第245話 ショタ依桜とロリ桜

 朝起きて、久しぶりに小さくなったと思ったら、まさかの依桜も一緒に小さくなっているという状況。


 しかも、ボクが小学四年生だった頃と全く同じ外見。

 と言うことは多分、ボクのこの姿も、依桜の元々の姿の時の小学四年生だった時の姿なんだろうね……。


 お互い裸の状態なんだけど、お互い見知った体なので、別に恥ずかしいなんて気持ちが一切沸かない……。

 普通は恥ずかしがるんだろうけど。


「どうする、この状況……」

「ど、どうしようね……。まさか、こうなるとは思わなかったよ」

「そうだな……」


 ……まあ、昨日の夜、強い睡魔があったから、もしや、とは思ってたけど……まさか、本当にこうなるとは思わなかったよ……。


「「――くちゅんっ!」」


 と、二人そろってくしゃみが出てしまった。


「んぅ……もう、あさかのぉ……? ん……? おお?」


 ボクたちのくしゃみで起きたのか、ここで、メルが起きてきた。

 メルが起きて、ボクたちを見るなり、一瞬ぼけっとしたような表情を見せた後、


「おお! にーさまとねーさまが儂と同じくらいになっておる!」


 パァッ! と天真爛漫な笑顔を浮かべながらそう言ってきた。

 ま、まあ、たしかに、メルと同じ身長だよね……だって、小学四年生くらいだし……。


「と、とりあえず、服を着よう」

「そうだね。さすがに、寒い……」



 そして、小さくなった時用の下着と制服に着替えて、下に降りる。

 まあ、ここからは、もうわかってることだよね……。


「あらぁぁぁぁぁぁあああああああ! イイィッ! すごくイイィィィィ!」

「「むぎゅっ!」」

「はあぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁ……! ショタ! ロリ! なんて可愛い双子ッ! まさか、桜ちゃんも小さくなれるなんてぇ! はぁ、はぁ……! 可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い……!」


 こうなります。


 こっちの母さんも、同じなんだね……。


 と、というか、く、苦しい!

 い、息が! 息ができないよぉ!

 ジタバタを暴れるボク。横からも、ジタバタする気配を感じる……これ、依桜も同じ状態でもがいてるってことだよね?


