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「ブラコンだからぁっ!!」
姉の、
「ハルの事が好きで好きで
度を越した弟ラブ。人から白い眼で見られることもある。だけど直そうとは思わないし、できない。
だって大好きなんだもの。
何かを、誰かを好きという気持ちは理性で隠すことはできても無くすことはできない。絶対に。
「だからッ!」
杏奈の肩をがっしりと両手で
渾身の告白に杏奈の肩がびくんと跳ねた。
「私の
(言った……言ってしまった……)
自分の荒い呼吸音だけが聴こえる無言の時間。杏奈はまだ何も言わない。
呼吸が落ち着いてくるにつれ、忍び寄る夜の気配。
これで杏奈に嫌われたらどうしよう。気持ち悪いと思われるのではないか。
――こんなのが自分の姉だと分かって幻滅するのではないか。
怖い。杏奈に嫌われるのが。
永遠かとも思われた沈黙の後、街灯の灯りに照らされた公園に響いた声は――
「――ふふ」
小さな、笑い声。
恐る恐る顔を上げた真希の目に、始めてみる妹の表情があった。
苦笑。
「お姉ちゃん、それほんと?」
「う、うん……」
「そっかぁ……実は最初はね、姉弟ってこんなに仲がいいんだって、びっくりしたんだ」
初めてできた姉と兄。その二人の仲の良さに、妹は。
それと同じかそれ以上に仲が良くならないといけないのだと思った。
「そっか、やっぱりちょっと普通じゃなかったんだ。でも、だったらなおさら私、どうすればいいか分かんないよ……」
真似をする必要はない。
なら何を参考にすればいい?
何をどう努力すればいい?
「そんなの簡単だよ」
ここまでして、ようやく真希は言える。
「そのままの杏奈でいいんだよ。無理して仲良くしようとなんかしなくていいし、私の真似もしなくていい」
「でも……」
それでは駄目なのだ。
その努力を、杏奈はしたいのだ。
「じゃあ、これだけは分かっていて欲しい」
真っすぐに、杏奈の目を見て真希は口を開く。
「私は、私とハル、そしてお父さんも。何があっても杏奈のことを嫌いになったりしないよ」
それだけは、分かっていて欲しい。
避けようのない結末だった。だからこそ、大切な人を失ったことのあるその三人は絶対に自分から大切な人を手放さない。
「もし杏奈が私達のことを嫌いになっても、私達は杏奈のことを嫌いにならない。だってさ、私達にとって杏奈は、たった一人の妹なんだよ」
代わりなんてない。
新しくできた母親も、昔の母親の代用品などではない。一人一人、とても大切な、かけがえのない家族。
「でも私達も初めての妹だからさ……正直どう接するべきか分からない時もある。だからそんなに急がないで、もっとゆっくりしようよ。好きになるのも、嫌いになるのも。これからずっと一緒なんだからさ」
ゆっくり時間をかけて仲を深めていけばいい。これから死ぬまで、否、死んでも家族という縁は切れないのだから。
「ぶっちゃけ普通のきょうだいって私も分かんないしね……ハハハ……」
かつて
そんな普通は真希はいらない。普通じゃなくて結構。自分達が幸せなら、それで……。
「――杏奈?」
街灯の光がその大きくて丸い瞳に反射して揺らめいた。
揺らめいて、
「――ずるいよぉお姉ちゃぁん」
ポツリ、ポツリと。頬を伝って零れた雫が大地に染みていった。大きな瞳に似合った大粒の涙。
「え、あ、ごめんね!私何か……」
「そんなこと言われたら……泣いちゃうょぉぉ……」
止め
泣いている妹をどうやったら
まだまだこれからだ。これから、絆を深めていけばいい。
結局、その日家族全員での外食はお流れとなった。
真希は多くは語らなかったが、赤く目を
とりわけ父は、顔を合わせるなりに真希にウィンクして見せた。それに娘は思わず
やはり父には敵わない。
改めてそう思い知らされた真希であった。
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