色で、悪魔の方は紫と、なんだかわかりやすい。


 うーん、まあ、意識しなければ見えないし、別にいっか。


 そんなこんなで、悪魔騒動だけでなく、全天使がこっちに来て色々とありはしたものの、ようやく騒動が収まった。


 そうして、この場に残ったのは師匠を除いたみんなです。


 今更だけど、師匠(分身体)がいない。


 未果たち曰く、天使のみなさんが来る数瞬前にいなくなったとか。


 それだけ天使に会いたくないんだろうけど……それ、結局ボクに押し付けているだけなような……。


 ……まあ、師匠は師匠で過去に色々あったみたいだからね。仕方ないということにしておこう。


「ようやく行ったか……。ったく、もっと早く降りて来いっての」

「うわっ、師匠!?」

「あたし何を驚いてんだよ」

「いやだって、何の気配もなく突然現れたら驚きますよ」


 気が付けば、師匠がボクの背後に立っていた。


 びっくりした……。


「未果さん、用事は終わったのかしら?」

「終わったとも言えるし、終わってないとも言える。まあ、各地で悪魔が出現したら、そりゃ切り上げてボコすに決まってるだろ? 被害出るのはマジで勘弁。あいつら戦闘狂みたいなもんだし。まあ、勝てないとわかったら即座に逃げる軟弱者どもでもあるがな」


 そもそも、師匠に勝てる人はいないし、仮に挑んでも最悪一秒で倒されてそうだから、あまり賛同できない……。


 熊に会ったら慌てず逃げろ、みたいなことが言われていたりするけど、師匠に会ったら慌ててでも逃げろ、と言うのがボクの中での持論。


 師匠は……理不尽だから。


「まったく、あたしらが悪魔を倒し終えた後に来るとは。重役出勤もびっくりな遅さだ」

「無理もないですよ。だって師匠、強すぎますし。あと、フィルメリアさんに訊いたんですけど、二万七千徹だったらしいですよ?」

「…………すまん。それは大人げないことを言った。さすがにそれは可哀そうだろ……。しかも、フィルメリアって言えば、天使長じゃねーか。なんだ、あいつも来たのか?」

「来た、というより、天使総出で来てましたけど……」

「……どんなハルマゲドンだよ」

「天使と悪魔の総力戦みたいなことになりかけていたみたいですからね……」


 そう考えると、止めに行って正解だったと思うし、異世界に来てよかったかも……。


 とはいえ、みんなに危険が及んだのも事実。


 そう言う面では、よかったとも言えるし行かなければよかったとも言える。


 でも、最終的には結果オーライだったので、よかったということにしておこう。


 みんなに怪我がなくてよかったしね。


「まったく、面倒なことしかしないな、あいつらは。……それで? 何があったのか、あたしに説明してもらおうか。生憎と、事後処理に奔走していたんで、こっちの様子は見ていなかったからな」

「あ、そうなんですね。じゃあ……とりあえず、一度魔王城に戻りましょうか。これから、復興が始まりそうだしね」


 ボクがそう提案すると、全員こくりと頷いてくれた。


 まあ、あんなことがあったわけだからね……仕方ないね。



 というわけで、魔王城に戻る。


 ジルミスさんがすごく心配そうにしていたけど、ボクたちが顔を出すと目に見えて安堵していた。


 どうやら、街で襲撃があったと知り、ボクたちが無事かどうか気が気でなかったそう。


 なんだか、心配をかけてしまったようで申し訳ない。


「とりあえず、悪魔の人たちは二度と襲わないと約束してくれたので、安心してください。あと、復興のお手伝いの方もして貰えるそうなので、もし出会ったら極力恨んだり非難したりしないであげてください。一応、ボクが言い聞かせておきましたから」

「そうですか。それはよかったです。しかし、一体どのように……?」

「あー、えーっと……ちょっと、魔界に行ってまして……。そこで、悪魔の一番偉い人と話してきて、契約してきました。そこで色々とルールを設けましたので、大丈夫ですよ」

「なんと、そのようなことを……。しかし、一体なぜイオ様自ら危険を冒してまで……」

「お飾りな女王ですけど、これでもこの国のことは気に入ってます。それに、魔族の人たちがみんないい人だということは知っていますからね。やっぱり、壊されるのを見ると怒っちゃうと言いますか、せっかく戦争が終わってかなり復興して来たのに、そこを襲うのはボクとしても看過できません。なので、お説教しに言ってました」

「我々はのことをそこまで……。イオ様には頭が下がる思いです。今後とも、お仕えさせていただきます」

「あ、あははは……」


 なんだろう。ボクって人間じゃない人に好かれたりするのかな……?