 うぅ……。


「あ、ごめんなさい!」

「「ぷはっ……! はぁ……はぁ……し、死ぬかと思った(よ)……」」


 解放された瞬間、ボクと依桜はまったく同じ事同じタイミングで言っていた。

 い、いや、本当に、辛い……。


「でも、びっくりだわぁ~。まさか、桜ちゃんも依桜と同じように小さくなるなんてぇ~。あ、一応桜ちゃんも依桜だから、当然なのかしらねぇ?」

「ま、まあ、うん……えっと、同じく……」

「でもぉ、こうしてみると、小さい頃の依桜とそっくり……というか、瓜二つねぇ」

「あ、あはは……」

「依桜、昔はこんな姿だったのよ?」

「りかいしてる。正直、僕も初めて見た時、かこの自分を見た気分だったよ」

「うん。ボクも、依桜のすがたを見た時、そう思ったよ」

「へぇ、じゃあ、今の依桜の姿が、昔の桜ちゃんの姿ってこと?」

「そう、だね」

「やっぱり可愛いのねぇ。男の娘はやっぱりいいわぁ」


 男の子、の『こ』の字が、いつも違う何かに聞こえるのはなんでなんだろうなぁ……。

 女委とかもよく言ってたりするけど、どういう意味なんだろうね。

 いや、別に知りたくないけど……。


「母さん。とりあえず、朝ごはん」

「おっとそうね。もうできてるから、ちゃっちゃと食べちゃってねー」



 朝ご飯を食べた後、ボクたちは三人で登校。

 ただ、傍から見ると、どう見ても小学四年生の子供が仲良く小学校に登校しているようにしか見えない……。


「はぁ。それにしても、ほんとうに、このすがたになるとやっかいだよ」

「そうだね……。小さくなると、高いところのものを取るのにもくろうするし、前に人がいたりすると、よく見えないもんね」

「そうなんだよな……。ただでさえ、僕たちはしんちょうが低いのにさ」

「むかしはそれが当たり前だったから、そこまで気にしなかったけど、今はもう、高校生だからね……やっぱり、きついよね……」


 あの時は、周囲も同じくらいだったし、それが当たり前だったから特に何も思わなかったけど、成長した今、そんなことになると、やっぱり来るものがあるわけで……。


「にーさまとねーさまは、背が低いのが悩みなのか?」

「うん。やっぱり、こまるからね……」

「そうだぞ、メル。しんちょうはあってこまるものじゃない。メルは大きくせいちょうするんだぞー」

「わかったのじゃ! じゃあ、儂、にーさまたち以上に多くなってみせるぞ!」

「そうか。それなら、すききらいしないでよく食べないとなー」

「わかったのじゃ!」


 本当、メルって素直でいい子だよね……。


 でも、このメルはボクが知ってるメルじゃないから、ちょっと寂しいものがある。


 それを言ったら、こっちにいる人たち、全員がボクの知ってる人に見えて、知ってる人じゃないからね。


 はぁ……いつ帰れるのかなぁ。



 学園に到着。


「それじゃあ、にーさま、ねーさま、またなのじゃ」

「今日もがんばってな」

「がんばってね」

「うむ!」


 タタタタッと足音を立てて、メルが初等部の校舎に走っていった。


「それじゃ、僕たちも行こう」

「うん」


 と、ボクたちが高等部校舎に向かって歩いていると、


『あれ、あの子たち初等部なのに、高等部の制服着てる……』

『あんな子たちいたっけ?』

『まさか、飛び級?』

『いやいや、さすがにそれはないでしょ』

『じゃあ、なんで制服を?』

『うーん、背伸びしたいお年頃、とか?』


 何やらそんな会話が耳に入ってきた。

 それを聞いたボクと依桜の二人は、


「「……」」


 無言になった。


 ……考えてみれば、最後に小さくなったのって、入学式よりも前だから。


 ボク、あれから稀に小さくなることはあったけど、一年生の一月~三月の間、ほとんど変わらなかったからね。


 その代わり、大人状態になることはあったけど。


 でも、それだけで、最近はめっきりなくなった。


 つまり、今年から新設された初等部・中等部の生徒と、高等部の一年生は、小さくなったボクたちを知らないわけで……。


 だから、ボクたちが高等部を着ている姿が不思議に見えるわけだよね……。

 なんだか、朝から憂鬱な気持ちになったよ……。



「おはよう」

「おはよー」


 と、ボクたち二人がいつも通りに入ると、


『『『きゃああああああああああ!』』』

「ひぅっ!?」

「……はぁ」


 ボクは変な悲鳴が出て、依桜の方は、ため息を吐いていた。

 な、なに!?


