外套を肩がけにして
倉井さとり
序
*
トマトを投げられたら、トマトを投げ返そう。
土を耕して、種を蒔いて、水をあげて、肥料もあげて、虫を追い払って、その実を収穫しよう。
だけどその頃には投げた相手はもう、いない。
それならトマトを食べよう。太陽の味がする、弾けるようなトマトに思いっ切りかじり付こう。
世の中は所詮、トマトの投げ合いっこ。
世の中は辛うじて、トマトの投げ合いっこ。
愛されトマトに、憎まれトマト。
上から読んでも下から読んでも、トマト。
あの味が好き。あの食感が大嫌い。
真ん丸じゃなくて、ちょっと楕円。まるで惑星みたい。
ああ、冥王星のやるせなさ。はぐれものから筆頭へ。
だけど冥王星は何も変わらない。変わらず楕円に、少し斜めに廻ってる。
そりゃ、他と比べたら斜めだね。宇宙に上も下もないのにさ。
ああ、冥王星のやるせなさ。
世の中はいつだってトマトの投げ合いっこ。
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