016 関西クラン
龍斗の超速レベリング理論は汎用性を重視している。
汎用性とは“誰でも実践できること”を指すが、それは能力面だけでない。環境面のことも考慮されている。
例えば彼の理論が才能の有無に関係なく実践できるものだったとしても、北海道でしか通用しない内容であれば受け入れられない。全都道府県、もっと言えば全世界で使えてこそ役に立つのだ。
だから龍斗は、突発的な魔物が相手でも対応することができた。
「なるほど、敵は大隊か」
京都駅を襲撃した魔物はコボルト――小学四年生くらいの背丈をした犬の頭が特徴的な人型の魔物――の軍団だ。単体の実力はそれほど高くなく、一般的なレベル20の冒険者なら軽く倒せる。
しかしそれはタイマンに限った話だ。コボルトはえてして群れで活動しており、京都駅を襲来した敵の数は2000体を超えていた。
「よし、やるか」
龍斗は素早くスキルを習得する。
======================
【名 前】陣川 龍斗
【レベル】61
【攻撃力】62
【防御力】1
【スキル】
①フィールドクリエイト:1
②チャージキャノン:49
③スパイダーウェブ:10
④グラビティプレス:1
======================
任意の場所に蜘蛛の巣を設置する〈スパイダーウェブ〉と重力で敵を圧す〈グラビティプレス〉を覚えた。どちらもこの戦いの為に習得したというより、ブラックライオンの次の狩場で使うことを想定したものだ。
「高所に陣取って一網打尽にしてやるぜ」
大階段の横のエスカレーターで階段の上段に移動する。そこで〈スパイダーウェブ〉を発動し、左右や背後といった死角に蜘蛛の巣を張り巡らせた。
防御態勢が整ったら〈チャージキャノン〉を発動。キャノン砲の繰り出すレーザービームで迫り来る敵を薙ぎ払う考えだ。
「チャージはできた、いつでもかかってこい」
階段の上から敵を待ち構える龍斗。
しかし、コボルトの軍団はなかなか向かってこない。階段を下りた先にある広場にすら来ず、改札機を壊したり、その周辺にあるショップを無茶苦茶にしたりしていた。中にはコンビニのおにぎりを食べ歩いている者もいて、魔物の群れというよりデモ活動に乗じて悪さを働く盗人のようだ。
しばらくしてようやくコボルトが龍斗に気づいた。
だが、その時――。
「ヤスアキ隊、フミオ隊、散開して各個撃破でいくで。どうせ敵はヘボや。サクッと終わらせて国からたんまり報酬もらうで!」
今度は関西の冒険者軍団が現れた。巧みな連携で魔物を殲滅していく。
「連携のとれたいいクランだな……って、そうじゃない。これだと俺の出番がないじゃないか」
チャージの完了したキャノン砲の前で苦笑いを浮かべる龍斗。
幸か不幸か彼の出番がないまま終わるということはなかった。
「グォオオオオオオオオオオオオ!」
上空から大型のドラゴンが降ってきたのだ。全身が青色の狂暴なドラゴン――ブルードラゴンだ。
ドラゴンは大階段の下にある広場に足をつけると、関西の冒険者たちに向かって咆哮する。鼓膜が破れそうな音と共に大地が震えた。
(あいつまで俺を無視かよ)
自分に背を向けるドラゴンに苛立つ龍斗。
(だったら背中を撃ち抜いてやるよ)
そう思って発射しようとしたのだが――。
「ドラゴンやんけ!」
「聞いてへんで!」
「でも倒さなあかんわ!」
コボルトを殲滅し終えた関西クランの冒険者軍団が集まってきた。その数は50人と多く、ドラゴンは瞬く間に包囲されてしまう。
(下手に攻撃すると邪魔になりそうだな)
スキルによる攻撃が人や建物に直接的な危害を加えることはない。とはいえ、砲撃が直撃すれば吹き飛んでしまう。下手に攻撃すると邪魔になりかねなかった。
(あいつらがピンチになったら加勢するか。今の俺にブルードラゴンを倒せるだけの力があるか悩ましいが、なるようになるだろう)
龍斗が見守る中、関西の冒険者たちは戦闘を開始した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。