第257話 やりすぎユキちゃん

 ギルドを設立した後は、特段やることがなかったので、そのままギルドホームで思い思いにくつろぐことに。


 そうすると、師匠は地下に行ってお酒を物色しに行きました。師匠らしい。


 ショウとレンの二人は訓練場で二人で模擬戦みたいなことをしてるみたい。

 経験値などは入らないけど、システムに左右されない技術などを磨くとのこと。


 ちなみに、死ぬことはないです。

 一応、設定を変えれば、実践試合もできるみたいだけどね。


 ミサは書斎に行って本を読んでる。


 このギルドホームにあった書斎には、なんとマンガやライトノベルがありました。


 書斎二ヶ所の内、片方はそう言った娯楽系の本が置いてあって、もう一方にはこの世界に関することが記された本が置いてありました。


 そして、ヤオイが調べたところ、インターネット上の小説も置いてあるらしく、自由に閲覧可能とのこと。


 さらに、お金は取っていないらしいです。


 理由は多分、一日ごとに変わるからかな。


 娯楽の方の書斎は、一日ごとに置いてある本が変わるそうで、その日読んだ本は次出てくるまで読めなくなるらしいです。


 そうなると、読んでる途中だったらどうするの? っていうことになっちゃう時があるわけで。


 その場合は、なんとゲーム内で購入可能。


 レンタル、購入の両方を選べるみたいで、レンタルは一週間700テリル。反対に、購入は一冊一万テリルもする。


 結構高いね。


 でもこれ、このゲーム内の通貨だから、現実には還元できないんだよね。


 一応、このゲームには課金要素もあるけど。


 この世界の通貨は、課金することで購入可能。


 1テリル1円で。


 パチンコみたい。


 ゆくゆくはゲーム内通過を現実のお金に変換することも考えてるって、ちょっと前に学園長先生が言っていた。


 本当、どんどんおかしな方向に進んでいくよね……。


 一応、現実のお金に変換するのは、プロゲーマーを増やしたいから、とのこと。

 そうやって大会を開けば、色々と収益も見込めるし、さらに大々的に宣伝もできる。さらには、さらなる量産も可能になると言うことで、一石三鳥らしいです。


 成功すれば、だけどね。


 現段階では、100テリルで1円にしようと思っているみたいです。

 つまり、1万円稼ぐのに、100万テリル必要になる。


 いつでも変換できるわけじゃなくて、月末にのみ、変換できるようにするそうです。


 ちなみに、メルの所持金が現在1000万なので、変換すれば、10万円になったり。


 ……高校生のバイト代より多いような。


 まあ、それはそれとして、そうなったら色々とこのゲームはもっと賑わいそう。


 でも、こう言う変換制度を設けると収益が見込めなくなりそうだけど、そうはならない、って学園長先生が言っていた。


 このゲームでテリルを入手するには、クエストをこなしたり、モンスターを倒したり、ダンジョンを攻略したり、って言う方法があるんだけど、意外とそこまで稼げない。


 クエストで手に入れられても、一回につき1000テリルほど。


 モンスターは、レアモンスターじゃない限り、10~200くらい。


 ダンジョンは、隠しダンジョンじゃない上に、四人パーティーだったら、一人頭1000~3000テリル。


 まあ、モンスターやダンジョンに関しては、現在のモンスターやダンジョンを基準にしているだけであって、今後レベルが上がったり難易度が上がったりすれば、得られるお金も多少変わるみたいだけどね。