 ……そう言えば、今年のおみくじの結果の一つに、抱人『増える』、っていう結果があったような……。まさかとは思うけど、この状況を指してたりする……?


 ……たしかに、かなり増えたけど。魔族一億人以上に、悪魔全員と天使全員だから……うん。相当いるね。言い方は悪いけど、配下みたいな感じになっちゃってるんだけど……。ボク、普通の男子高校生だったんだけどなぁ……。なんでこうなったんだろう。


「皆様が戻ってこられたということは、もう騒動は収まったと受け取ってよろしいのでしょうか?」

「はい。もう大丈夫ですよ。悪魔の人たちに関してはさっき言った通りですので」

「わかりました。では、早急に復興の手配をしないといけませんね。……では、私はこの辺りで。……その前に、昼食はいかがしましょうか?」

「それじゃあ、十二時くらいにお願いできますか?」

「かしこまりました。では、そちらも手配しておきましょう。皆様、少し汚れていらっしゃるようなので、お風呂へ入ってきてはどうでしょうか? もうすでに、準備は整っておりますので」

「本当ですか? それは助かります」

「いえいえ。それでは、ごゆっくり」


 軽く一礼して、ジルミスさんは去って行った。


 なんだか大変そう……。


 この国って、ジルミスさんがいなくなったら割と大ごとになりそうな気がする。


 大丈夫かな。過労で倒れたりとか……。


 いつか色々と労ってあげたい。


「それじゃあ、お風呂に行こっか」


 ともあれ、お風呂に入ろう。


 さすがに、汗もかいたしね。



 そうして、お風呂に入ると昨日と同じように師匠と二人きりで話すことに。


 話の内容的に、未果たちに聞かせるのは少し厳しいと師匠が判断したので。


「そんじゃま、話を聞こうか。……だが、その前に訊きたいことがある」

「なんですか?」

「……お前、さっき悪魔と契約した、とか言ったよな?」

「はい、言いましたね」

「……お前、それがどういう意味かわかってるか?」

「え? えっと……かなりすごい?」

「いやまあ、たしかにそうだが。……いや、そうじゃない。ったく、お前は本当に知らない間にやらかしてるな……。まあいい。とりあえず、どんな悪魔と契約したか言ってみろ」


 ボクの発言に(?)呆れながらも、師匠がどんな悪魔と契約したのかを尋ねてくる。


 なので、正直に言うことに。


「悪魔王こと、セルマさんです」

「……は?」


 すると、師匠は呆けたような声を出して固まってしまった。


「……お前、本気か?」

「はい、本気です」

「……その契約は、対価とかってあるのか?」

「セルマさん曰くないそうですよ? なんでも、向こうが使い魔のような状態なんだとか」

「……マジかー……。お前、悪魔の王にすら好かれちまったのか……」


 あ、あれ。なんか師匠が額に手を当てて、天を仰いでるんだけど。


 もしかして、相当おかしなことした? ボク。


 ……した、よね。普通に考えて。


 悪魔のトップと契約しちゃったわけだし……。


「とりあえず、紋章を見せてみろ。あるんだろ? 契約の証」

「あ、はい。えっと、これです」


 そう言って、ボクは右手を差し出して、紋章を見せる。


「……ん? お前これ、天使の紋章じゃねーか! 悪魔じゃないのか!?」


 あ、間違えた。


「すみません、こっちの手でした」


 軽く謝って、左手を差し出し紋章を見せる。


「……うわ、マジだ。本当に悪魔王と契約してやがる。しかも、従魔契約の方。はー、マジか……」


 ボクの左手を取って、師匠がまじまじと紋章を見つめると呆れ混じりの声音でそう言った。


 と、師匠はここで『ん?』と漏らしながら、眉を顰める。


「……おい、ちょっと待て」

「はい」

「……お前、どうして天使の方とも契約してるんだ?」

「あ、こっちですか? はい、色々あって契約しました」

「……契約しました、じゃねぇだろ!? お前これ、あたしの記憶が正しければ天使長のものだよな!? お前、あれとも契約したのか!?」


 ボクが契約したことを言うと、師匠はものすごい形相でそう叫ぶ。


 も、もしかして、まずかったのかな……?