『依桜君、今日はショタなんだね!』

『やっぱり、可愛いぃ!』

『はぁはぁ……可愛すぎて、抱きしめたいっ……!』


 あ、あー……なるほど、そういうこと、なんだね。

 つまり、依桜は小さくなっている時、女の子に色々といじられてる、って感じなんだね。

 今なんて、なんか抱きかかえられたりしてるもん。

 抱きしめたい、って言っていた人なんて、本当に抱きしめてるよ。

 なんて、他人事に考えていたら、


『って、あれ? そっちの娘はもしかして……桜ちゃん!?』

『えええええええ!?』

『なになに、本当に桜ちゃんなの?』

「う、うん」

『すっごーーーい!』

『双子って言ってたけど、体質も同じなんだー!』

「じ、じつはね……」


 同じ存在なんだから、当たり前だよね……。

 むしろ、こっちのボクにそう言った体質がなかったら、ちょっとあれだったけど……。

 なんて考えていたら、


『やーん! 可愛すぎぃ!』

「んむぅ!」


 いきなり抱きしめられた。


「にゃ、にゃにゃにゃ、にゃにを!?」

『にゃにを、だって! 可愛いぃ!』

『ねえ、私にも抱っこさせて!』

『私も私も!』


 と、クラスメートの女の子たちにたらい回しにされるかのように、抱っこされる。


 う、うぅ、恥ずかしいよぉ……。

 なんで、こんな目に……。

 この状況に、心から恥ずかしいと思いました……。



 その後、しばらくたらい回し状態が続き、満足した頃にようやくボクと依桜は解放されました。


「うぅ、ひどいよぉ……」

「まったくだよ……。僕たちはマスコットでも、人形でもないのに……」


 ボクと依桜は、解放後、二人で肩を寄せ合うようにして、座っていた。

 いや、だって、怖いんだもん……。

 いくら、軽いからと言っても、さすがに、やりすぎなんじゃないのかなぁ……。


「おはよう、二人とも」

「散々だったな、依桜、桜」

「あ、あはは……おはよう、未果、晶」

「見てたなら、止めてくれてもいいんじゃないのか……?」

「いや、あれは無理。どう見ても、止められる状況じゃなかっただろ。さすがの俺も、あれを止めるのはちょっとな……」

「私も。まあ、私の場合、行ったら普通に混ざりそうだったからね」

「「……ジトー」」


 ボクと依桜は、同時にジト目を未果に向けた。

 止めなかった理由が本当に酷い……。


「おーっす」

「おっはー」


 騒ぎが終息した頃に、態徒と女委が登校してきた。


「おお、依桜ちゃんと桜ちゃんがちっちゃくなってる」

「うわ、マジだ。ほー、桜の場合、小さくなるとこうなるのな。……普通に可愛いな」

「ねー。桜ちゃんは、絵に描いたような美幼女だね」

「ふぇ!? べ、べべ、べつに、そういうのじゃ、ない、と思うけど……」


 こっちでも、可愛いとか、美幼女、なんて言われるんだね、ボク……。

 そんなことない、と思うんだけどな……。


「それにしても……実際、小さい頃の依桜ね。それも、小学四年生くらいの」

「そうだな。なんだか、懐かしい気持ちになるな、その姿を見ていると」

「へぇ、じゃあ、桜ちゃんの今の姿って、依桜ちゃんが小学四年生の時と同じなんだ」

「そうよ」


 依桜本人も言ってたけど、この姿ってこっちのボクが小さい時の姿なんだね。

 まあ、納得と言えば納得……。

 でもこれ、本当に性別が違っててよかったよ……。

 じゃないと、本当に見分けがつかなかったと思うもん。


「ところで、依桜ちゃんは小さくなると、身体能力が少し低下するって言ってたけど、桜ちゃんもそうなの?」

「うん。三分の一にまで落ちちゃうね」

「そこも同じ、か。聞けば聞くほど同じだとわかるのに、性別だけが違うのも、なかなかに面白いな」

「……ボクとしては、早く帰りたいんだけどね」

「でしょうね。帰れる方法はまだ見つかってないの?」

「うん……」

「残念ながら、進展なしでなぁ。僕としても、早いとこどうにかしないといけないのに、あの馬鹿は……」

「あの馬鹿?」

「あ、今のは聞かなかったことにしてよ」


 今、学園長先生のことを隠したところを見ると、依桜も、ボクと同じように異世界に学園長先生が関わっていることを秘密にしているんだね。


 まあ、さすがに言えないよね……。

 正直、女委辺りは気付いていそうな気がするけど……。


「それにしても、ショタ依桜ちゃんに、ロリ桜ちゃん……最高だぜぇ……ありがとう、神様……」


 ……いや、多分気付いてないだろうね。


 こんな調子の人が気付いていたら、結構心に来るよ……。


 この後も、なにやら、 ねばっこい視線をいろんな方向から感じながらも、朝の時間は過ぎていく。

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