第419話 異世界旅行へGO!
翌日。
今日はみんなで異世界旅行に行く日。
昨日の夜に師匠から悪魔について色々と聞かされ、今回はある程度の警戒をしないといけないかもしれない。
一応、師匠がいるし、最悪の事態は避けられる……と思うけど、絶対と言うわけじゃないので、警戒をしておくに越したことはない。
それに、みんなに何かあったら、ボクは何をするかわからないしね。
「よ、イオ」
「おはようございます、師匠。今日は早いですね。しかも、ボクよりも早いだなんて」
「ま、あたしも久々に向こうの世界に帰れるとあって、少しは楽しみにしてたんだよ。本来、あたしはあっちの世界の住人だからな。言っちまえば、こっちでのあたしの立場は、よそ者のようなものさ」
「それを言ったらメルたちもそうなっちゃうんですが」
「あながち間違いじゃないだろ?」
「でも、ボクはみんなのことを家族だと思ってます。もちろん、師匠のことだって」
「お、おう、そうか」
あれ? なんだか師匠が顔を赤くしてそっぽを向いたんだけど……照れてるのかな?
でも、ボクの本心だしね。
師匠とは、師弟というより、こう……年の離れたお姉さんっていうイメージがあるんだよね、ボク中では。
普段から助けてもらったりしているからかな?
「それで? どこで転移するんだ? さすがに、家の中と言うわけにもいかないだろ」
「あ、はい。それで師匠にお願いがあるんですけど……」
「なんだ、言ってみろ。あたしができる事ならしてやろう」
「ありがとうございます。えっと、師匠って結界系の能力かスキルを持ってますよね?」
「ああ、持っているな」
「その中に、外部から姿を見えなくする、みたいなものってありませんか?」
「あるぞ? 当たり前だろう」
当たり前と言われても、結界系の物って、習得している人が少なかった気がするので、当たり前なのかどうかわからないんですが……。
まあ、あるのならいいよね。
「あまり遠くに行くのもあれですし、学園長先生の研究所から行ってもいいんですけどそれだと、行き帰りが何かと大変だと思うので、師匠にこの家の敷地を全部結界で覆ってもらって、庭から飛ぼうかなって」
「なるほど。まあ、悪くないと思うし、いいんじゃないか? あたしとしても、あまり遠くに行くのは嫌だな。めんどくさい」
うん、師匠らしい。
「それじゃあ、お願いしてもいいですか?」
「ああ、任せな。んで? 行く面子には言ってあるのか?」
「はい。とりあえず、荷物を持ってボクの家に集合、ということにしています。みんなは駅で合流してからこっちに来るそうですよ。美羽さんだけは、ボクの今の家を知りませんし」
「ん、了解だ。で、メルたちは?」
「メルたちの準備も終わってますし、とりあえず、行く三十分前くらいまでは寝かせておいてあげようかなって」
「まあ、楽しみで夜はなかなか寝付けなかったみたいだしな。いいんじゃないか?」
「はい」
案の定と言うか、みんなは今日の旅行が楽しみ過ぎて、昨日は寝るのが少し遅かった。
あまりにも眠れないとボクに言って来るものだから、ホットミルクを作ってあげて、あとは眠れるように、各々ボクにくっつていいよ、って言ったら、本当にくっついてきた。おかげで、ボクは天国だったけど、一周回ってちょっと寝づらかったです。
でも、メルたちが可愛かったので、全然許せます。
「さて、ボクは朝ご飯の用意でもしますね」
「ああ。あ、甘い卵焼きで頼む」
「わかってますよ。あと、サラダとコーヒーも付けますね。それと、パンとご飯、どっちがいいですか?」
「あー、そうだな……どうせ、向こうじゃ米なんてそうそう食えないし、白米で頼む。こっちの世界の、この国の米は美味い」
「了解しました。すぐに用意しますね」
ボクは愛用しているエプロンを身に付けると、朝ご飯を作り始めた。