 まあ、それはともかく。


 どうしても序盤は難しいので、早く強くなりたい人はお金を入れるわけで。


 それに、課金は1テリル1円だけど、変換は100テリルで1円だからね。


 課金した分をまず稼いで、その後さらに稼がないといけないので、意外と稼ぐの難しくなりそう。


 だから、そこまで不利益にはなりにくいとか。


 それ以外だと、レアアイテムを売ったり、生産職の人たちがお店で稼いだりして、それを現実に、ってことになるんだけど……こっちも、それなりに稼ぐのは難しいとか。


 そもそも生産職の人は、自分で材料を購入したり、狩りに行ったりしないといけないので、必要経費を差し引いた額しか手元に残らないそう。


 ボクのような人がおかしいだけって言われました。


 でも、かなり有名になったり、繁盛店になれば稼げるみたいだけどね。


 あとは、ゲーム内イベントで入賞したり優勝したりする方法で稼いだり、って言ってけど。


 ……まあ、この変換システムに関しては、色々と問題が山積みだから、まだまだ先って言ってたけど、できれば来年には実装したい、とか言ってたよ。


 と、そんな理由もあって、ゲーム内で本のレンタルや購入ができるみたい。


 しかもこれ、インターネットで小説を書いている人にもチャンスがあるので、結構好意的みたい。


 まあ、デビューのチャンスがでてきたわけだからね。


 それによって、インターネット小説が最近面白くなって来たよ! ってヤオイが興奮気味に言ってたなぁ。


 そうそう、そんなヤオイは、今調合部屋でひたすらアイテム作成に勤しんでいます。


 なんでも、


『やっほー! この調合部屋で、お金を稼いで、さっさとユキ君にお金を返すんだ!』


 だそうです。


 別に、急がなくてもいいんだけどね。


 ボク自身は称号によって、お金が増えるわけだから。


 ……あれ? そう言えば、国が所有するお金の内30%をボクが所有するわけだけど……それって、あの国で交易が盛んになれば、ボクの所にさらにお金が入ってくることになるんだけど……。


 一応、リーゲル王国と国交を開いたんだよね、あの国。


 特産品の果物とか装飾品を主力商品にするってジルミスさんが言ってたっけ?


 ボクは経済とかよくわからないけど、結構な利益が出そうって喜んでたなぁ。


 国の復興がもっと早くなるって。


 本当にいい人だよね、ジルミスさん。


 ……ちょっと、働きすぎて倒れないか心配だけど。


 あ、ちなみに今、ボクが何をしているかと言うと……


「ねーさますごいのじゃ!」

「そ、そうかな?」

「うむ! どんどん服が出来上がっていくのじゃ!」


 メル用の服を作っています。


 さすがに、ぼろシリーズの装備じゃ可哀そうだしね……。


 ボクとしても、できれば可愛い服を着たメルが見たいし。


 それと、師匠の洋服も作成する予定です。


 もちろん、作成に伴い、今は良妻シリーズの装備を身につけてます。


 これがあれば、スキル付きの装備を作ってあげられるからね。


 メルのステータスなら、ほとんど心配いらないんだけど、もしもがあったら嫌だもん。いくらゲームとはいえ、メルが倒されるのだけは、見たくもないし、させたくないからね。


 やっぱりここは、出し惜しみせず、自重なしで、メルの装備を作らないとね。


 メル用なので、結構頑張って作ってます。

 もちろん、師匠のも頑張るけど、師匠は、


『とりあえず、外見さえよくなればいい。別に、強くなくてもいいし、デザインも凝らなくていいんで、シンプルで動きやすいやつを頼む』


 って言われたので、自重するけど。


 でも、メルは本気です。

 妥協はしちゃダメ。

 どんなスキルがついても、それはメルのためなので、問題はないのです。


 そんな風に思いながら、服とアクセサリーを作ること一時間半。


 洋服一着とアクセサリー三つが完成。


「はい、できたよ、メル」

「おぉ! 早速着るのじゃ!」


 と、嬉しそうにはしゃぎながら、メルがボクが作った洋服に着替え、アクセサリーを身に着ける。


「ど、どうじゃ? ねーさま。似合うかの?」


 ちょっと顔を赤くしながら、メルが感想を求めてくる。


 ボクはメルの姿を見る。


 今回ボクが作ったのは、ゴシックロリータと呼ばれるジャンルの服。


 赤と黒を基調としていて、服にはフリルやレースがあしらわれ、スカートはふんわりと広がっていて可愛い。


 他にも、スカートの一部には薔薇が描かれていて、メルによく似合っている。

 アクセサリーは、小さいシルクハットと、蝶の飾りがついた二対で一個のリボンと、十字架が付けられたネックレス。


 シルクハットは、斜めに被り、普通のリボンで結わえていたツインテールは、蝶の飾りが付いたリボンで可愛らしくなり、ネックレスは背伸びしてます! って感じがすごくいい。


 メルは魔王だから、こんな感じに、ゴシックロリータファッションになりました。


「うん! とっても可愛いよ! メル!」


 文句なしに可愛いです!

 むしろ、文句を言った人はお仕置きです!