「は、はい。その、フィルメリアさんがボクと契約したいと言い出しまして……」

「……それで?」

「ボクが天使のみなさんの労働状況があまりにもその、可哀そうだったので、ストライキを促して……」

「……その時点で、すでにぶっ飛んでいるが……続けろ」

「フィルメリアさんがボクと契約すれば他の天使のみなさんも地上に降りてこれるらしくて、少しでも休めるようにと、契約しました」

「…………はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


 わー、大きなため息。


 これ、もしかしなくても、相当呆れてるっていうことだよね……?


「あ、あと」

「……今度はなんだ」

「えっと、何て言いますか……ちょっと、言葉が悪いかもしれませんけど、悪魔と天使、両方の種族とも、ボクの下に付きました」

「ちょっと待てそれどういうことだ!?」

「いや、あの、えと……あ、悪魔の人たちは上下関係にすごくうるさいらしくて、セルマさんと契約したら、なし崩し的にボクの下? 配下? になりまして……。天使のみなさんは、神様たちよりも、ボクに仕えたいと言い出しちゃって……。それで、その……その場の勢いで了承しちゃいました……」

「……お・ま・え・は! 戦争でもするつもりか!?」


 師匠が、本気で怒り始めた。


「そ、そんなことないですよ!?」

「うるせぇ! 信用できるか! なんだお前!? 今年の三月から着々と配下を増やしてんじゃねーよ!? 魔族に、天使に、悪魔て……お前はあれか!? 人外に好かれる体質でもしてんのか!?」


 ど、どうしよう。師匠が本気で怒ってると言うか……ツッコミになってる。


 こう言う師匠は見たことがないけど……すごく、新鮮。


「しかもお前、あたしが住む森の魔物、全部手懐けてたよな?」

「…………き、気のせいじゃないですか?」

「あたし、知ってるからな? お前が倒したふりして、実は助けていたことを」

「…………し、知りませんよぉ?」

「……そうかそうか。お前は白を切るつもりなんだな? ならば、あたしにも考えがある」

「……な、なんですか?」

「あそこにいる魔物、全部あたしが殺す☆」


 全力スマイルでそう宣言して来た。


「やめてくださいっ! あの子たちには……あの子たちには罪はないんです! ただ、森で暮らしてるだけなんです! 変な人が入ってこないよう、見張ってもらっているだけなんです!」


 本当は優しい子たちだから!


 ただ魔物というだけで、実際ちゃんとわかってくれる子たちだからぁ!


「ほれみろ。やっぱり、手懐けてるじゃないか。……ったく、お前のその性格はある意味脅威だぞ」

「そ、そんなこと言われましても……」


 ボク、そこまで異常な性格してる……?


 ただただ、殺しをしたくないだけなんだけど……。


「……ハァ。この際だから言おう。お前の優しさは正直度を超えている。いいか。普通の奴はな、魔物を手懐けたり、悪魔王と契約したり、天使長と契約したり、魔族の国の女王になったりはしない!」

「うぅ……」

「まあ、お前のその優しさは、美徳の一つだ。だがな、それが行き過ぎると、割ととんでもない事態になるんだ。わかるか?」

「……わ、わかりません」

「なんでわからないんだよ……。そもそも、だ。普通の人間は、魔族やら天使やら悪魔やらを配下にすることはないし、大体は怖がるか、畏怖するかのどちらかだ。なのにお前と来たら……。仲良くなるどころか、普通に従わせてるし。どうなってんだ、お前のその体質は」

「そ、そう言われましても……」


 ボクだって好きでそうなったわけじゃないし……。


 そもそもの話、ボクってそんなにおかしい体質してるの? 定期的に姿が変わるくらいじゃない?