それから二人で軽く朝ご飯を食べて、父さんと母さんを見送った後、家事を済ませる。
一応、二人には異世界へ旅行に行って来ることは伝えてあって、帰ってくるのは明日か明後日と言ってあります。
なんで明日か明後日と言うと、こっちの世界で一日延ばしても、さほど問題がないからです。
みんな、そう言う風にスケジュールを空けたらしいので。
特に、美羽さんとエナちゃんの二人に至っては、長い休み且つ長い連休になるということで大喜び。
二人ともかなり売れてるみたいだからね。
ボクたちは夏休みでも、二人は全然仕事がある。
エナちゃんはライブだとか、テレビの出演などで、美羽さんはアニメの収録や、ラジオ番組への出演、それから今度やるアニメのバラエティー番組にも出るとか。
他にも色々と仕事をしているらしく、かなり大忙しみたい。
そんな二人だから、異世界旅行はとっても楽しみにしているそうです。
正直なところ、ボクも楽しみと言えば楽しみ。
だって、今まで一人で行ってたからね。今回は一人じゃなくて、みんなと一緒に行けるとあって、ちょっと張り切りそう。
家事をしていたらメルたちも起きて来て、一気に賑やかに。
寝かせてようと思っていたら、全然早く起きて来た。
やっぱり、異世界旅行が楽しみだからみたいです。
おかげで、みんなすごくテンションが高い。
今なんて、キャッキャッと楽しそうに話してるしね。
みんなと一緒に最後の確認をしていると、インターフォンが鳴った。
「あ、来たかな?」
ちょうど確認が終わったタイミングだったのでちょうどいいかな。
ボクは玄関に移動し、ドアを開けると、
「「「「「「おはよう、依桜(君)(ちゃん)!」」」」」」
そこにはみんながいて、いい笑顔で一斉に挨拶をしてきた。
「おはよう、みんな」
それに対して、ボクも笑顔で挨拶を返す。
挨拶は基本。
と言うかみんな、すごくわくわくした表情をしてるね。
普段はあまりこう言うことに対して一緒にならないことが多い晶でさえ、とってもわくわくしている様子。
うん、それほど異世界の存在って大きいんだね、みんなにとって。
「えーっと、みんなの準備は大丈夫……だよね」
大丈夫? と聞こうとしたけど、みんなにこにことした笑み浮かべていて、準備万端と言った様子。
まあ、みんな結構な荷物を持ってるしね。
大体はキャリーバッグかボストンバッグみたいだけど。
「えーっと、さすがに重いよね? みんながよかったら『アイテムボックス』に入れるけど」
ボクがそう言うと、みんなは、
「「「「「「お願いします」」」」」」
と言ってきた。
まあ、観光をするんだったら、身軽に行きたいよね。
それに、『アイテムボックス』に入れておけばいつでも出し入れは可能だし、盗まれる危険性もないしね。ボクが盗もうとしない限りは。
もちろん、絶対にしないよ?
「それじゃあ、今からメルたちも呼んでくるから、ちょっと待ってて。すぐに来るから」
「「「「「「はーい!」」」」」」
みんな、どれだけ楽しみなんだろう。
というわけで、師匠やメルたち異世界人組の準備も完璧になり、外に出る。
そして、師匠にお願いしていた通り、外から見えなくなるというある意味ご都合的な結界を張ってもらい、異転二式を起動。
〈いやー、こっちに入るのは久々ですねぇ〉
「アイちゃん、準備はできてる?」
〈もーまんたい! いつでも出発可能ですぜ! あとはイオ様が、このボタンをポチっとするだけで、起動します!〉
「うん。ありがとう」
〈ちなみに、転移する際はイオ様に直接触れるか、イオ様に直接触れている人に触れば一緒に転移できるんで、安心してくだせぇ〉
「だ、そうなので、えっと、触ってください」
(((((言い方が悪い……)))))
未果たち四人と師匠の五人が、何やら苦い顔をした。
なんで?
