ごめんなさい

ぼーがす

第1話

 私は生まれつき体も気も弱く、幼いころには怪我ばかりして両親に怒鳴られていた記憶しかない。そのせいで「ごめんなさい」が口癖となってしまった。自分が悪いわけでもないのに「ごめんなさい」とつい言ってしまうことがよくある。そのため、まわりの話し声が、自分の悪口に聞こえてしまうことがある。特に、「あいつ」という言葉が聞こえると、私のことなのかな、と毎日怯えている。私が小学生の頃、両親は喧嘩が原因で離婚した。喧嘩の内容はとても些細なことだったが、そのいざこざが大きくなっていき、とうとう爆発してしまった。私は、気がとても強い母に引き取られ、それからは毎日、びくびくしながら生活をしていた。小学校ではいつも1人でいるが、まわりの声が気になってしまう。家に帰ったら帰ったで、気の強い母が酒に酔っているため、間違って気に障るようなことをすると、すぐに殴られたり、蹴られたりする。小学校の卒業式も中学校の入学式も卒業式も、来てはくれなかった。そんな私も高校生になったが、いまだに人が怖いせいで、友人が誰一人としていない。それどころか、「ごめんなさい」とすぐに言ってしまう癖が直っていないため、「自意識過剰すぎる人間」として、校内で嫌われていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る