 それ以外だと、割と普通な方だと思うんだけど……。


「……まあ、契約しちまったのは仕方ない。そのおかげで、人間界の方に起きる事件が減るわけだからな。そう言う意味では、よかったのかもしれない」

「じゃ、じゃあ」

「だが、それとこれとは別だ。ったく……。お前がそう言う性格でよかったぞ。ほんと。いいか? 魔族ってのはお前も知っての通り、基本的に身体能力が高い。サキュバスのような、身体能力が低いような種族もいるにはいるが、それでも一芸に秀でた特殊能力がある。この時点で強い。それはわかるな?」

「は、はい……」

「で、悪魔と天使な。悪魔は言わずもがな。お前は対峙したから知ってるだろうが、聖属性と神気以外に弱点がないし、魔法はそこそこ強力だし、靄を利用して攻撃もしてくる。この時点で普通に強い。わかるか?」

「はい……」

「そして天使。あいつらは、神の下位互換みたいな奴らだが、普通に強い。どれくらい強いかと言えば、天使一人一人が先代の魔王レベルだと思え」

「……え!?」


 そうなの!?


 天使の人たちって、そんなに強いの!?


 ……あ、でも、ン億年も働いているって考えたらそれくらいでもおかしくないかも……。


「そんなとんでもない奴らを、お前は従えたんだぞ? 正気の沙汰じゃない。というか、あたしのようにそう言った知識がお前を知れば、相当怖がるぞ。何せ、その従えた奴ら全員に、世界を滅ぼせ、なんて命令を下せば、間違いなく、一日どころか半日で軽く世界なんて滅ぼせるからな」

「…………ま、マジですか?」

「マジだ。大マジだ」


 ……どうしよう。途端に怖くなってきた。


 これって言ってしまえば、いつでも核ミサイルが発射できるスイッチを持っているようなもの、だよね?


 ……ど、どうしよう!?


「その表情。ようやく理解したか」

「……し、師匠、ぼ、ボク、どうすれば……」

「安心しな。お前がお前である限り、そんなことは起こらん。ってか、お前は世界を滅ぼしたいのか?」

「そ、そんなことするわけないじゃないですか! 大事なみんながいるのに、できるわけないです」

「ま、だろうな。お前はそう言う奴だ。それに、あたしがいるんだ。そんな馬鹿な真似はさせないさ」

「……そう、ですね。考えてみれば、師匠がいるんですもんね」


 そもそも、師匠に勝てる人なんているの? みたいな状況なのに、世界を滅ぼせる力を得たとしても、絶対に勝てない気がする。


 仮に、さっき師匠が言ったように、魔族の人たちや、天使のみなさん、悪魔の人たちに命令をしたところで、師匠なら絶対に一人で止めらそうだよね。


 強すぎるんだもん。


「……なんで、お前はちゃんと制御しろよ? 特に悪魔の方。魔族と天使の方は問題なさそうだがな。お前の事好きすぎるし」

「あ、あははは……」


 実際、神を見るような目を向けてくる人もいるしね……。


 そこまですごい人間じゃないと思うんだけど。


「まあ、後はあれか。お前、天使長と悪魔王呼べるか?」

「はい、多分呼べると思いますけど……」

「ならよし。呼べ」

「え、よ、呼ぶんですか……?」

「当たり前だろう。確認は大事だ。生憎と、あたしは天使と悪魔の契約というシステムそのものは知っているが、恩恵については知らん。それを知るためにも、二人を呼べ」

「……ちょっと気が重いですけど……わかりました」

「よし。さっさとしろ」

「はい」


 えーっと、召喚するには……あ、普通に『召喚』って言えばいいんだね、これ。うわー、簡潔。


 ま、まあ、とりあえず師匠命令だし……よし。


「え、えーっと、しょ、《召喚》!」


 恥ずかしさをなんとか胸の中に抑えつつ、そう唱えると、ボクの両サイドからそれぞれ金色の光と、紫色の光が放たれた。


 わっ、眩しっ!


 あまりの眩しさに、思わず目を手で覆う。


 次第にその光は収まり、光が発されていた場所には……


「ん? ここは……おぉ、主がいるのだ。なんだ、もう呼んでくれたのか?」

「あらあらぁ。お風呂に呼び出されてしまいましたぁ」


 女子高生くらいの女の子――セルマさんと、大人のお姉さん――フィルメリアさんが浮かんでいた。


 それぞれ、羽を生やしているので、多分それで、かな?


「……なんだ? よく見れば、神の犬がいるのだ」

「……あらぁ? どこかの、若作りおばさんがいるじゃないですかぁ」

「なんだと!?」

「なんですかぁ!?」

「……あー、やっぱりぃ……」


 呼び出された二人は、すぐにお互いの存在に気づくなり、喧嘩を始めてしまった。


 ……だから二人とも呼び出したくなかったのに……。


 はぁ。どうするんだろう、これ。

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