ちょっと気にはなるものの、ボクの言ったことをすぐさま実行する人たちが。
「儂はねーさまの右足じゃ!」
「じゃあ、私はイオお姉ちゃんの左足です!」
「わ、わたし、は、み、右腕……!」
「ぼくは左腕にするっ!」
「では、私は右側の腰元にするのです」
「……左の腰元」
まあ、メルたちだね。
うんうん、みんな嬉しそうにしがみついてくる。
可愛すぎて、もうすでに楽しい。
「さ、他のみんなもどうぞ。見ての通りなので、その……肩とかに触れてください。ボクに触れられそうになかったら、他の人に触ってくださいね」
と言うと、各々好きにボクに触りだす。
未果と女委の二人はボク肩に。師匠はボクの頭になぜか手を置き、美羽さんとエナちゃんの二人は左右どちらかの二の腕辺りになぜか腕を絡め、晶と態徒はそれぞれ未果か女委に触る。
「みんな、しっかり触ってるね? ……うん、それじゃあ、しゅっぱーつ!」
「「「「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」」」」」
掛け声と共に、ボクは異転二式の起動ボタンをタップ。
そして、異転二式が起動し、端末から光が放たれると、ボクたちの体を飲み込み、視界が暗転した。
目を覚ますと……そこは、西洋風の作りになっている、広い部屋だった。
正直、見覚えがすごーくある。
というかここ、ボクが最初に一年に過ごしていた時の部屋だね。
あの時のままだけど、無駄に綺麗。多分、掃除とかもしていたんだろうね。
……ボクがこっちに立ち寄る度に、泊って行かないか? みたいに言われていたし。
「みんな、着いたよ」
部屋の内装を考えるのは後にして、一旦はみんなに着いたことを告げる。
「ここが……異世界?」
「何と言うか、小説とかでよく見かけるような作りなんだな」
「ほへぇ、これはすごいね! やっべ! 写メっとかないと!」
「うおぉぉ、マジですげぇ! これ、城なんじゃね!?」
「豪華な部屋……お城なのかな?」
「すっごい綺麗! あと、ベッドも大きいし!」
異世界出身じゃなくて、地球出身のみんなはこの部屋を見てそれぞれの感想を漏らす。
未果はちょっと信じられない見たいな反応で、晶は興味深そうに、女委はいつものテンションで室内の写真をスマホで撮り、態徒はお城と考えてテンションをかなり上げ、美羽さんは落ち着いた様子で室内を見回し、エナちゃんは内装を見てキャッキャッとしている。
まあ、普段見ることはないような場所だしね、ここ。
反対に異世界組は、
「ふむ、ここはあのクソ野郎の城か」
「おー! 外に沢山の人がいるのじゃ!」
「高そうなお部屋です……」
「ベッド、ふかふか……!」
「飛んだり跳ねたりができる!」
「ミリア、少しは落ち着くのです。でも……うぅ、私もしてみたいのです……」
「……ぴかぴか」
師匠がここがどこかを見抜いてやや不機嫌そうな表情になり、メルは窓の外を見て興奮、ニアは部屋が高そうなものでいっぱいなことにちょっと感嘆の言葉を漏らし、リルはベッドを触ってそのふかふかさに興味持ち、ミリアは実際にベッドの上で飛び跳ね、クーナはミリアを諫めつつも自身もしてみたいとちらちらミリアを見て、スイはこの部屋のことを簡単な言葉でいい現していた。
師匠以外、子供らしい反応でほのぼの。
可愛い反応です。
と、みんなでわいわいとしていると、不意に扉の向こう側から気配を感じた。
この気配は……
『この部屋にいるのは誰だ! ……って、多っ!?』
『あ、ヴェルガさん。お久しぶりです』
扉を勢いよく開け、向こう側から現れたのは、ボクがこの国で一番お世話になったと思う、騎士団長のヴェルガさんだった。
『な、い、イオ殿!? なぜここに……? あと、ミオ殿もいる? と言うか、その後ろにいる者たちは一体……』
『えーっと、とりあえず、今って王様はいますか? 後ろの人たちのことは、そこで説明しますので』
『あ、あぁ、わかった。国王様は今は政務がある程度片付き休憩しているところだ。それと、姫様の方もちょうどいらっしゃる。すぐに謁見の間……よりも、これは食堂の方がよさそうだな。では、俺はすぐに知らせて来るので、イオ殿たちは食堂に行ってもらえる助かる』
『わかりました。ありがとうございます、突然のことなのに……』
『いや、気にしないで欲しい。イオ殿は英雄であり勇者殿だからな。どんな政務よりも、国王様にとっては、イオ殿の方が大事だろう』
『あ、あはは……』
『では、俺はこれで失礼する。またあとで会おう』
『はい』
最後に軽く一礼して、ヴェルガさんは部屋を後にした。
後ろを振り向くと、地球組のみんながポカーンとしていた。
「どうしたの? みんな」
「どうしたのって……急に依桜がわけのわからない言語で会話しているものだから、びっくりしちゃったのよ」
「俺もだ。異世界って言うのは、本当なんだな。英語やドイツ語などとは、明らかに違っていたみたいだし……」
「やっべー、マジで意味がわからんかった……」
「ある意味、異世界の醍醐味だよね!」
「知らない言語を話せるなんて、やっぱり依桜ちゃんはすごいね」
「うんうん! 依桜ちゃん、英語とかも得意だもんね!」
「あ、あはは……」
そう言えば、みんなの言語の方、どうにかしないといけないの忘れてた。
食堂に行く前に、みんなには『言語理解』のスキルを習得してもらうことにしました。
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