「本当?」

「もちろん! すごく似合ってるよ!」

「やったのじゃ! ねーさまに褒められたのじゃ! 嬉しいのじゃ!」


 ボクが褒めたことで、ぴょんぴょん跳ねたり、くるくる回ったりするメル。

 似合って当然です。ボクとしても、結構自信作だからね。

 ちなみに、完成品の情報はこんな感じです。


【幼キ魔王ノ血衣】……血を連想させるような紅と魔王を象徴するかのような漆黒に、薔薇が描かれた異世界の服。称号【魔王】を持つ者のみ装備可能。MP+60・VIT+50・INT+80。装備部位:体・腕・足。《武器スキル:女神の護り》装備者が受ける聖属性ダメージを50%軽減し、物理・刺突ダメージを20%カットする。《取得経験値向上:14%》


【幼キ魔王ノミニハット】……幼い魔王のために用意された小さなシルクハット。称号【魔王】を持つ者のみ装備可能。MP+20。装備部位:アクセサリー。《アクセサリースキル:女神の加護》一撃でHPを全損させられる攻撃を、一日に三回まで防ぐことができる。


【幼キ魔王ノリボン】……幼い魔王のために用意された蝶の飾りがついた、二対で一個のリボン。称号【魔王】を持つ者のみ装備可能。MP+10・AGI+20。装備部位:アクセサリー。《アクセサリースキル:女神の愛》デバフがかかりにくくなる。レジスト率+30%。


【幼キ魔王ノ首飾リ】……幼い魔王のために用意された十字架の首飾り。称号【魔王】を持つ者のみ装備可能。MP+30・LUC+40。装備部位:アクセサリー。《アクセサリースキル:女神の祝福》急所に当たりやすくなり、一分間でHPが10%回復し、MPの回復速度が二倍になる。


 うん。

 やりすぎだね、これ。


 防御面がかなり強くなった。


 一応、メルの称号とか職業とか、可愛さとかを考慮して作ったらこんなことに……。


 称号で、聖属性ダメージが倍になるって書いてあったから、なんとしてもそれは対処しないと! って思っていながら作ってたら、あんなスキルが付いちゃったよ。


 その結果、メルが受ける聖属性ダメージは等倍のまま。


 他の魔法は、耐性と称号のせいで100%カットになっちゃってるんだよね……。


 これって、聖属性魔法以外の魔法は無傷になるというわけで……。


 なので、メルにダメージを与えるには、聖属性魔法か、物理・刺突系の攻撃を当てるしかないので、結果的に魔法職の天敵になっちゃってるんだよね……。


 いや、うん。ボクが悪いね、これは。


 で、でも、仕方がないと思うんです。


 ゲームと言えど、メルには傷ついてほしくないし、倒されるなんてもっとダメ。それなら、防御面を強くすればいいから。


 ……まあ、そのせいで魔法使いなのに防御面が堅くなっちゃったんだけど。


 それでも、後悔はないです。


 ボクの暴走でメルが守れるなら、それで十分です。


 お姉ちゃんとしては、これが普通だよね。


 だって、可愛い妹のためなら、何でもしてあげたくなるもんね。普通。普通のはず。

 ちなみに、レアリティは10です。

 

……お店に、レアリティが10の布が売っていたので、つい……。出し惜しみはしたくなかったので……。


 そう言えば、全部の装備品に付いてるスキルに、女神って書いてあるんだけど……やっぱり、メルのことを想って作ったから、こうなったのかな?

 それならまあ……ちょっと嬉しい。


「ねーさま! ありがとうなのじゃ! 儂、これをず~~っと大事にするのじゃ!」


 うん。メルのこの天使みたいな笑顔を見ればすべてがどうでもよくなる気がします。


「そうしてくれると、ボクも嬉しいよ、メル」

「うむ!」


 この直後、メルが他のみんなの所に行って、服を自慢しに行きました。


 その間、ボクは師匠の洋服の作成に取り掛かり、2時間ほどで完成。


 なんだかんだで、いつもの服装になりました。

 師匠、タンクトップにホットパンツのイメージが強いし……。


 その他にも、ジャンパーのようなものと、ニーハイソックスと、ヘアゴムも作りました。


 喜ばれたのでよかったです。



 この後、メルの服と効果を見たミサたちがボクの所に来て、ミサによるお説教が入りました。


 ……やりすぎたと思うし、反省はしてるけど、後悔はないです!


 可愛い妹のためです! って言ったら、


「「「「ああ、もう手遅れか……この過保護……」」」」


 残念な人を見る目を向けられました。


 ……酷い。

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