030 コカトリスクイーン
ゲームと現実の最たる違い――それがダンジョンに棲息する雑魚の強さだ。
コカトリスクイーンは約95レベルの強敵なわけだが、もしもゲームの世界ならば、雑魚のレベルもそれに近いものになるだろう。しかし現実は違っていて、龍斗たちが倒したコボルトのレベルは15程度と低い。
その為、ボスの待つ最奥部へ行くのにこれといった苦労はしなかった。
「あそこがゴールだな」
前方に見える円形の広い空間を指す龍斗。
そこは鷹ノ巣山のちょうど中央に位置しており、天井が吹き抜けになっていて、太陽の光がほのかに差し込んでくる。地面にはこれでもかという程に藁が盛られていた。
そして、目的の敵であるコカトリスクイーンは――。
「あそこだ!」
――壁にいた。
尻尾の代わりにヘビを生やした巨大な怪鳥だ。
その怪鳥は、尻尾のヘビを壁に噛み付かせることで張り付いている。頭部は山頂から出ており、キョロキョロと外の様子を窺っていた。
「さぁ俺の理論を証明する時だ」
龍斗がお決まりのセリフを言う。
「その理論、私が反証してみせよう!」
そこに仁美が乗っかった。
「反証ってすなわち全滅を指すんだぞ」
「やっぱり反証はナシで」
龍斗は「やれやれ」と苦笑い。
二人のやり取りを見て、ポポロは愉快げに笑った。
「で、どうするのさ」
「今回は単純さ。いや、今回も、と言うべきか」
龍斗は藁の上で〈チャージキャノン〉を発動した。砲門を真上に向けてチャージを開始する。
「フシュー?」
コカトリスクイーンの尻尾であるヘビの目が龍斗を捉える。
すると次の瞬間、怪鳥は体をぐるりと半回転させ、まるでコウモリのように頭部を地面に向けた。
「キュイイイイイイイイイイイン!」
龍斗に向かって威嚇の咆哮を繰り出すと同時に、怪鳥は攻撃を開始した。尻尾のヘビが壁から口を離す。翼を羽ばたかせ、急降下して龍斗に迫った。
「待っていたぜその展開!」
龍斗と怪鳥の距離が20メートルを切った瞬間、彼は〈スパイダーウェブ〉を頭の上10メートルの位置に発動した。
「キュイッ!?」
突如として現れた蜘蛛の巣に突っ込み、全身が絡まるコカトリスクイーン。
「もういっちょ!」
龍斗は追加の〈スパイダーウェブ〉を発動する。今度は怪鳥の上側だ。こうして蜘蛛の巣によるサンドイッチを作った。
「敵の動きが止まったのです!」
「あとはキャノン砲をぶち込んだら勝利よ!」
「いいや、まだだ。これだけだと蜘蛛の巣を千切られる可能性がある」
そこで龍斗は〈グラビティプレス〉を発動し、怪鳥の体に重力の圧をかけた。
「飛行能力を持つ魔物は〈グラビティプレス〉を受けることで目に見えて動きが鈍る。たとえそれがスキルレベル1であってもだ」
完全に絡め取った。それと同時にキャノン砲のチャージが完了する。
「終わりだ」
極めた攻撃力の誇る無慈悲のレーザービームが天に向かって放たれる。
「キュィイイイイイイイイイイイ!」
鷹ノ巣山の怪鳥コカトリスクイーンは、跡形もなく消え去った。
「証明終了」
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