023 明日の予定

 龍斗がブラックライオンを狩るようになって約2ヶ月が経過した。


 現在のレベルは74。最初の頃とは違い、最近は数日に一度しかレベルが上がらない。土日祝に休みを挟んでいることや、理論の汎用性を証明する為に無理をしていないことも影響していた。それでも一般的な冒険者に比べると、レベルの上昇速度は群を抜いている。


 彼と行動を共にしていることで、仁美とポポロのレベルも上がっていた。


 二人のレベルは70。龍斗とのレベル差は4まで縮まっていた。レベルは低いほど上がりやすい。この点は数多のロールプレイングゲームと同じだ。


「さぁやっちゃってやっちゃってー」


「おうよ」


 龍斗は臆することなくずかずかと大股でブラックライオンに近づく。もはや慣れたものだ。起きたらどうしようなどという恐怖は微塵も抱いていなかった。


「おそらく今日でお前ともお別れだぞっと」


 フルチャージしたキャノン砲をぶっ放す龍斗。


 ドカーンという激しい轟音と共にブラックライオンは死んだ。


 それと同時に、龍斗のレベルが75に上がった。


「これで終了だな」


「お疲れ様ー!」


「お疲れ様なのです!」


 仁美とポポロが駆け寄ってくる。


「結局、ブラックライオンが起きることは一度もなかったねー」


「だな。起きたらレベル不相応のヤバい敵だが、起きなけりゃ楽勝だ」


「そんな風に考えたのって、後にも先にも龍斗だけだろうね」


「凄いのです!」


 龍斗はすまし顔で「どうも」と言い、話を変えた。


「それより、二人には感謝しているよ。いつも手伝ってもらってさ」


「そんな風に言うってことは75になったの?」


「うむ」


「おめでとー。じゃあ、一緒に狩りをするのはこれでおしまいかな?」


 仁美が尋ねる。その隣で、ポポロは露骨に寂しそうな表情を浮かべていた。


「そのことなんだけどさ、二人がよかったら今後も一緒にどうだ?」


「いいのです!?」と目を輝かせるポポロ。


「次はコカトリスクイーンの討伐に行こうと思うんだけど、道中で魔物に遭遇する可能性がある。二人が一緒だと心強いんだ」


「コカトリスクイーンかぁ、これまた強烈な敵を選んだねー」


「ダメか?」


「もちろんダメじゃないなのです!」


 真っ先にポポロが承諾する。


「私も大丈夫だよ。ていうか、上がりを決め込むにはもう少しお金が欲しいんだよね。龍斗と一緒ならガッポガッポ稼げそうだし、喜んで寄生させてもらうよ」


「寄生だなんてとんでもない。仁美とポポロが雑魚を掃除してくれているおかげで快適にやってこれたんだ」


 ということで、三人は新たな狩場でも一緒に行動することに決めた。


 ◇


「狩りは来週の月曜からでいいんだよね?」


 帰りの車内で仁美が尋ねた。


 相変わらず一人で後部座席に座っている龍斗は、「うん」と頷く。


「明日は土曜だしな。土日は休みたい」


「だったら三人で海に行こうよ」


「海?」


「だってもう7月だし、最近は蒸し蒸しして暑いじゃん。だから少し早いけど海に行こうよ」


「仁美、残念ながらポポロはそれに参加することができないのです。明日は小学校の入学試験を受けるのです」


「あー、エルフは小学校に入るのにも試験が必要だったねー」


「そうなのです……」


「なら海はダメかー。二人だけで行ったらポポロが可哀想だし!」


「ごめんなさいなのです」


「仕方ないよ。じゃあ、どこに行く?」


 仁美がミラー越しに龍斗を見る。


「俺が決めるのかよ。ていうか一緒に過ごすことは決まってるんだな」


「いいじゃん! それに、たまにはレベル上げ以外のことも考えなよ」


「そうは言われてもなぁ」


 仁美がニヤリと笑う。


「明日はポポロがいないからデートだよ、デート。お姉さんがデート相手になってあげるから、いつか本命の子と出会う時に備えての練習だと思って考えるのだ」


「そういうの興味ないんだよなー」


「恋愛は大事なのですよ、龍斗」


「ほら、ポポロもこう言っているよ! 龍斗、頑張って!」


「えーっ」


 龍斗はどうしたものやらと頭を掻いた。



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【名 前】陣川 龍斗

【レベル】75

【攻撃力】76

【防御力】1


【スキル】

①フィールドクリエイト:1

②チャージキャノン:58

③スパイダーウェブ:15

④グラビティプレス:1

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